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iPhone6片手にApple Pay利用で美食の街・パリのマクドナルドを食べ尽くす

2014年11月25日 20時00分更新

 Apple Payのサービスが米国時間10月20日にiOS8.1の提供とともにスタートし、全米の著名小売りチェーンを中心に利用可能となった。「我先に」といわんばかりに多くのユーザーがiPhone片手に店舗に殺到したとみられるが、これはあくまで米国での話。米国外のユーザーはサービス提供の対象外であり、現在のところ試す手段はない。

 だが先日の“Apple Payをソフトバンク版iPhone6にセットアップする方法と挙動”のレポートにもあるように、米国発行のクレジットカード(もしくはデビットカード)さえあれば、別に米国外の端末や環境であってもApple Payのセットアップ自体は可能だ。ただし日本の場合、Apple Payを受け付ける決済端末がほぼ皆無の状況で、セットアップしても試す機会がない。

 一方で、米国外であっても「Apple Payが使えた」という報告がちらほら上がっていたほか、後述するがApple Payの仕組みから考えて“米国内でしかApple Payが動作しない”という理由がない。つまり“セットアップ済みのiPhone6を日本国外にさえ持ち出せば使える可能性がある”というわけだ。幸い、筆者はICカードやNFC技術の総合展示会である“Cartes 2014”の取材のため、11月3日から1週間ほどフランスはパリに出張する予定があったので、「ならば現地でApple Payを試してみよう」と考えた。

Apple Pay
↑Apple Payをセットアップしたソフトバンク版iPhone 6を片手にパリへ。

■米国外の店舗でApple Payの決済に成功

 筆者は今回、パリ北駅(Gare du Nord)前のホテルに宿を取っており、会期中はここから毎日シャルル=ド=ゴール空港隣のコンベンションセンターへ出勤していた。北駅は治安は非常に悪いが、さすが主要ターミナルだけあってホテルや飲食店が充実しており、今回“Apple Payが確実に使えそう”なターゲットとして目を付けていたマクドナルドもある。

Apple Pay
↑まずはパリ北駅(Gare du Nord)にあるマクドナルドから。

 マクドナルドはApple Payスタート以前より全米で非接触通信による決済が可能だったほか、欧州各店舗でNFC対応カード読み取り機を設置していることでも知られている。Apple Payは既存のNFC決済インフラ(“MasterCard PayPass”や“Visa payWave ”など)をそのまま流用しており、店舗側がApple Payの通信を意図的に拒否しない限りそのまま決済が完了する仕組みとなっている(もちろん読み取り端末の相性といった問題はある)。ならば、フランスのマクドナルドはApple Payが使える最有力候補のひとつとなる。

 読みは的中で、到着日に向かった北駅前のマクドナルドでは、支払いタイミングでiPhone6をカード読み取り機にかざすと、すぐに決済が完了した。レシートを確認すると、前回のレポートでも紹介したトークン化(Tokenization)処理によって仮に割り当てられたカード番号が表示されており、筆者が本来使っているカード番号は表示されていない。また翌日も晩ご飯は北駅前のマクドナルドとなったが、iPhone6のApple Payに関する決済情報を見ると、直前の取引情報こそ表示されているものの、過去の取引履歴はカード発行会社のサイトにアクセスするまでは確認できず(iPhoneの場合は専用アプリもある)、“Appleは履歴情報を記録しない”というのは確かなようだ。

Apple Pay
Apple Pay
↑レジ横にあるカード読み取り機にiPhone6をかざすと、(写真ではわかりにくいが)M字のロゴがNFCのワイヤレス通信のマークへと変化し、しばらくすると“Done”の表示が出て決済が完了する。
Apple Pay
↑買い物時に出てくるレシート。クレジットカードの末尾4桁が表示されているが、これは実際に筆者のカード番号ではなく、Apple Payの特徴であるトークン化処理によって仮に割り当てられたカード番号となっている。
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↑決済直後にPassbookの登録カードを開くと、買い物をした場所が表示されている。ただしApple Payでは直近の取引情報を表示するのみ。
Apple Pay
↑実際の取引履歴は銀行またはカード発行会社のWebサイト(筆者の場合はBank of America、以下“BofA”)を参照しなければならない。モバイル端末の場合は専用アプリがあるので、そのダウンロードを促される。
Apple Pay
↑筆者がフランスでお気に入りの“Deluxe Royalバーガー”のセット。パリ市内で7.15ユーロとなっており、現地の物価を考えるとかなりコストパフォーマンスは高い

