■第2世代Maxwellベースの『GeForce GTX 960』はミドルクラスGPUの覇権を握る存在だ!
1月22日、NVIDIAは第2世代Maxwellをベースにし、実売予想価格199ドルという新ミドルクラスGPU『GeForce GTX 960』を正式に発表しました。第2世代Maxwellといえば、昨年登場したハイエンド級『GTX980』と『GTX970』で初採用され、製品が発売されるや否や近年まれに見るほどバカ売れし、ショップが嬉しい悲鳴を上げたというニュースも流れたほど注目を集めたアーキテクチャーです。
その理由はこれまでの主力Kepler世代のGPUよりも、高性能なのに発熱や消費電力が圧倒的に少ないこと。さらに現在第2世代Maxwellでしか利用できない負荷の軽いアンチエイリアス技術『MFAA』や『HDMI2.0』といった新機能や新装備もあります。この辺りは前回GTX980をレビューした時に紹介しているので、詳しく知りたい人は記事を読んでいただくとして、さっそく本題に入ります。
↑今回入手したASUSTeK製GTX960ボード『STRIX-GTX960-DC2OC-2GD5』。 |
■メモリーバス幅128ビットがどんな影響をもたらす?
ではGTX960を含む直近3世代のミドルクラスGeForceのスペックを比較してみましょう。
GeForce GTX960 | GeForce GTX970 | GeForce GTX760 | GeForce GTX660Ti | GeForce GTX660 | |
アーキテクチャー | GM206 (Maxwell) | GM204 (Maxwell) | GK104 (Kepler) | GK104 (Kepler) | GK106 (Kepler) |
製造プロセス | 28nm | 28nm | 28nm | 28nm | 28nm |
SP数 | 1024基 | 1664基 | 1152基 | 1344基 | 960基 |
コアクロック | 1127MHz | 1050MHz | 980MHz | 915MHz | 980MHz |
ブーストクロック | 1178MHz | 1178MHz | 1033MHz | 980MHz | 1033MHz |
メモリー転送レート(相当) | 7GHz相当 | 7GHz相当 | 6GHz相当 | 6GHz相当 | 6GHz相当 |
メモリー搭載量(バス幅) | GDDR5 2GB (128ビット) | GDDR5 4GB (256ビット) | GDDR5 2GB (256ビット) | GDDR5 2GB (192ビット) | GDDR5 2GB (192ビット) |
TDP | 120W | 145W | 170W | 150W | 140W |
外部電源 | 6ピン | 6ピン×2 | 6ピン×2 | 6ピン×2 | 6ピン |
第2世代Maxwellアーキテクチャのウリは、SP(CUDAコア)をKeplerより少なくしても同等以上の性能を出せ、データを圧縮して転送するのでメモリーバスも狭くていいというもの。そのためGTX960のSP数やメモリーバス幅はGTX760やGTX660Tiよりスペックダウンしています。しかし圧縮でメモリーバスを通るデーターが3割圧縮できれば、実効のメモリデーターレートは9.3GHz『相当』になるので128ビットでも大丈夫! というのがNVIDIAの主張です。
また、GTX960は“オーバークロックでGPUクロックがガンガン上がる”のも売りにしています。一応定格のブーストクロックは1178MHzとなっていますが、今回編集部が入手したASUS製のオーバークロックモデル『STRIX-GTX960-DC2OC-2GD5』の場合、カタログ上のブーストクロックが1317MHzですが、今回のテスト環境での実測では、何もしなくても1417MHzまで上がりました。NVIDIAは1500MHzオーバーでもイケるとしているので、GTX960は高クロックモデル選びが激アツになりそうです。
↑『STRIX-GTX960-DC2OC-2GD5』の情報を『GPU-Z』でチェックしたところ。 |
実測1417MHzという高いOC設定を生かすには、高性能クーラーが必要ですが、そこはASUSクオリティーなので心配なし。しかも
GPUやVRMの温度が低いうちはファンが回転しないという“準ファンレス”仕様なのは既存のGTX980/970搭載モデルと同一。今回も各社からGTX960の準ファンレスモデルが登場しますが、大手メーカーでは唯一外部電源が6ピン×1と、使いやすい点に注目です。
↑外部電源は6ピン×2や8ピン×1という製品も見られる中、ASUSは6ピン×1でした。 |
↑出力端子の構成はお馴染みのもの。ただしHDMIは2.0対応です。 |
■ベンチ環境は?
