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スナッチャーの敵はメタルギア!? コナミのMSXゲーム伝説5:MSX30周年

2014年04月17日 12時30分更新

MSX30周年スロット&スプライトロゴ

 ついに発売された『METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES』(PlayStation4 / PlayStation3 / Xbox One / Xbox 360)。さっそく楽しんでいるかな?
 ということで、このメタルギアシリーズ最新作の発売を勝手に記念して、今回も監督である小島秀夫氏の作品から『スナッチャー』と『SDスナッチャー』の2本を文章大増量でお送りします。

 古参ゲーマーMSXユーザーの主観に満ちた思い出話ですので、若い『メタルギア ソリッド』ファンの皆さんは生暖かい目で読んでいただければと思います。では老体にムチ打っていってみようかの~。


■スナッチャー(1988年)

MSX30周年:コナミ第5回

 コナミのMSXソフトの中では極めて特異なジャンルに位置する『スナッチャー』。当時のコナミはアクションゲーム主体であり、純然たる“アドベンチャーゲーム”はこれが“初”である。そのためか、少しばかりコナミらしくないゲームとして登場した感があった。前年に『シャロム』というMSXオリジナルのアドベンチャーゲームも発売されていたが、マップ上のキャラクターを操作して移動し、ボス戦だけはアクションゲームになるなど独特の要素が存在していた。つまり『シャロム』はコナミらしいゲームだったのである。

 今日では、この『スナッチャー』について、小島監督が“PC-8801系で遊んだ某アドベンチャーゲームに刺激を受けて生まれた”ことはファンの間では広く知られているが、実はこの企画自体もPC-8801系向けであった。ところが企画の提出に際し「MSX2用も出してね」と会社から言われたのだという。というわけで、MSXユーザーにとってはちょっぴり残念なのだが、スナッチャーは“PC-8801mkIISR版がオリジナルで、MSX2用はその移植”という位置づけが正しいようだ。まあ、ほとんど同時開発みたいなものなのだが。
 ちなみに、監督は企画作成当時MSX2の画面モードにPC-8801系(横640ドット)に近いSCREEN7(横512ドット)があることをまだ知らなかったそうである。『メタルギア』がSCREEN5(横256ドット)で作られていたこともあり、88系と同程度に細かいグラフィック表現はMSX2には無理だと思ったのかもしれない。

 さて本ゲームは、“人とすり替わる(スナッチする)”謎のバイオロイド“スナッチャー”が蠢くネオ・コウベ・シティを舞台に、スナッチャーを捜査、破壊し、その正体に迫るのが目的である。当時としては高い完成度を誇ったシナリオが特長で、パソコン用のアドベンチャーゲーム初期の“探索する(だけの)ゲーム”ではなく“シナリオ・演出を楽しむゲーム”として登場した。シナリオの原稿枚数をパッケージ裏に表記しているのもその現われだろう。

MSX30周年:コナミ第5回
↑主人公のギリアン・シード。推定31歳か……。「いつのまにかお前よりも年上になっちまったよ」って誰かつぶやいていたなぁ。


 主人公“ギリアン・シード”をはじめとする個性豊かなキャラクターの造形も非常にレベルが高い。スナッチャー対策部隊である“JUNKER”への配属から始まり、同僚の死、ライバルの出現、意外なところに潜んでいた敵……という構成も見事であり、『メタルギア』よりも、さらに映画らしさを意識した作品となっている。
 ゲームの作りも当時としては先進的で、全体が専用のスクリプト言語で書かれている。それ自体はすでに珍しくなかったが、シナリオ展開だけでなく音楽やアニメーションのタイミングに至るまでを小島監督自身が丁寧に演出を作り込んでいったことが、近年の監督のTwitterの発言から判明している。MSXというハードの限界や当時のプランナーの地位の低さなどからくる様々な事情など、前からも後からもゲーム製作を制約してくる“状況”に屈服することなく頑張った結果、開発に1年半もかかってしまい、ストーリーが完結する前に開発が完了してしまった。そのため、本作のみではスナッチャーの開発目的などはわからない。また、残念ながらこの時点では続編も企画段階のみで終わってしまったのであった。

 演出面に触れると、ちょうどこの時期はゲームでもアニメーション処理などが流行しつつあった。そのため『スナッチャー』も含め、同時期の作品にはアニメーションを強調した作品がいくつか見られる。アニメーション処理、といっても当時のことなのでできることはかなり限られていたのだが、スポット処理を駆使したクローズアップ(っぽい表現)や画面分割の使用などは当時のゲーム全体としてもまだかなり珍しく攻めた演出で、ここにも“映画っぽい表現”への強いこだわりと、それを超えていこうという意気込みが感じ取れる。ゲーマーはシナリオやゲーム自体の面白さだけでなく、そうしたゲーム制作者の熱意も感じとり、その人間の仕事に感動するのだ。