 なお、北駅前以外のマクドナルドで使えるかを試すために、そこから徒歩数分ほどの場所にある東駅(Gare de l'Est)前の店舗で到着2日目に買い物をしてみたのだが、こちらはなんと決済に失敗してしまった。iPhone6の画面では成功(Touch IDの認証で数秒かかった後に“Done”という表示が出る)しているように出るのだが、カウンターの店員には「カードが通ってない」と返事されたうえ、実際に読み取り機の表示を確認してみると“取引拒否”のようなメッセージが出ている。

Apple Pay
↑次にトライしてみたのが、パリ北駅から徒歩数分の場所にあるパリ東駅(Gare de l’Est)前のマクドナルド。

 二重課金の可能性があるので銀行のサイトで取引履歴を確認してみたが、やはり引き落としはされていない。必ずしもフランスのマクドナルド全店で使えるわけではないようだ。なのでここでは現金払いで済ませ、もう一度確認のために北駅前の店舗へと移動して追加注文した結果が、先ほどの“2日連続同じマクドナルドで晩ご飯”というわけだ。

Apple Pay
↑なんと読み取り端末が“取引拒否”の表示でApple Pay決済失敗に。iPhone6側では“Done”の表示が出てるが……。
Apple Pay
↑Passbookの表示でも成功しているように見えるが、BofAの履歴を確認しても引き落としはされていない。仕方なく現金払いに。

■美食の街でマクドナルドを食べ尽くす

 こうなると、徹底的に試してみたくなるのが常だ。Androidには“PayPass Locator”というアプリがあり、MasterCardの非接触決済サービスである“PayPass”の使える店舗が同社の持つデータベースから地図で確認できるようになっている。

Apple Pay
↑AndroidアプリのPayPass Locatorを使うと、PayPassなど非接触端末による決済可能な店のリストが見られる。例えば、北駅前のホテルから一番近いのがこの“Hokkaido”という店。
Apple Pay
↑Hokkaidoは寿司屋で、ランチから後は夜の営業時間まで再オープンしないらしい。シーフードはWindows Phoneを扱う某ジャーナリストの担当なので、今回筆者はスルーで。

 筆者の場合、カードはVisaなので正確には“Visa payWave”対応店舗の必要があるが、実際には両対応しているケースがほとんどなので、今回はこのアプリを参考に対応店舗を巡ってみることにした。また、マクドナルドの対応状況を確かめるため、少ない滞在日程の中でパリじゅうのマクドナルドでひたすら試してみることもやってみた。

 筆者は日本国内ではマクドナルドに行くことはないが、フランスでは外食が全体に高いこともあり、(相対的に)コストパフォーマンスがよく、味も安定している。店内に無料WiFiが完備されていることもあり、年1ヵ月弱ほどのフランス滞在中は1日1食は必ずマクドナルドということも珍しくない。特にパリでは中途半端な値段のレストランでは外れが多いこともあり、なかなかお勧めだ。

Apple Pay
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↑“Diagonal”というスーパーマーケットの一部店舗がPayPass対応とのことでトライしてみたが、読み取り機との相性の問題か、iPhone6を近付けても決済まで進めなかった(NFC読み取りは側面部)。

 すでに昼ご飯を食べた後、これから巡るマクドナルド全店で食事を続けていては胃袋が持たないため、なるべく単品注文で少しずつ巡ってみることにした。北駅前の店舗で再度バーガーを注文してApple Payの利用ができることを確認した後、徒歩圏内の別店舗にまず行ってみた。

