こんばんは、MacPeopleの吉田でございます。1984年1月24日に初代Macintoshが誕生して2014年で30周年。MacPeople編集部では短期集中連載として、初代Macから最新のMac Proまでに盛り込まれたテクノロジーについてひも解いていきます。今回からはこれまで取り上げてこなかったノート型マシンを紹介します。
ノート型マシンとして12回目に紹介するのは、クラムシェル型のiBookです。このマシンは、今見てもその独自のフォルムに惚れ惚れしますよね。とにかくパソコンっぽくない。私は2世代目のキーライムのiBook SEを使ってましたが、中身は高性能なのに外観はおもちゃっぽいという落差がすごいマシンでした。
現在、街中のカフェでMacBook Airを開いてドヤ側でSNSを楽しんでいる人は多いですが、このキーライムを開けばさらにその上を行けそうな注目度でしょう。特に第2世代はFireWireポートが備わっていたので、拡張性の面でもPowerBook G3シリーズに引けをとりませんでした。
ポリカーボネートボディーなので強度も十分で、カバンの中に裸のまま入れて持ち運ぶといったラフな使い方ができたマシンでした。残念ながらこのデザインは、2世代を終わりになりましたが、インテルCPUを搭載した復刻版を出しても売れるんじゃないかと思いますね。
iBook G3(クラムシェル)シリーズ
(Original/SE/FireWire)
初代のiBookは、Macという大きなシリーズの中の位置づけとしても、またそのデザインコンセプトを見ても、まぎれもないiMacのポータブル版として登場した。iMacで提示したコンセプトが、より明確に製品に表れている。
2枚貝のようなデザインから、後期のホワイトのiBookと区別するためクラムシェル型と呼ばれる初代iBook |
2枚貝を模した印象的なデザイン
初代のiBookが登場した際のキャッチフレーズは「iMac to go」だった。まさに「持ち運ぶiMac」ということだ。デザインコンセプトも、iMacから継承している部分が多い。まず何よりも、白と鮮やかな色を組み合わせた半透明の素材で包まれたボディーはiMacのイメージを連想させる。それでいて、ポータブル型ならではの特徴を生かしたデザインを実現している。本体部分と液晶モニター部分を開いたところが、ちょうど2枚貝が口を開いたように見える、いわゆるクラムシェルスタイルを採用したのだ。
iBookは最初から2種類のカラーリングが用意されていた。オレンジ色の「タンジェリン」と、青色の「ブルーベリー」を、それぞれ白と組み合わせたものだ。また、2000年2月にはiBook SE(Special Edition)として「グラファイト」という別のカラーリングが登場し、バリエーションは3種類になった。2000年9月には、すべてのモデルが第2世代に入れ替わったが、その際には「グラファイト」「インディゴ」「キーライム」というカラーリングに置き換えられた。バリエーションの数は3のままだった。
iBookのデザイン的な特徴で最もユニークだったのは、安心して本体をぶら下げられる取っ手を備えていたことだ。本体背面のヒンジの部分に仕込まれていて、持ち運ぶときだけ起こして手で握ることができる。通常はスプリングの力で本体に密着し、知らなければその存在に気づかないほどだ。このリング状の取っ手の周囲は白く、取っ手にはタンジェリンやブルーベリーなどの鮮やかなカラーリングが施されているため、デザイン上のアクセントとしても印象的だった。
また、それまでのPowerBookには必ずあったポート類を覆うカバーを省いたこともiBookのデザインの大きな特徴のひとつに数えられる。さらに先進的だったのは、本体とモニター部分を閉じた際に、開かないように固定するラッチを省いたことだ。ヒンジ部分のバネの力で閉じるので、開くときに多少強い力を必要とするが、実用上はこれで何の問題もなかった。片側だけを持って振り回しでもしない限り、開いてしまうことはなかったし、通常は閉じた状態でカバンや専用のバッグに入れて持ち運ぶので心配はまったくなかった。
ノートパソコンとして異例の取っ手が備わっていた |
CPU性能を強化したスペシャルエディションを追加
