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東北のアツいMSX魂が集結! 謎のイベント『MSX芋煮会』に潜入!:MSX30周年

2013年11月05日 22時00分更新

■そもそも「芋煮会」とはなんぞや?

 芋煮会とは宮城県や山形県などを中心に東北各地で秋になると行なわれる行事で、バーベキューの要領で河川敷に集まり、里芋を煮た料理を作ってみんなで食べるというもの。とくに山形県で開催される「日本一の芋煮会」では巨大な鍋で芋煮を作るので、ニュース映像などで見た人もきっと多いのではないでしょうか?
 そんな芋煮会とMSXにどんな関係があるのか? もしかして発電機を持っていって河原で芋煮を食べながらテレビにMSXをつないでグラ2とかやっているのだろうか?
 「確かに昔は広瀬川の河原でやってたんですよ。発電機を用意してっていうのは大変なので懲りましたけど」とは、MSX芋煮会の代表世話人のEST氏。詳しいお話を聞けばなんと1997年、つまり20世紀から続いている伝統あるMSXユーザーの会合だったのです。MSXが30周年を迎えた2013年になっても、MSXユーザーたちが定期的に集まってOFF会(もしかして死語?)を開催しているのです。それが「MSX芋煮会」というわけ。さてさて果たして、このOFF会ではどんなことが行なわれているのか? そんな好奇心を満たすために、取材班は一路宮城県の蔵王へと向かいました。

MSX30周年記念_第13回
↑紅葉が見ごろを迎えた蔵王山麓。


■なぜMSXユーザーのOFF会は盛んに行なわれているのか?

 どうして「MSX芋煮会」なる奇妙なOFF会が行なわれるようになったのか、参加者の皆さんの記憶や思いを元にお話しをまとめてみると……。時代はさかのぼって1994年7月。MSXユーザーを震撼させる事件が起こりました。『MSX・FAN(当時の徳間書店インターメディア刊行)』誌(以下Mファン)が「一定数の定期購読者が集まらなければ、1年後に休刊する」と宣言したのです。すでにアスキーから刊行されていた我らがMSXマガジンは休刊状態になっており、MファンはMSXユーザーにとって最後の心の拠り所なのでした。そんなMファンが休刊を予告したのです。多くの読者がいわゆる「買い支え」を試みました。しかし当時のMファンの購読者層はまだまだ若い層が多く、1年分の購読料(1万2000円)をまとめて支払える読者は限られていました。かくして読者の懸命の支援むなしく、1年後の1995年7月に予告通りMファンは休刊となってしまいました。

MSX30周年記念_第13回
↑Mファン最終号の表紙。「笑顔の女の子のイラストなんて載せる気にならなかった」と北根編集長が怒っていたのが印象に残っています。本当は続けたかったんだろうなぁ。読者側も「これからは自分たちの力でMSXを続けるんだ!」と誰もが心にアツい思いを秘めていたような気もしないでもない、若き青春の日々(美化200%増)

 この1年という猶予期間中に、MSXユーザーたちは「つながり」を求める行動を起こしたのです。しかもMファンは「自分たちで助け合い生き残る」ように呼びかけました。メーカーがMSXを続けなくても、出版社がMSX情報を提供しなくなっても「自分たちで勝手気ままにやればいいんだ」と。そしてある者は同人サークルを立ち上げ、またある者はパソコン通信(まだインターネットじゃないぞ)を利用して仲間とつながりました。やがて、彼らは全国の各地でMSXユーザーが集まるイベントを開催するようになりました。
 東北地方でのMSXユーザーイベントは、1995年7月に開かれた「MSXキャラバン」(※)にさかのぼります(あくまでもMSXアソシエーションが得ている情報の範囲でです。もっと前からいろいろやってた可能性もあります)。その後、仙台や山形で定期的にイベントが開催されるようになり、そこで交流を深めたMSXユーザーたちが芋煮会を開くことを発案したようです。第1回の開催は1997年10月、広瀬川の仙台市内の河川敷で行なわれたという記録が残っています。

※MSXキャラバンとは、95年に3週間にわたって全国8ヵ所で開かれたMSXユーザーによるイベントの総称。個々のイベントはそれぞれ地元のユーザーによって主催されました。NEC、富士通、シャープの御三家パソコン同様にMSXも黄金期には参入各社合同で全国キャラバン的な販促イベントが行なわれていました。イベント名はこれをユーザーの力だけで実現しようという意気込みの表われだったのかもしれません。

 その後、1年飛ばして1999年と2000年に同じく広瀬川にて開催。2001年からは場所を蔵王の山荘に移して毎年開催するようになり、今年(2013年)でなんと第16回となったとのこと。年に一度ではありますが、こうやって昔からのつながりを再確認する場としてMSX芋煮会は機能しているのですね。

■台風に負けず、今年も無事に開催!

 今年のMSX芋煮会は、去る10/26(土)~27(日)にかけて行なわれました。直前に日本に接近した台風27号の影響が心配されましたが、土曜の昼過ぎには雨もやみ、とくに支障はありませんでした。
 土曜朝10時に東北新幹線・白石蔵王駅に集合。筆者はクルマで移動したので、新幹線でやってくる遠方からの参加者を待ちます。今回の参加者は15名。なんと、親子での参戦が2組ありました。当時のMSXユーザーたちの多くがすでに親になっているんですよね……時の流れを感じます。「子供が小さすぎると連れていけないし、大きくなれば今度は親など見向きもしないし、親子連れでこうしたイベントに参加できる時期ってそんなに長くないんですよ」、なるほど。
 新幹線が到着し、クルマ組とあわせて全員が揃ったところで、さあ蔵王の山麓に向かって出発。途中、芋煮の材料やお酒などを購入し、地元農園などでとれた新鮮な食材で作られるレストランで昼食をとり、蔵王山麓にある山荘「もみの木」に到着しました。