Apple Pay
↑まだ北駅前のマクドナルドでしかApple Payが成功しておらず、「ならば徹底的にマクドナルドを巡って検証してみよう」ということで、東駅からそのまま歩くこと15分、レピュブリク(Republique)広場前のマクドナルドにやってきた。
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↑そもそもカードリーダーがなかった。
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↑1つ2ユーロの“Petit Italien”というハンバーガーを食べて気を取り直す。中のソースがけっこう美味しい。「1つ」といって頼んだのに、なぜか2つ出てきて4ユーロの請求になるのはお約束。

 フランスではバーガーを注文の際に「1つ」ということで人差し指を出して注文したところ、なぜか必ず2つバーガーを出されることが多い(9月に行ったマルセイユでも何度もトラブルになった)。後で気付いたのだが、欧米では指で数を数えるときに「親指→人差し指→中指→……」といった具合に指を1つずつ順番に上げていく方法を採っており、「人差し指を立てる=2つ」と勘違いされていた可能性が高い。フランス語で細かく説明すれば勘違いされないのだろうが、英語だけでは意思疎通が難しいのかもしれない。

Apple Pay
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↑レピュブリクからさらに南に25分ほど歩いてシテ島近くのマクドナルドに。客層も全体に良くなり、レジ周りもきれい。ただしApple Payは動作しなかった。
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↑すでに満腹気味でこれ以上食べると苦しかったので、フラッペという名のシェイク状の飲み物を注文。
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↑さらに15分ほど西に歩いて、ルーブル美術館の北側近くにあるマクドナルドに。こちらは読み取り機に近付けると一瞬画面が切り替わってNFCマークが出るものの、Apple Payの取引が完了することはなかった。
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↑やはり現金払いでソフトクリーム状のデザートを購入。満腹状態に生クリーム山盛りはかなり厳しい印象。
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↑フランスに限らず、欧州のマクドナルドの多くでは“Easy Order”という注文専用端末がある。受け取りも専用レーンが用意されており、あまり並ばずに商品を入手できる。ただし、Apple Payのような非接触通信による支払いには未対応で、この あたりの改良に期待したい。
Apple Pay
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↑ダメモトという感じで、次にターゲットにしたのがオペラ近くにある店舗。
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↑ついにApple Payによる支払いが成功して、モッツァレラチーズとトマトの入ったパスタサラダをいただく。iPhone6を使って支払いを済ませたところ、カウンターの綺麗なお姉さんが「すごいクールね。自分もやってみたい」と興奮気味に話しかけてきたのが印象的。

 すでにハンバーガーを見るのも嫌なほど満腹状態だったが、最後に試したパリの6店舗目で成功したことで、だいたいApple Payが成功するパターンと失敗するパターンが見えてきた。

(1)決済タイミングになった後、Touch IDに指を載せた状態でiPhone6の先端をカード読み取り機に近付けると、読み取り機の画面表示が切り替わってiPhone6の画面上に支払いカードの画面が表示される。そのまま数秒間Touch IDに指を載せていると認証が行なわれ、“Done2の表示が出ると決済が完了する(パリ北駅前とオペラ近く)

(2)途中までは(1)のパターンで進むが、最終的に取引は失敗している(パリ東駅前)

(3)Touch IDの認証は完了するが、そのままループ状態に入ってしまい決済そのものは完了しない(スーパーマーケットDiagonal)

(4)一瞬読み取り機の表示がNFC対応のものに切り替わるが、iPhone6は無反応(ルーブル美術館近く)

(5)そもそも読み取り機がNFC信号を出しておらず、切り替わらない(シテ島近く)

 機会があったら、このあたりの原因を少しずつ解明していきたいと思う。また、Apple Payで決済する際のコツとして、決済タイミングで店員に「カード払いで」と宣言することが重要だ。後でいろいろ試したところ、この宣言後に決済可能になったこともあり、前述(4)か(5)のパターンは実際には成功していた可能性もある。