今回のベンチ環境を先に紹介します。今回GTX960はASUS製のOC版しか入手できなかったので、比較対象も全てASUS製のOC版でまとめました。本当はSP数960基のGTX660とも比較させたかったのですが、残念ながら微妙に基本スペックの高いGTX660Tiと対決させてみます。
●検証用PC
CPU:Core i7-4670K(3.4GHz、最大3.8GHz)、マザー:ASRock Z97 Extreme6(Intel Z97)、メモリー:Corsair CMY16GX3M2A2133C11(DDR3-2133で使用、8GB×2)、SSD:Crucial CT512M550SSD1(512GB)、電源ユニット:オウルテック AU-850PRO(850W、80PLUS GOLD)、OS:Windows 8.1 Pro(64ビット)
●比較用グラフィックボード
STRIX-GTX970-DC2OC-4GD5(GeForce GTX 970)
GTX760-DC2OC-2GD5(GeForce GTX 760)
GTX660 TI-DC2-2GD5(GeForce GTX 660Ti)
■フルHDゲーミングに理想的だが、4Kにはもの足りない
早速定番『3DMark』で性能をチェックします。“Fire Strike”はフルHD相当、“Fire Strike Ultra”は4K相当の負荷がかかります。
SP数が1.5倍近くあるGTX970には大負けしますが、GTX760やGTX660Tiに比べると1000~1500ほどスコアーを伸ばしています。クロック以外のスペックは全てGTX760/660Tiに負けていることを考えれば、GTX960も第2世代Maxwellの良い部分が出ていると言えます。
では軽めの実ゲーム代表から『ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア』のベンチを使います。FF14もそろそろDX11対応になる、という話ですが、このベンチはDX9対応です。画質は“最高品質”にして、解像度をフルHDと4Kに設定して比較します。
このゲームでもGTX970には負けるが、過去のミドルクラスには勝てる、という構図ですがGTX760と960の差はかなり狭まっています。フルHDでは一応アドバンテージは保てているものの、4K環境になるとGTX760に逆転される(誤差みたいなものですが)という一幕も。メモリー圧縮でフルHD環境では十分な帯域は確保できるものの、4Kクラスの負荷になると少々辛い、ということが読み取れます。GTX760がフルHDゲーミングの定番だったように、GTX960もフルHD環境にぴったりのスペックである、といえます。
それでは重量級ゲームはどうか? ということで『ウォッチドッグス』をフルHD環境で試します。画質関係はいちばん高い設定に統一していますが、アンチエイリアスのみ“テンポラルSMAA”に設定しました。街の中を走り回る時のフレームレートを『Fraps』で測定しました。
今回GTX960用のドライバーがβ版だったせいか、最大フレームレートが60fps頭打ちになっているようです。ランクが格上のGTX970には及ばない……という点は変わりませんが、GTX760や660Tiに比べ平均フレームレートが10fps以上も高く出ている点は素晴らしいですね。テクスチャー設定や被写界深度といった設定を少し下げれば、最低フレームレートももっと上がることでしょう。
では最後に、第2世代Maxwellの最大の強みでもあるシステム全体の消費電力をチェックしてみます。計測は『Watts Up? PRO』を使い、
アイドル時(起動10分後)と、3DMarkのFire Strikeデモ中の同一シーンにおける消費電力を計測しました。
アイドル時の消費電力はGTX760と大差ないレベルですが、高負荷時の消費電力はGTX660Tiや760よりも20W近く下がっています。動作クロックを上げたぶん消費電力も増えちゃいました、というオチではなく、しっかりワットパフォーマンスも改善してきたあたりは、まさに第2世代Maxwellの旨味を引き出している、といえるでしょう。
■まとめ:フルHDゲーミングには最高。ただ値段は???
ここまで駆け足でGTX960の性能をチェックしてきましたが、さすがに4Kゲーミングにはあまり向かない(League of Ledgendsクラスのゲームならアリでしょうが)ものの、フルHD環境なら高画質設定で重量級ゲームもガンガン遊べ、なおかつ既存のミドルクラスよりも消費電力が少ないGPUに仕上がっています。何よりGTX960世代のグラボは準ファンレス仕様のものが一般化する気配なので、負荷の低いゲーム主体なら今まで以上に静かでゲームに集中しやすいゲーミングPCになるでしょう。
さてここで気になるのは“GTX960とGTX760はどっちがトクか?”ということ。原稿執筆時点の情報では、GTX960の初物価格は2万円台後半~3万円台中盤となりそうとのこと。これはGTX760の価格分布とほぼ重なる形になります。今後GTX760の値崩れも予想されますが、もし実売3万円近辺なら、GTX760よりも準ファンレス等の付加価値の高いGTX960搭載品を買うべきでしょう。MFAAやHDMI2.0といった旧世代GPUにはない機能もあることを考えればなおさらです。既存のGTX760ユーザーが買い替える程には性能が上がってないのが残念ですが、GTX400~600番台でGPUの進化が止まっている人、このGTX960は絶対にチェックですよ!
■さらに耳寄り情報も! GeForce 製品を買うと『メタルギア ソリッド V グラウンド・ゼロズ』が付いてくる!
2015年1月22日23時~6月30日の間、“GTX760以上の対象製品、もしくはGTX760以上のGPUを搭載した対象PC”を購入すると、『メタルギア ソリッド V グラウンド・ゼロズ』の日本語版フルゲームコード(Steam用)が無料でもらえるキャンペーンも行なわれます。買い換えタイミングにはばっちりすぎますね!
(2015年2月11日訂正)初出時、スペック比較表のGTX760、GTX660について誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
■関連サイト
NVIDIA
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