その日は突然やってきた。2014年2月6日……。
ソニー、JIPへのVAIO含むPC事業売却を公表、2014年3月末までに締結(関連記事)
──PCを事業譲渡し、モバイル領域はスマートフォン・タブレットに集中。テレビは高付加価値戦略を加速するとともに、より効率的で迅速な事業体制へ。
そうか本当だったか……。直前にPC事業でレノボと提携するという噂や、日本産業パートナーズとの新会社設立を検討しているといった情報が流れていたが、公式な発表があるまで、どこか楽観視している自分がいた。ソニーのなかで“VAIO”のウェイトが大きいものと信じて疑わなかったからだ。
何かつながりが残されているのでは? と、諦め悪く記事や公式リリースを読み進めるも、書かれていたのは「ソニーでは、PC製品の企画、設計、開発を終了し、製造、販売についても各国で発売する2014年春モデルを最後として事業を収束する予定です。」ズバリ公言されているのを見て言葉を失った。理由は経営判断によるもの、と。
筆者はXperiaも(国内モデルはもちろん、海外モデルまで)買いまくってるほどソニーが基本的に大好きだが、VAIOはVAIO。Androidの“Xperia”、Windowsの“VAIO”どちらも欠かせないと思っている。スマートフォンやタブレットが存在しないころ、今から17年も前になるけれど、心を奪われたのはWindowsを搭載したVAIOだっただけに、衝撃はデカイ。
騒いでいるのは、自分のようないわゆるソニークラスタ(ソニー好き)と称される、パソコンといえばVAIOだけを好んで使ってきた人間だけで、それ以外からすれば、たんに話題性の高い経済ニュースにすぎないかもしれない。一部のジャーナリストの方々が分析するように、今回のPC事業部切り離しは悲観的にとらえることではなく、将来的に新会社から今以上のVAIOが現われる可能性もあるだろうし、そう信じたい。とにかく、なるようにしかならない──そうわかっていても、じっとしていられないほど愛着のあるソニーのVAIOについて、ソニークラスタの奥のほうにハマっているひとりの戯言と自覚しつつ、今回の出来事に対する想いを書かせていただいた。
新モデルの発表が楽しみで仕方なかった
VAIOがこの世に登場してから今まで、その時々で浮き沈みはあったにしろ、当時の開発者の熱い想いをワクワクしながら聞いたり、本体のほんの一部しか写ってないようなティザーに心踊らせたり、発表されるであろうタイミングを見計らって何度もページをリロードしたり、Sony Styleのオリジナルモデルを手にしたいがためにトイレに行くのも我慢してパソコン前で心臓をバクバクさせたり、手元に届いて開けた瞬間、手にした瞬間に込み上げてくる所有欲に満たされたり、うれしくて用事もないのに、わざわざ手に持って歩いてみたり──そうした気持ちを持ち続けさせてくれたのは、自分にとってはアップルや他社の製品ではなく、ずっとソニーのVAIOだった。
初めてWindowsを搭載したVAIOは、1997年7月に発売されたデスクトップ型『PCV-T700MR』だ。
PCV-T700MR
当時の価格で50万円近くしたけれど、PCといえばビジネス用途が主流だったころに、あえてテレビチューナーを内蔵したり、MPEG1エンコーダー内蔵するというAVメーカーとしてのテイストを加え、かつグレーとバイオレットのクールなデザインに、ガッツリと心をつかまれたのが最初の出会い。
その後継機でサイズが小さくなった『PCV-S620TV』は、MPEG2ハードウェアエンコーダーを内臓、テレビを見ながらスキップ再生ができたり、テレビをタイマー録画できたりと、ソニーならではの独自路線まっしくらなデスクトップだった。
PCV-S620TV
この辺りから「ビデオカメラの編集をするならVAIO」というのが浸透していったように思う。たった数分の動画をつくるために夜通しエンコードするのが当たり前の時代だったが、完成時の喜びは大きかった。
この2台のデスクトップVAIOは個性的なデザインが気に入っていて、発売から10年以上経ったころ「その外観だけでも生き長らえさせたい」と思い、中身をマザーボードごと取り替えてつい最近まで使っていた。
VAIO type R master
セパレートタイプのデスクトップVAIOとしては最後の筺体となった『VAIO type R master』。BTXマザーボードは変更が厳しいので、これはそのまま、SSD RAID化したり、制限のあるボディーのなかでグラフィックボードや電源を模索したりしつつ、今は出てないソニー製ディスプレー 24インチ×2台を並べ、現役で活躍してくれている(本稿もこの環境で書いている)。
VAIO typeRmasterの電源ユニットを、余力のある静音タイプに交換する。
デスクトップPCの利点(楽しみ)は買ったあとのカスタマイズ(メモリーやHDDの増設、グラフィックボードやCPU換装)にあるが、それを自作用の使い勝手のいいPCケースではなく、あえてVAIOでやる工夫が楽しくて、ギーク魂をくすぐったものだ。
<さらに熱いノートPC編へ続く>
●関連サイト
ソニーが基本的に好き
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