Apple Pay
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↑すでにほぼ満腹状態で苦しかったが、マクドナルド以外も試してみたいと思い、サンタンヌ通り(Rue Sainte-Anne)の日本料理店が密集しているエリアに行ってみる。“Aki”という麺類とお好み焼き屋がPayPassに対応しているようなので、きつねうどんを注文し、かなり苦しいけど完食してみた。
Apple Pay
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↑最後に会計をApple Payで支払おうとして「カードで」と言ったところ、店員が指さしたのは「カード支払いは25ユーロから」というポップ表示(きつねうどんは11ユーロ)。最後の最後で無念の現金払いに。

■シャンパン製造の本拠地、王の都・ランスへ

 今回、イベント終了直後に日本に戻ると飛行機のチケットが非常に高かったため、2泊ほど余分にパリに滞在せざるを得ず、せっかくの機会なのでパリ近郊の街であるランス(Reims)に顔を出してみることにした。Apple Pay的には特に面白い話題はないのだが、歴史好きやワイン好きには興味深い街で、パリからの日帰りも簡単なので、ぜひ訪問してみてほしい場所だ。

Apple Pay
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↑旅程の都合でイベント取材終了後も2泊ほどフランス滞在の必要があったので、パリ近郊のランス(Reims)の街へTGVで移動。
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↑ランス駅にある売店で、飲み物をApple Payで購入したところ。2ユーロの少額決済だが問題なく購入できている。なお、このRelayという店は空港や駅、街中など、あちこちに店舗があり、プリペイド携帯のチャージも毎日夜遅くまで購入できる便利な場所。つまり、Apple Payが使える環境はそこらじゅうにあるということになる。
Apple Pay
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↑ランスは歴代フランス王が戴冠式を挙げた、このノートルダム大聖堂が有名な観光スポットだが、同時にシャンパン製造で知られるシャンパーニュ地方の中心都市でもある。発泡ワイン好きの方で機会があったら、パリからTGVで45分程度なので、ぜひランス周辺のワイナリーを訪れてみてほしい。

 パリではApple Payがなかなか使えず苦労していたのだが、このランスでは面白いほど成功した。まず、街の中心部にあるマクドナルドでは問題なくApple Payが使えたし、チェーン展開している小売店の“Relay”、“Paul”といった店舗でもApple Payが利用できた。とくにRelayで利用できるのは旅行者にとってはありがたい。シャルル=ド=ゴール空港(CDG)で到着した後や、到着駅には必ずといっていいほどRelayがり、到着直後で小銭や現金がないタイミングでのApple Payは非常にありがたい。

 余談だが、Relayではプリペイド携帯のチャージ(トップアップ)もカンタンに購入できるため、フランスに行く機会の多い旅行者には便利だ。

Apple Pay
↑ランスでの昼ご飯と晩ご飯もマクドナルドで。手慣れたもので、Apple Payの使い方のコツさえわかれば、物怖じせず注文できる。
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↑Paulというブーランジェリー(パン屋)のチェーン店でもApple Payが使える。ただし、先ほどのRelayも含め、必ずしもすべてのPaul店舗で利用できるわけではないようだ。
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↑ランスの街のトラムやバスのチケットはNFCベースの非接触通信カードになっている。“2時間券”などもあり、自販機やバスの運転手でチケットを購入すると使い捨て方式のカードを手渡され、写真のような読み取り端末にかざしてチケット利用を開始する。将来的にはiPhoneにもこのようなチケットが入るのだろうか。

 ただし、すべてのRelayやPaulでApple Payが利用できるわけではないようで、たとえば今回Cartes会場だったParis Nord VillepinteにあったRelayとPaulでは、どちらもApple Payは利用できなかった。マクドナルドを含め、このあたりの店舗ごとの差異がもう少し吸収されればフランスでのApple Payももう少し使いやすくなるのではないだろうか。

Apple Pay
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↑番外編だが、最近パリで美味しいラーメン屋が増えているようだ。関東圏では有名なこってりラーメンの“なりたけ”もパリ支店を持っており、日本と変わらない味を楽しめる。ネギが(筆者にとって)若干残念な味だったのと、脂の量が全体に少なめなのが現地向け仕様なのかもしれない。

●関連サイト
Apple Pay概要ページ(英文)

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