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“ログレス” MMORPGをスマホで運営する難しさとは(中編):召喚★アプリ神

2015年01月11日 14時00分更新

 話題のスマホゲームのクリエイターとスクウェア・エニックス安藤武博氏が対談する連載『召喚★アプリ神(ゴッド)』。週刊アスキー本誌で掲載しきれなかったインタビュー内容を3回に分けて掲載します。

 第7回は『剣と魔法のログレス いにしえの女神』の板倉基之さんと下川晶平さんを召喚!(前編中編後編

 なお、第8回のゲストはスクウェア・エニックス『乖離性ミリオンアーサー』のプロデューサー岩野弘明さん。追って掲載いたしますのでそちらもよろしくお願いします。

『剣と魔法のログレス ~いにしえの女神~』:召喚★アプリ神
↑マーベラス プロデューサー板倉基之氏
『剣と魔法のログレス ~いにしえの女神~』:召喚★アプリ神
↑Aiming プロデューサー下川晶平氏。

『剣と魔法のログレス いにしえの女神』

『剣と魔法のログレス ~いにしえの女神~』:召喚★アプリ神

■ スマホにおけるMMORPGのユーザー事情と新規ユーザー層獲得のための工夫

安藤武博(以下、安藤):PCのネットワークゲームと、ログレスのお客さんのコミュニティーに、違いや特徴はありますか? たとえば『ドラゴンクエスト X』はたくさんのお子さまに遊ばれているので、利用券を必要としない無料のキッズタイムを設けたりしているんです。子どもってスマホに対するリテラシーが意外と高いので、ログレスも多くのお子さまに遊ばれているのではと思いますがどうでしょう。

板倉基之(以下、板倉):PCのログレスと比べた場合、確かに若い方にシフトしているかなという気はしますが、いわゆるPCオンラインゲーム全般と比べた場合はさほど変わらないと思います。

安藤:そうなんですね。コミュニケーションツールのような感覚で、普通にダベったり世間話を楽しむことがメインで、仲間が集まったときに冒険にいくというユーザーさんもいたりしますか?

板倉:当然そういう人もいますが、そういう遊び方をしている人がメインにはなっていないようです。

下川晶平(以下、下川):私ももっと新しいコミュニティーが発生するかもしれないと期待していたんですが、チャットの流れを見る限り「何々のクエストにいける方募集!」というのが多いですね。

安藤:『FFXI』や『ラグナロクオンライン』といったMMORPGのヒット作が出て10年以上経ちます。最近、僕の番組や対談で20代前後のアイドルや声優の子と話すと、小学校、中学校のときにラグナロクオンラインに熱中していてアカウントを4つもっていた、という話も飛び出したりするんです。ログレスを遊んでいる方のなかには、子どものころにネットワークゲームで遊んだ体験を持つ世代も多いのではないかと思いますがどうでしょう。

下川:もちろんそういう方もいますし、圧倒的に多いのはソーシャルゲーム、いわゆるカードバトルゲーム系を遊ばれていた人たちです。

安藤:なるほど、ソーシャルゲームを経験している人なら、皆で戦ったり、MMORPGのサイクルのなかにガチャがあることも自然に受け入れられますね。

下川:ただ最初は、一緒に戦っている人をプレイヤーキャラだと気づかない人もいたようです。ユーザーが操作していると気付かずに、NPCとパーティーを組んでいると思っていたみたいです。

下川:なので、ちょっとしたチャットではじめて「あれ、これって人なんだ!?」と気付くこともあったようです(笑)。

安藤:面白い!ある意味ファンタジーですよね。昔のネットゲームだと、ネットで人と遊びたいがゆえにPCやモデムの設定を自分でやったわけですが、今はスマホを手にしたときから常時接続ですから、画面内にいるのが人なのかNPCなのか考えるスキすらない。そういうことが起こりえるのはすごく解る気がしますし、お客さんにそういう疑問を感じさせないログレスのつくりがすごいですよね。
 ログレスはもうすぐ1周年を迎えますが、CMもオンエアされて多くの人にインストールされています。新しく届けたいお客様がいるとしたら、どんな層の方々でしょう?

板倉:今遊んでいただいている人は、コンシューマーでRPGを遊んだことがある方が中心です。RPGを遊んだことがない人にも届けたいですね。未体験でも全然楽しめると思うんですよ。

安藤:メッセージを入れると返事が返ってきて、会話しているだけでも楽しめる構造をもったゲームってなかなかないですし、誰でも気軽に始めて気軽に遊べますよね。

下川:板倉さんがおっしゃったとおり、MMORPGの面白さをRPG未体験の方に伝えようと努力しているんですが、なかなか思うようにいかないですね。

板倉:今まさにCMの第2弾をつくっているところです。第1弾はどうしても戦闘寄りになった感があって、そこももちろん伝えたいところではあったんですけど、それがためにRPG未体験層が入ってこないのかなとも思うんです。

下川:あとはまだまだ操作が面倒であったり、スマホの特性を生かしきれていない部分がありますので、随時改良していきたいと思います。たとえばマップ上でタップするとその場所にマイキャラが移動しますが、そういう操作の概念がない方もいらっしゃるんですよ。そういったところは気をつけていきたいなと思っています。

安藤:スマホというデバイスが直感的ゆえに、UIをどう落とし込んだらいいのかは、確かに悩みどころですよね。いろんな世代がスマホやタブレットを持っていて、コントローラーを持ってテレビと正対してゲームをやった世代もいれば、子どものころからタッチパネルに馴染んでいる世代もいる。世代間の差を全部まとめる上げる難しさと面白さがスマートフォンのゲームづくりにはありますよね。

