格闘ゲーム全盛当時のゲーセンで、小学生にコテンパンに負け、「イー・アル・カンフーなら絶対に負けない!」と心の中で叫ぶ大人げない記憶が蘇ったMSX30周年の今日この頃、皆様いかがお過ごしですか?
『十字キー+ABボタン』以上の複雑な入力は無理ッス。その点コナミのMSXゲームは入力がシンプルなのにおもしろいしスゴイよね。え?「ファンクションキーをいろいろ使ってた」って? あれは、まあオマケ機能みたいなものだし裏技とかだし。ポポロン寝たりするだけでしょう? 違うか。
まあ、とにかく今回もコナミのMSX用ゲーム、4タイトル行ってみよう!
■夢大陸アドベンチャー(1986年)
『けっきょく南極大冒険』から2年、大幅なパワーアップを加えて帰ってきたのが『夢大陸アドベンチャー』だ。
『グラディウス』に続いてメガロムを採用し、ひたすら大雪原だった南極の風景から一転、森、海中、果ては宇宙が舞台という豊富なバリエーションに。また、新たにアイテム類が登場し、前作では単なる得点に過ぎなかった“魚”はアイテム購入に使える通貨となった。
ゲームの目的は“ペン子姫の病を治すために、伝説の夢大陸からゴールデン・アップルを持ち帰る”こと。当時はジャンル分けがいまほど明確でなかったせいか、パッケージには“シューティング+RPGの決定版!”と書かれている。RPGという言葉はいま見ると内容にそぐわない気がしなくもないが、どうやら“大ボリュームの冒険”という意味でつけられたようだ。そう!この夢大陸はとにかく広いのである。
ルートはほぼ一本道なのだが、クリアに要する時間は『グラディウス』などよりかなり長く、冒険の半ばで手に入るゴールデン・アップルすら見ずに終わった人も多いとか。それでも今日なお名作として語り継がれているのは、前作ゆずりのペンギンの可愛らしさやアクションのテンポのよさ、そしてPSGの3音ながら強い印象を与えた音楽の力といえる。当時のMマガ編集部でもSCC音源のような拡張音源が搭載されているのではないかと疑ってカートリッジを開けて確認したほど凄いのだ。全体的に難易度が高いうえに、最後までクリアしてもペン子姫が死んでしまうというバッドエンディング(※1)がある辺りも妙に有名だったりする。
↑『夢大陸アドベンチャー』 相変わらず、絵も動きもかわいいが、クリアした人は少ない、らしい。 |
『メタルギア ソリッド4』においてサニーがPSPで本作を遊んでいたり、また現在アニメが放映中のライトノベル『中二病でも恋がしたい!戀』においても主人公・富樫勇太クンが「未だに一度もゴールデンアップルを持ち帰ったことがない」と語っていたり(※2)するのだが、その前後の描写も含めて大変にMSX濃度が高いので、ぜひチェックしてみることをお勧めする。MSXが出るラノベはすべて良いラノベなのだ(MSXA基準)。
※1:ペン子姫の生死を決めるのは、なんとゲーム中にポーズをかけた回数! なんともイジワルな設定。
※2:1巻180ページに登場。残念ながらアニメ版には出てこない。良くないアニメ化の例と言える(MSXA基準)。
■イー・アル・カンフー(1985年)
一度聴いたら“絶対に忘れられない音楽”それがこのゲームのBGMであることを読者のみなさんにまずは申し上げたい。このゲームをやったことのある人なら全員同意するでしょ??
中国語で1がイー、2がアル、3と4がサン、スーというところから持ってきたタイトル『イー・アル・カンフー』はMSX初期を代表するヒット作だ。
『けっきょく南極大冒険』と並んでそのゴロの良さから多くの人に愛された名タイトルである。“けっきょく”はMSXオリジナルであったが、こちらの元祖はアーケード版となる。ただアーケード版は背景が細かく描き込まれていたり、敵の数が多かったりと、MSX版やファミコン版とはかなり異なっている。MSXとファミコンでは背景が黒となり、敵の数が5人に減らされているのが大きな違いである。だがそれによって敵の個性やビジュアル面での印象が引き締まり、結果として多くの人はイー・アル・カンフーと言えばMSXかファミコンか、という形で記憶に残ることになった……といったら大げさだろうか。
発売された1985年はまだゲームの黎明期であり、人体の表現はまだまだ難しかった頃である。そんな時期に(割と)大きいキャラクターがダイナミックに動いていた本作はかなり強いインパクトがあり、雑誌のランキングでも長期に渡り上位に位置し続けた。
↑『イー・アル・カンフー』 「痛てっ!」って思わず本当に口に出して言ってしまう、謎のリアリティ。「そうそう」ってうなずいた人は賛同のコメントよろしく。 |
さてゲームを始めてみると、今日の感覚では全く敵に攻撃が当たらないことに面食らう。遠いと当たらないのはもちろんなのだが、近すぎても当たらない。“間合い”が正しくないと敵に当たらず、空振りしてしまうのだ。そして敵はその空振りをかなり的確に突いて反撃してくる。なので当初の取っつきは悪いのだが、慣れてくるに従いビシッ、ビシッと当たるようになる。この吸い込まれるように当たる感覚は、やってみないと分からない快感である。そしていつのまにか何周もできるほど上達している。
“最初は難しく思えるのに、うまくなるとずっと続けられる”というのはコナミのMSX作品全体に通じるバランス感覚であり、コナミのMSXゲームの何が、どこが凄いのかを具体的に表わす一例である。難易度設定がなくても人を虜にしてしまえるおもしろさをぜひ体験して欲しい。その頃には「パポォ」と聞こえていた主人公のかけ声も、カッコ良く思えるようになる……かも、しれない。
■クォース(1990年)
元はアーケードのシューティングパズルゲームで、MSX2にはいち早く家庭用として移植された。MSXに続いてファミコン、ゲームボーイ、PC-9801、X68000など幅広く移植されているので、ご記憶の方も多いだろう。