MSX30周年:コナミ第5回
↑基本的にはコマンド型のアドベンチャーゲーム。饒舌なメタルギアmkII(SR以降)君。丁寧語ですね。


 ところでMSX2版であるが、PC-8801mkIISR版が8800円なのに対して9800円と価格がややが高い(普通は逆)。本作はフロッピーディスク3枚からなるのだが、音楽の再生に専用の“サウンドカートリッジ”が付属されていたためだ。これは言わずと知れた“SCC音源カートリッジ”である。このカートリッジはよく“ROM”と表現されるが、実際にはRAMが64Kバイト入っている。なんだか少なそうに聞こえるが、64KバイトとはMSX2本体のメインRAMと同等の容量で、要するにRAMが2倍になるのだ。そう考えるとなかなか豪気である……のだが、困ったことにその効果はあんまり実感できない。これも当時よく言われていたのだが、MSX本体側のフロッピーディスクドライブのアクセスが遅いのだ。構成上、頻繁にシーン移動が入るため、それに伴うディスクアクセスが気になった人が多かったのかもしれない。これには前述のスクリプト言語での記述もからんでいるようで、ハード資源が貧弱なMSX2では特に厳しかったのだろう。

 さらにMSX2のもつ弱点のひとつに“ディスクアクセスをしながら音楽を鳴らせない”というのがあり、PC-8801mkIISR版と大きく性能差がついた点であった。これはスクリプト言語での開発には大きな制約になる。しかしMSX2版『スナッチャー』はこのあたり相当に頑張っており、ここぞという時には先読みしておいたデータを使うことで演出が途切れないように工夫している。

 音楽はPC-8801mkIISR用が本体内蔵のFM音源なのに対し、サウンドカートリッジによるSCCサウンドであるMSX2版は音源の特徴の違いからか、多くの曲のアレンジが大幅に異なっている。後のPCエンジン版などもそれぞれに異なるアレンジとなっているが、これはそれぞれの音源の持つ特徴、良い所を生かす工夫と言えるだろう。まあ、しかしMSXユーザーとしては『Pleasure of Tension』はMSX版が最高だぜ!ということにしておこうではないか。贔屓の引き倒しである。

MSX30周年:コナミ第5回
↑「俺たちのほんとうの闘いはこれからだ!(笑)」という悪い予感満点のメッセージだったが、コナミはちゃんとSD化して続編を作ってくれた。ありがとう! ちなみに主人公の名前は自由に変更できる。デフォルトではもちろん「ギリアン」だ。


 さて、『スナッチャー』は小島監督の作品としては他作品との関連が少々薄い。まったくないわけではなく、『メタルギア2』の最後の方でちょっとだけBIGBOSSとSNATCHER計画の関連が語られていた。あとはMGS4に“博士”の名前だけ出てきたが、その後はずっと出番なしのスナッチャーであった。ところがなんと『METAL GEAR SOLID V:GROUND ZEROES』のXBOX ONE/XBOX360版に収録される“ジャメヴ・ミッション”に久々に現われるという。PS4/PS3版の“デジャヴ・ミッション”とは別となるので、これはもうファンなら両方買うしかない。うん、買うしかないよな(自分に言い聞かせる)。


■SDスナッチャー(1990年)

MSX30周年:コナミ第5回

 コナミのMSXソフトは、最後の年となった1990年に『クォース』、『SDスナッチャー』、『メタルギア2』の3本が出ている。『SDスナッチャー』は『メタルギア2』と並んで長らくMSX2でしか遊べないゲームであった。いや、『メタルギア2』は今では復刻されているが、SDスナッチャーは未だに復刻がなされていない。本作の2年後にPCエンジンで(“SD”じゃない)『スナッチャー』がきちんと完結しているため、残念ながら浮いてしまう形になってしまったと言える。

 『スナッチャー』はコナミMSX作品の中では唯一の純粋なアドベンチャーゲームであったが、『SDスナッチャー』は実は唯一のRPGである。これ以前の作品でも“ロールプレイング”のジャンル表記がパッケージなどに使われたことはあったものの、今日的な分類では“SD”は純然たるRPGと言ってよいだろう。

 本作では小島監督はシナリオで参加し企画には関わっていなかったという。だがシナリオについては後のPCエンジン版と比較しても核となる部分は同じである。『スナッチャー』では語られることのなかった驚愕の真実は、まずSDスナッチャーで世に出ていたのだ。ただ見た目がSDキャラになってしまっていたことから、シリアスで通してほしかった前作のファンには残念な部分もあったようだ。

MSX30周年:コナミ第5回
↑SDギリアン……。ショーック! でもすぐ慣れた。やっぱりシナリオとかゲーム自体がおもしろいからSDでも大丈夫。ちょこちょこ動き回ってSDスナッチャーを追いかけろ!