MSX30周年記念_第13回
↑もみの木山荘の外観。冬はスキー客で賑わうらしい。なのであえてお客の少ない時期に貸切でMSXOFFを思いっきり楽しむのだそうだ。ちなみにお風呂には温泉がひかれていました。

 山荘は素泊まりで、食事はすべて利用者が自分で料理します。今年の献立は手作りピザともちろん芋煮。その芋煮の味つけは地域によって違うのだそうで、宮城では豚汁風(豚肉&味噌)とのこと。男の手料理ということで少々おおざっぱなところもありましたが、いずれも大変美味でしたよ!そして子供たちによるデザート屋さん。綿アメとチョコレートフォンデュ屋さんでした。
 しかし親たちは食事中もノンストップMSX談義です。早くもフルスロットルです。まぁ人は年を取ってくるとどうしても懐かし話に傾いてしまいがちですが、それでも海外のMSXユーザーが開発した新しい機能拡張カートリッジを持ってくる人がいたり、MSXのソフト開発のノウハウ話が盛り上がったり、MSXハードの開発史について激論を戦わせたり、これからの40周年・50周年を見据えて、これまでに発表されたゲームや雑誌・書籍などの資料をどのように保存していくかといった、ありとあらゆる方面のまじめな話から笑い話、どうやって知ったのか企業秘密に至るまで、深夜までそれこそ休む間もなく議論が行なわれました。ただ単に、昔の友達が集まって同窓会のごとくわいわいやる……というのだけではなく、彼らにとってはあくまでも今のMSXを語るイベントなのですよ。おそらく(弱気)。

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↑海外のカートリッジ。microSDが2枚挿せる。他にも何か拡張機能を持っているようですが……、おや? 誰か来たようだ。

 そして、山荘にあるテレビにMSX本体を接続してゲーム大会に突入。しかし、『パロディウス』はともかく、Mファンの投稿ゲームである『マスク狂時代バトル』(※)で延々と大盛りあがりし続ける辺りがホントにマニアック。さらに取りいだしたるは、アスキーの光線銃!!『Plus-X TERMINATOR LASER』と『AIR HOCKEY』などのゲーム2本。これは中東のMSX市場でヒットしたゲームで日本では少ししか出回らなかった貴重品ですぞ!

※『MSX・FAN』1994年10月号に掲載された投稿作品。マスクをかぶった4人の男が世界征服をめざして戦う。コマンド選択制でアクション要素はない。
参考: MSXパソコン“マスク狂時代”(関連サイト)

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↑光線銃。ジョイスティック端子に接続する入力機器です。

 しかし光線銃をいくら撃っても画面がピカピカするだけで反応しない。山荘のテレビがバージョンアップして液晶テレビになってしまった(※)のがその原因とのこと。そしてブラウン管テレビ(小中学生の諸君、お爺ちゃんおばあちゃん家にはまだあるだろう?)を持ってくるのを忘れたとのこと。ぬお~! 残念。動いているところをぜひ見たかった。

※光線銃はブラウン管の走査線を利用して撃った位置を測定するため、液晶テレビでは使うことができない。ちなみにWiiのリモコンなどは加速度センサーという部品を使っているのでどんなテレビでも大丈夫。

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↑光線銃を持って遊ぼうとする子供たち。彼女たちこそがMSXのニューエイジなのか?

 そんなこんな深夜というか早朝まで盛り上がった後にようやく力尽きて就寝。朝はご飯を炊いて、昨晩余った豚汁とともにいただきました(そこでも朝からMSX談義!)。山荘をチェックアウトした後は、チーズ工場などを見学して各自おみやげ購入。その後蔵王開拓温泉に入り、またも改めて延々とMSX談義をしたあと、クルマ組と新幹線組に分かれて解散と相成りました。

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↑蔵王開拓温泉。もう、開拓やめちゃったというか、この辺であきらめちゃった風な荒野にポツンと建っている、ひなびた良い風情の温泉でした。しかし、本棚には80年代のパソコンソフト開発資料がいくつもあった。いったいなぜ!!


■30周年のいまだからこそ、MSXで友達をつくろう!

 インターネットで簡単に連絡を取り合えるようになった現在でも、やはり「直接会う」ことで生まれるコミュニケーションは大事です。たとえ年一回でも、このようにしてMSX仲間が集まるというのはとても楽しいことであり、貴重な機会と言えるのではないでしょうか。そうです、MSXを使っていると友達ができるのです! 今からでも遅くありません。アナタも周りの人々にMSXユーザーであることをカミングアウト(^^;)してみてはどうでしょう? もしかしたら友達が増えるかもしれませんよ(保証なし)。前回の宮内先生のインタビューのように渇望していたMSX友達からあやしいお誘いメールが来るかもしれませんよ?
 こうした絆を大切にするイベントが全国で(全世界で?)続いているからこそ、MSXは30周年を迎えた今でも多くの人に愛され続けているのかもしれません。
 そんなほっこりした気持ちにさせていただき、MSX芋煮会のみなさんどうもありがとうございました。そして取材協力感謝です。

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おたよりコーナー

けものびと @jyu_jin さん
SF作家さんのMSX時代話。米国でのMSX使用もだけど紙コン時代が凄い。実機無しで紙上プラグラミング正に神(紙)!

――神だけに……。ああ! 物を投げないで!! ごめんなさい、ごめんなさい。

SASANO Takayoshi @uaa さん
この記事を読むaudienceはディープすぎてカットした箇所を一番見たいんじゃないのかな

――いやあ、ココは週アスですので少しは自制しました。おほほほ。……MSXばっかりの本、出せないかなぁ。

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