昨年、NTTドコモがiPhoneを発売したことで、スマホのラインアップがキャリアの差別化につながらなくなってきた。「どのキャリアでも購入できる機種は一緒」ということで、「スマホの種類でキャリアを乗り換える」ということもなくなりつつあるようだ。
“Knock ON”機能などを搭載するisai FL LGL24 |
しかし、そんな中でも、何とか端末ラインアップで差別化しようと奮闘しているのがKDDIだ。この夏商戦でも、KDDIオリジナルモデルである「isai FL」を韓国・LGエレクトロニクスと共同開発。
“DUO CAMERA”で凝った撮影が可能なHTC J butterfly HTL23 |
また、台湾・HTCとも久々にコラボレーションモデルとなる「HTC J Butterfly」を投入している。
KDDI・プロダクト企画本部長の小林昌宏氏 |
端末開発を統括するKDDI・プロダクト企画本部長の小林昌宏氏は「ここ1〜2年、ほかにはないもの、これ欲しいなと言ってもらえるものをどれだけつくれるか、頑張っている。もはや、あがきに近いかも知れない」と振り返る。
KDDIがここまでオリジナルモデルにこだわる理由としてあるのが、「お客さんをいかに店頭に呼び込むか」という狙いがある。もはや、スマホはスペックが横並びになりつつあり、なかなか個性的な端末を用意するのが難しい。しかし、メーカーと一緒に開発し、他社にないラインアップを揃えることで、auショップで端末を触ってみようとユーザーに思わせることが重要だというのだ。
実際、この夏商戦でも、京セラの防水・耐衝撃スマホ「TORQUE」の売れ行きは好調だったようだ。「NECカシオ・G’zシリーズのお客様が新機種が出ないかと悶々としていた。出だしが好調で、かなりうれしい」(小林氏)。
京セラの防水・耐衝撃スマホであるTORQUE |
KDDIでは、フィーチャーフォンのころから、オリジナルモデル開発に注力してきた。「auは以前からデザインに注力をしてきており、デザインをコントロールするノウハウも社内にある。デザインでモノを選ぶユーザのために、開発を続けてきたい」(小林氏)。HTC J Butterflyも、後継機種が出ないと噂されていたが、何とかこの夏に復活を遂げた。
小林氏は「我々が想定している以上に同じメーカーの機種を使い続け、同じシリーズを買い続けてくれる人がいる。固定的なファンが一定数いるので続けられるので、大事にしていきたい」といい、今後もこの路線は変わらないようだ。
開発者向けリファレンス端末としてモジラ財団から販売されたFirefox OS端末であるFlame |
KDDIのラインアップで気になることと言えば、今年度に発売となる「Firefox OSスマホ」だ。田中プロは「(Firefox OSスマホは)結構、オシャレですよ」と発言するなど、かつてのINFOBARやMEDIA SKINの路線になる可能性が高くなってきた。
小林氏は「どちらかというと汎用的な端末ではない位置づけ。言えるのはそこまで」と、頑なに口を閉ざしてしまった。 どうやら、Firefox OSスマホはAndroidやiPhoneのように一般的なユーザーを狙うのではなく、徹底的にギーク層に向けたスマホとして味付けをしているようだ。
一方、ギーク向けとは対照的なのがフィーチャーフォン、いわゆるガラケーだ。ここ数年「スマホブーム」と言われているが、その裏でフィーチャーフォンの人気も根強いものがある。
京セラのフィーチャーフォンGRATINA |
KDDIが昨年9月に投入した京セラのフィーチャーフォン「GRATINA」も「ユーザーからの反響が高く、ビックリした」(小林氏)とキャリアが驚くほどよく売れた。
フィーチャーフォンに関しては、部材を作るメーカーが倒産したりしたことで、一部の部材が調達しにくくなっており、「作りたくて作れない状況」になると言われている。
しかし、KDDIでは「フィーチャーフォンは大切にする。開発を止めているわけではない。定期的にフィーチャーフォンユーザーへのアプローチは止めていない。お客様に供給できるようにチップも抑えており、努力は続けている」(小林氏)という。
端末関連で、ここ最近騒がしくなっているのが総務省による「SIMロック解除義務化」だ。現在はNTTドコモのみが対応しているSIMロック解除(ただしiPhoneを除く)が、2015年以降、全キャリアで義務化になるという。
KDDIでは、SIMロック解除義務化については「世の中の潜在的なご要望と理解している。ただし、SIMロックについては、最初は意味をきちんと理解されて、上手く活用されるユーザーは限られた方になるのかと。(一般ユーザーに)理解されるのは時間がかかるのではないか」(小林氏)と見ている。
実際のところ、KDDIの端末でSIMロックを解除しても、音声部分は他社とは異なる通信方式であるため、他キャリアで使おうと思っても音声通話ができない可能性が高い。
そのためKDDIとしても「自由のロックを解除しても、他キャリアネットワークでは音声通話ができず、ユーザーに不利益が生じる。お客様に混乱がないようにしていきたい」(小林氏)と語る。このあたりのユーザーのクレームをどう解決していくのか。キャリアにとっても頭の痛い問題だろう。
おそらく、将来的には音声部分もLTE網を使ったVoLTEになることで、他キャリアと同じ通信方式に揃えることができるようになりそうだ。実際、KDDIではLTEの実人口カバー率を全国99%まで広げるなど、VoLTEを導入する準備が整いつつある。VoLTEがいまの3Gネットワークと同等に使えるようになれば、いずれ3G回線を積まない端末というのも販売される可能性が高い。「LTEネットワークを強化することで、グローバルでの流通する端末を入れやすくなる。3Gネットワークをどれくらいのタイミングで縮退させるか、経営の大きな課題といえる」(小林氏)
LTEに一本化できれば、端末側も既存の3Gネットワーク対応を外すことができ、グローバルで流通する端末をそのまま調達しやすくなる。 また、一方でネットワークもLTEのみになれば、KDDIとしては設備コストを下げることができる。KDDIにとってみれば、CDMAを外し、LTEのみのスマホを投入することは、悲願とも言えるのだ。 「いつのタイミングでLTEに一本化するのか」は今後のKDDIにおける端末戦略を語る上で重要なポイントとなってきそうだ。
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