板倉:PC版のログレスとスマホ版でコラボをしたときに、スマホからPCに来た人がかなりUIに戸惑ったということもありました。

下川:PCからスマホに移植したときに、改修した部分がたくさんありましたからね。

安藤:PCだとマウスとキーボードを使いますから、操作が一拍多くなりますものね。でもそれって、スマホ版ログレスのUIが優れているからだとも思うんです。最適化がうまくなされたというのも、ログレスの強みだなと思います。

『剣と魔法のログレス いにしえの女神』
↑PC版の画面。スマホ版とのコラボ時に、スマホからPCに来た人のUIへの戸惑いがあったという。タッチパネルと簡略化されたUIに慣れたユーザーには複雑に感じられたのかもしれない。

■ MMORPGをスマホで運営する難しさ

安藤:スマホのログレスを運営していく上で、盛り上がったことや失敗談など、何か予想外のことはありましたか?

板倉:たくさんあります(笑)。まず通信制限がかかるということを考慮していませんでした。現状、各キャリアが毎月の通信利用量を制限していますから、月末になると速度が遅くなるユーザーさんが大勢いらっしゃるんです。

安藤:それに対してはどういった対策をされているんですか?

下川:抜本的な対策にはならないんですが、今は通信量を減らすためにサーバーを調整している段階です。ログレス自体がかなり大きなプロジェクトになっていて、ガッツリした入れ替えは非常にリスクを伴いますので、徐々にやっていくしかないかなと。

板倉:大きいところでは、ユーザーさんのコンテンツ消費速度が速いという問題もあります。

安藤:ある意味嬉しい問題ですよね。やはりスマホが手元にあって、常に遊べてしまうからでしょうか。

板倉:それもあると思いますし、ソーシャルゲームを遊んだ経験がある人には、早くレベルが上がって早く強くなった方が有利、という感覚があるからだと思います。ログレスでは早く進めたからと言って良いことがあるわけではないんですけど、新しいガチャが出たら誰よりも早く新しい武器を手に入れて、レベルキャップが解放されたら誰よりも早く上げるというユーザーさんも多いですね。

下川:もうひとつは、ワールド(オンラインゲームにおけるプレイ空間の単位。ワールド間の移動やワールドをまたいだコミュニケーションはできない)の数です。現在ワールド8まであるんですが、当初そこまで増やす予定はなかったんです。本当は1~2万人のユーザーをひとつのワールドに集めてワイワイ遊んでいただく予定でしたが、マップの広さの関係から現状の参加人数がギリギリパンパンなんです。ワールドを追加していく形で対応させていただいていますが、MMORPGとしては、ひとつのワールドの参加人数が少ないかなというのはあります。

板倉:あとはクランでしょうか。当初かなり早いタイミングでクランを入れる予定だったんですが、紆余曲折があってまだ入れていないんです。

安藤:オンラインゲームにクランやギルドはつきものですが、どんな問題があるんでしょう?

下川:クランはかなり閉じたコミュニティーなので、正直ログレスに合うのかどうかという懸念がありました。現状何もコミュニティーがない状態で、一期一会で戦えてゲームをクリアしていけるお手軽感があるのも確かですが、あっさりしているというか、一期一会すぎてデメリットになっている気もするんです。

安藤:クランやギルドが追加されると、24時間張り付く人も出てきそうですね。さすらい人どうしが協力してゲームを進めていく、そのくらいのつながり方がすごくいいなと僕は思ったんですけど、「このメンバーとずっと戦いたい」と思うことも確かにあります。

下川:今はグループチャットという機能が入っていますので、そこにもうちょっと機能を追加していきたいと思います。

安藤:でも真剣に遊んでいるプレイヤーたちは、自分たちで方法を見つけて連絡を取りあいますよね。ゲームのなかにコミュニケーションを取る方法がなければ自分たちでなんとかしようという、かつてのMMORPGの懐かしい感じを思い出しました。そういう方があったかいコミュニティーができあがりますよね。

板倉:ほかのネットワークゲームと比べても、たぶんこれだけ同時接続のユーザーがいるMMORPGは国内だと『FF XIV』や『ファンタシースターオンライン2』くらいで、そこまでいくと我々にとっても経験のない規模なんです。

安藤:確かに、スマートフォンのアクティブユーザーって恐ろしい数ですから、ネットゲームの同時接続に置き換えるとかなりの規模ですね。

板倉:それだけの数のユーザーをクランでカテゴライズして本当にまとまるんだろうかという心配もありますが、プレイヤーからの要望もかなりありますのでなんとかしたいです。

安藤:もっとのめり込みたいという要望ですね。PCのMMORPGでは、トイレに行ってコンビニでパンと牛乳を買って6時間張り付く、ということもあるじゃないですか。PCだと皆コアゲーマーだからそれも上等でしょうけど、スマホの場合はサクッと軽く1時間楽しむユーザーもいる。そこのバランスの取り方は難しいかもしれませんね。

下川:でも忘れてはいけないのは、コンビニに行って牛乳とパンを買ってでも張り付いてくれるほど熱中するゲームというのは、目指すべき素晴らしいゲームだということです。熱中できるゲームにしたいんです。熱中していただけるということは気に入っていただいているということですから、そういう遊びを絶えず考えてきたいです。

※記事の内容は2014年11月26日のものです。

『剣と魔法のログレス ~いにしえの女神~』:召喚★アプリ神
↑スクウェア・エニックス安藤武博氏。

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