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5分でわかる iPhone6の新機能“Apple Pay”の仕組み

2014年09月10日 12時30分更新

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●iPhone 6、iPhone 6 Plusをレジにかざすだけで支払い、iPhoneがお財布代わりに

 今回発表された『iPhone 6』、『iPhone 6 Plus』の目玉機能として発表されたのが“Apple Pay”。iPhoneにクレジットカードやデビットカードの情報を登録しておくことで、Apple Payに対応した店舗での買い物の際、非接触通信の読み取り端末にiPhoneをかざすだけで支払いが可能となる。

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●支払いにはNFC技術を利用、Touch IDに指を載せるだけでサインやPIN入力はなし

 Apple Payでは、支払いにNFC(Near Field Communication)技術を用いている。NFC通信を行なうためのアンテナは本体背面の上部にあり、これをApple Pay対応店舗のレジの端末にかざすだけでいい。

 端末をかざす際には、iPhoneのロックを解除したり、特定のアプリを起動させておく必要はなく、画面が消えたままの状態で問題ない。その際、Touch IDのセンサー部に指を載せておけば、クレジットカードの利用でめんどうな4桁の数字のPINコード入力やサインは求められない。手軽に利用できるのが大きなポイントだ。

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●カード情報をカメラで読み取るだけでApple Payに登録可能、カード情報は安全に保存

 カード情報の登録にはiPhone内蔵のカメラを使う。クレジットカード(デビットカード)をカメラ読み取らせると、カード番号や有効期限、名前が自動入力され、後は背面のセキュリティーコードを入力するだけで、Passbookに該当のカードがデフォルトの決済カードとして登録される。

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 カード情報は複数登録が可能で、適時Passbook上で選択できる。このカード情報はiPhone 6、iPhone 6 Plusで新たに搭載された“セキュアエレメント(SE)”という専用のセキュリティーチップ内に登録され、第三者がこの情報を取り出すのは非常に困難だ。

 店舗での支払いにおいても、このセキュアエレメント内のクレジットカード情報を直接店舗に渡すのではなく、“Device Account Number”と呼ばれる管理番号が用いられ、決済を行なった店舗などがクレジットカード情報を直接知る術はなく、安全性が担保される。クレジットカード番号自体はAppleのサーバーにも保存されていないため、ハッキングによる情報漏洩の危険性が低いのも特徴だ。

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●保存されたカード情報を使ってオンラインでの買い物も可能

 Apple Payが対応するのはリアル店舗での買い物だけではない。同サービスに対応したアプリを使えば、オンラインでのショッピングでもApple Payの決済情報がそのまま利用できる。一般に、オンラインでの買い物ではカード情報のほか、それに紐付いた連絡先情報などをひととおりり入力しておく必要があるが、Apple Payならこうした手間もなく「Apple Pay」マークのついたボタンを選択するだけで決済が完了する。

 しかも、リアル店舗での買い物同様にカード情報などが先方に渡らないため、ハッキングなどが原因の情報漏洩でカード情報がオンラインショッピングサイトから漏れる心配がないメリットがある。

●発表されたばかりの『Apple Watch』でもNFCによる支払いに対応

 腕時計型のウェアラブルデバイスとして注目を集めていた『Apple Watch』がついに発表されたが、このApple WatchはNFCに対応しており、さまざまなデバイスとのペアリングが可能だ。一方で、このNFC機能はiPhoneと同くApple Payによる支払いにも利用でき、Apple Watchを読み取り端末に“タッチ”することでリアル店舗での支払いに利用できる。

 まだ不明な部分はあるが、iPhone 6、iPhone 6 Plusとのペアで利用する以外に、Apple Watch自体がセキュアエレメントを内蔵しており、iPhoneなしでもWatch単体でApple PayによるNFC決済が可能になるかもしれない。

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●もし端末を紛失してしまってもリモートで削除可能

 リモートワイプと呼ばれる機能により、“Find my iPhone”アプリ(サービス)を使って遠隔地にあるiPhoneの情報を削除可能だ。紛失に盗難と、iPhoneをなくしてしまう要因は多数あるが、クレジットカードなどの大切な個人情報を端末に保存する機会は増えており、紛失の際のダメージは非常に大きい。

 米カリフォルニア州では“Kill Switch”と呼ばれるリモートワイプ機能の実装が法律で義務付けられたが、こうした要求にも対応できる。

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●米国ではクレジットカード3社、大手銀行10社、大手小売りチェーン15社が参加表明、全米22万の店舗で今年10月よりサービス開始

 Appleはクレジットカード会社大手3社(American Express、MasterCard、Visa)に加え、Bank of America、Capital One、Chase、Citi、Wells Fargoの5つの主要銀行との提携で、これら銀行が発行するクレジットカード(デビットカード)をApple Payで利用可能にする。

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 このほか、Barclays、Navy Federal Credit Union、PNC、USAA、US Bankの銀行5社が順次Apple Payに対応していく見込みだ。小売店舗ではMacy'sやBloomingdale'sといった百貨店、Walgreens/Duane Readeのドラッグストア、マクドナルドやサブウェイなどのファーストフードが提携会社となっている。

 オンラインショッピングでは、Target、Starbucks、MLB.com、UBERなどがそれぞれのアプリでApple Pay対応を進めている。特にトラブルなどがなければ、今年10月にもApple Payによる支払いがこれら店舗とクレジットカードの組み合わせで利用可能になるはずだ。

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 筆者自身が驚いているのは、これだけの提携相手をサービス立ち上げ段階で表明できている点だ。特に米国では2015年以降、小売店のPOSレジスターで“EMV”と呼ばれるチップ入りクレジットカードに対応するのが義務化されるため、各社はその対応に奔走している。

 POSを刷新するタイミングで「NFC決済」への対応を進める事業者も多く、数年前から大手小売りチェーンを中心にNFC決済可能な店舗が急増している。今回のApple Payはこれに歩調を合わせたもので、サービス開始のタイミングで、全米でこれだけの大量規模の対応店舗が出現するわけだ。現時点で、米国ではNFC決済可能なスマートフォン環境をもっているユーザーは非常に限られており、iPhoneが同決済が可能になった点は大きなインパクトになるだろう。

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●日本でのサービス開始はいつ?

 残念ながら、現時点で日本でのサービスインの時期は不明だ。発表会でも「まず米国から」とコメントされており、米国のiPhone 6紹介ページにはApple Payへの解説が含まれているのに対し、日本のiPhone 6紹介ページにはそういった記載はいっさいない。

 理由は2つあり、日本ではNFCといいつつも非接触通信での決済手段は“FeliCa”技術を用いており、Appleが内蔵式セキュアエレメント(eSE)で採用しているとみられるType-A/Bとの直接的な互換性がなく、現状のiPhone 6のままでは日本のインフラを利用できないことがそのひとつとして挙げられる。

 日本でもType-A/Bベースの技術に対応した決済インフラの展開が内々的に進められているが、もう数年はかかりそうだ。もうひとつの理由は、Appleがサービス展開地域を米国に定めており、提携交渉を行なっている相手が米国業者に偏っているという面がある。実際、米国と同じタイミングでiPhone 6の販売が開始される英国やカナダといった地域でもApple Payの説明は行なわれておらず、同サービスの米国外での展開は順次……という感じだ。おそらく、日本でのローンチは少なくとも1~2年先になると予測している。

●関連サイト
アップル(プレスリリース)

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