 ゲームそのものはRPGだが、当時はやや少数派だった“シンボル・エンカウント方式”である。マップ上を敵が歩き回っており、うまく立ち回ると戦闘を回避することもできるタイプとなっている。ただし戦闘を避け続けていると自分が成長しないため、ある程度は戦闘を重ねなくてはならない。
 無駄な経験値稼ぎは不要で、難易度は低め。戦闘も一度経験した敵は相棒のプチ・メタル(肩に乗るほど小さなメタルギア)に任せるオート戦闘も搭載しているなど、細かい配慮もバッチリだ。終盤のミラー迷路だけは構造を知らないと猛烈な難しさだが、難しくはあっても理詰めで解ける。
 戦闘はコマンド式+照準方式とでも言うべき独特のもので、非リアルタイムながら敵にダメージを与える位置によって、例えば足を破壊して敵の移動力を削いだり、武器を破壊することで攻撃力を喪失させたりといった戦略性を持たせたものになっている。

 シナリオ面では骨子こそ同じものの、JUNKER本部にジェミーがいたり、前作では生きている間に直接対面することのなかった先輩ランナーのジャン・ジャック・ギブスンとほんの僅かではあるが捜査に同行するなど、細部の違いが色々と存在している。敵はスナッチャーだけではなく、スナッチャー側の敵メカという形で雑魚キャラが多数登場する。
 中盤でギリアンがJUNKERの資格を失ったり、ランダムがパンダのコスプレで登場するといった、後のPCエンジン以降の『スナッチャー』には見られない展開も非常に面白い。

MSX30周年:コナミ第5回
↑戦闘画面。スナッチャー側の雑魚キャラ。“SD”版のオリジナルキャラ。


 小島監督は本作にシナリオ以外は全く関わっていないと言われていたが、実際には『メタルギア2』の製作を一時止めて本作の作業に合流していた(そのために、メタルギア2の発売が少し後送りになった)とのことで、そのためかゲームのストーリー展開などに不自然さはほとんどない。またMSX界での評価は大変に高いのだが、前作との雰囲気の違いの他に、MSX2でしか発売されなかったために『メタルギア2』と同じ理由、すなわちMSXそのものが過去のものになりつつあったため、ゲーム業界全体ではあまり大きな話題にならなかった感じがあるのが惜しまれる。

 本作も『スナッチャー』同様にサウンドカートリッジ+フロッピーディスク3枚という構成で、ROMで発売されたMSXゲームよりも容量に余裕がありグラフィックや展開に幅が感じられる。また他機種への移植を意識しなかったせいかレスポンスは良好で、戦闘シーンへの出入りの際もディスクアクセスが入らないなどテンポも非常によい。

MSX30周年:コナミ第5回
↑メイン画面はオーソドックスなRPG風。コナミのMSXゲームとしてはめずらしい。

 この作品は企画者が別人ということもあってか、小島監督が『メタルギア ソリッド』以降に有名になるにつれて「あまり触れられない作品」として扱われる傾向にあると思われていた。映画でたとえると『殺人魚フライングキラー』みたいな存在だと思われていたのだろうか。しかし実際には別にそんなことはなくて、それはユーザー側の勝手な思い込みであった。その証拠に、パッケージやディスクラベルに使われたSDキャラの人形は今でも小島プロダクションに大切に保管されており、たまにTwitterで当時のままの姿を見せてくれる。こういうところも、MSXユーザーとしてはちょっぴり嬉しいのであった。

関連サイト:
METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES

(C)Konami Digital Entertainment
 

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ここからは、前回の記事(メタルギア)に対するツイッターのRTから拾ってきたおたよりコーナー!

大路SCC5/3東3ホール モ17b‏@ooji55 さん
こう言う時代を踏まえつつ作品の魅力を語る記事って大好き堪らん

――ありがとうございます。この後も、懐かしのMSXゲームの魅力を(たぶん時代を踏まえつつ)語っていきます。語っていく所存です。よろしくお願いいたします。

Kazuaki KADOYA‏@kadoyanさん
硫酸溜まりに囲まれても大丈夫。チョコレートで中和できるとSOLID SNAKEで言ってた。

――そうそう、“2”のレーションの中にチョコが入っているものがあるんでしたよね。拾った道具の使いどころという謎を解くのも楽しいゲームでした。

※今回のスナッチャーについても、みなさんの思い出話などツイッターでどんどんつぶやいてください。おもしろい話はまたここで取り上げさせていただくかも……。


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