当時流行していたいわゆる“落ち物パズル”の流れの中で発売された作品ではあるが、いわゆる“落ち物”が手駒が“降って”くるのに対して、本作は迫りくる“いびつな形のブロック群”に弾を撃ち込み、“四角くする”と消える……という珍しいアイデアを採用している。ある雑誌ではプログラムの題材として判定方法が紹介されたこともある。極めてユニークなパズル系作品と言えよう。
基本的にブロックは四発打ち込むと一つ消すことができるのだが、打ち込む順番をコントロールすることで複数のブロックをまとめて、より少ない手数で消すことができるようになる。考えるのが面倒なら正確な連射を続けることでもクリア可能でもあった。ただし無駄に打ち込むと変な出っ張りを作ってしまい、ちゃんと四角く整えてクリアするにはより多くのブロックを打ち込まねばならなくなるリスクも負うこととなる。
↑『クォース』 隙間に小さなブロックを打ち込んで四角形を作ればOKなのだが、いっぺんに消そうとして欲張ると、思わぬ罠で四角形が出来なかったり、あせって余計なところに打ち込んでしまったり。 |
MSX2版はスタンダードな1人用“1P MODE”はもちろんのこと、2人協力“2P MODE1”、2人対戦の“2P MODE2”も備えた充実の移植ぶりを見せてくれた。“2P MODE2”ではさりげなく画面モードを他のモードと変えているなど、確かな技術力も光る作品である。BGMもアーケード版にはないオリジナル曲が追加され、円熟期に達したSCCサウンドを存分に聞かせてくれる。個人的にはBGM2がお気に入りだ。しかしコナミMSX最末期の作品としてパズルはやや地味だったのか、あまり目立つ存在ではないのが惜しまれる。この後に『SDスナッチャー』、『メタルギア2ソリッドスネーク』というまさに“MSXを代表する”タイトルが出たことで印象が薄れてしまったのかもしれない。
レトロSF『月世界旅行』をどことなく彷彿とさせるグラフィックもまた大変に味わい深く、最後に用意されたエンディングはぜひとも見て頂きたい。頑張れば誰でも見れる、と言いたいところだが寄る年波にはゲフンゲフン。
■コナミ・ハイパーラリー(1985年)
MSXで初めて本格的な3D視点のレースゲームを実現した作品がこの『コナミ・ハイパーラリー』である。なかなかにヒットした作品らしく、今日でもオークションや中古ゲーム店等で比較的入手しやすい部類に入る。
“ハイパー”とあるものの、『ハイパースポーツ』的な連射要素はない。また“ラリー”とあっても特にコースごとの時間指定などはなく、全13ステージそれぞれにおいて燃料切れや時間超過を起こさず、“規定通過順位”を上回ってゴールさえすれば失格になることもない、いたってシンプルなルールだ。草原、トンネル、雪原、稲妻のサバンナ……など、当時主流であった他のカーレースとしての作品とは一線を画しており、様々な風景の変化をつけて“ラリー”らしさを盛り込んだ意欲的な作品であった。
さて当時ファミコンは標準で2ボタンのコントローラーであったが、MSXは規格上1ボタンのコントローラーも認められていた。そのためか、ボタンはアクセルとギアチェンジを兼ねている。Lギアのまま加速し、ある程度速度が乗ったところで一度アクセルを離してまたすぐに押すと、Hギアになるという独特の操作が必要であった。だがしかしこの感覚がむしろクセになるのだ。
↑『コナミ・ハイパーラリー』 MSX最初の疑似3Dレースゲームにして、最高のゲームだという声も。このシーンなど、改めて見ると赤と白の点々があるだけ。でも遊んでいる時にはぜんぜんショボイとか思わなかった。本当に凄いセンスだ。 |
ゲームは同時期のコナミ作品としては割合シビアで、全13ステージながらも規定通過順位はステージ3あたりから早くも厳しくなってくる。さらにステージ3は雪原で、グリップが弱くなり、かなり滑る初心者殺しの面として思い出す方も多いだろう。表現力が乏しいといわれがちなMSX1で多彩な風景と、それに結びついたゲームらしさを盛り込んであり、ビジュアル面では申し分ない。残念なのはBGMがないため、ちょっと寂しくもある。それがまたラリーらしさを醸し出している……というのは、いささか誉めすぎだろうか。
(C)Konami Digital Entertainment
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さて、2月6日に掲載した記事『偉大なる、伝説のコナミのMSXゲーム伝説!(第1回)』へのツイッターでの反応から。
TECHNOuchi 25thAnniv @Hi_TECH_SOULさん
僕の業界での出発点。コナミPC開発チームで沢山のことを学んだ。あの時代に御一緒させていただいた皆様には感謝しても感謝しきれないくらいに。
――こ、これは、数々のゲームミュージを手がけられてこられた竹ノ内裕治さん! そうか、始まりはコナミのMSX用ゲームでしたか。また、MSXが偉大な人物を生んでしまったか(←違う)。
大槻真嗣 @s_ohtsukiさん
『わんぱくアスレチック』って1983年発売だったっけか…?スクショでは84年になってるけど
――確かに画面には1984ってありますね。ここはコナミさんのチェックを受けていて、その指示を優先しています。
コナミのゲーム関連の記事は毎月2本程度を目標に掲載の予定です。ツイッターにて、#msx30th のハッシュタグをつけて、紹介してほしいゲームやみなさんの思い出などもぜひ教えてください。ここで、ご紹介させていただくことがあるかも。
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