初代iBookの発売から約8カ月が経過した2000年2月には、上位モデルのiBook SEが発売された。既存のモデルの置き換えではなく、それらの現行モデルとして残したまま、ラインアップに追加された。一見すると気まぐれにも思えるようなタイミングでの新モデル追加の背景にあったのは、iBookの人気の高さと新しいOSの登場だったと思われる。
iBook SEは、旧Mac OSの最後のバージョンであるOS 9のの登場を記念して追加されたモデルと考えられる。SEとは「Special Edition」の略で、ボディーはポリカーボネートで、半透明ホワイトとグレー系の「グラファイト」のカラーの組み合わせだった。iBook SEでは、CPUはPowerPC G3のままながら、クロック周波数は約2割向上させた366MHzとなった。
標準搭載メモリーは、初代iBookの32MBから64MBに倍増していた。さらに内蔵ハードディスクの容量も3.2GBから6GBに強化されていた。このように、iBook SEはコンシューマー向けと侮れない性能を得ることになった。
写真は第2世代のiBook(FireWire)のSEモデル。初代はホワイトの部分が半透明だった。SEは、PowerBook G3に引けをとらない性能を備えたエントリーマシンとして人気だった |
「iMac to go」から「Movies to go」へ
当時のUSBはバージョンが1.1で理論データ転送速度は最大12Mbpsだったのに対して、FireWireは最大400Mbpsと、単純計算で約33倍の速度でデータのやり取りが可能となった。これにより、外付けのハードディスクを利用する場合にも、以前のSCSI接続のハードディスクと同様に、ストレスのないアクセス速度が得られるようになった。
ただしiBookにFireWireを搭載した狙いはそこにあったのではない。それは当時普及が始まった家庭用のデジタルビデオカメラで撮影した映像を取り込むために用意されたのだ。当時のデジタルビデオカムは、miniDVテープにデジタル映像を記録し、デジタル映像出力用にFireWireポートを装備するものが多かった。FireWireポートを備えたiBookは、新たなパソコンの用途として注目されていたデジタルビデオの編集を、コンシューマー向けのポータブルパソコンでも可能にするという大きな変化をもたらした。そのために、デジタルビデオ編集アプリ「iMovie」も標準装備していた。さらに編集したビデオを家庭用のテレビで視聴できるように、専用のAVケーブルを介することでS-Videoとステレオ音声の出力まで可能だった。
アップルは、初代iBookのキャチフレーズである「iMac to go」に対して、FireWireポートを搭載した第2世代モデルには「Movies to go」、つまり「持ち運ぶ映画」という新たなフレーズが与えられていた。
第2世代のiBookは、キーライム、ブルベリー、グラファイトの3色のラインアップだった |
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さて、好評発売中のMacPeople 4月号では、Macintosh30周年特集第2弾として、Macintosh PortableやPowerBookなど歴代ノート型Macをたっぷり紹介しています。そのほか、2014年知っておきたい最新テクノロジー解説、Googleサービス使いこなし術、MacやiPhone/iOSのトラブル解決技など、じっくり楽しんでいただけること間違いなしです。
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また、MacPeople 3月号では、Macintosh 30周年を記念した特集記事を組んでいます。初代Macintoshのさまざな写真はもちろん、SE、SE/30、Color ClassicなどのコンパクトMac、Macintosh IIやIIci、IIsi、IIfx、LC475などのセパレート型Macの驚愕のテクノロジーをひも解いていきます。もちろん、68K MacだけでなくPowerPC搭載のiMacやPower Mac、インテルCPU搭載マシンを含む一体型、デスクトップ型すべてです。そして第2特集では、最新のMac Proを詳しく紹介。この2つの特集記事だけで80ページ以上ありますよ!
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