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VAIOの技術は残る ソニーモバイルからWindows端末発売の可能性も by 石野純也

2014年02月07日 07時00分更新

 既報のとおり(関連記事)、ソニーはVAIOブランドを展開してきたPC事業を、日本産業パートナーズに譲渡すると発表した。合わせて、BRAVIAを開発するテレビ事業も完全子会社し、スピーディーな意思決定を進めていく。VAIO事業は、今後、日本産業パートナーズが設立した新会社に移管され、新会社が継続する。ソニーとしては、PC事業から完全に撤退したことになる。

 PC事業やソニー本体の今後についての考察は専門ではないため別の記事に譲りつつ、ここではスマートフォンやタブレットを中心としたモバイル事業に、今回のPC事業売却がどのような影響を与えるかを見ていきたい。

 まず、PC事業に従事していた人員は、一部が新会社に移籍する。ソニーの平井一夫社長によると、「販売などを除くと、日本のVAIOビジネスに携わっていたのが1100人ぐらい。日本産業パートナーズと議論して最終的な人数は決めるが、250名から300名ぐらいが新会社に移る。残りの社員を、ソニーモバイルも含めてソニーのさまざまな事業本部に配置転換していく。(どの程度の割振りにするかの)規模感はまだないが、ソニーモバイルに限ったわけではなく、ほかの事業部門、事業会社にピットがあれば移っていただく」という。一部はリストラもあるが、800名前後の人員がソニーに残るのだ。

ソニー決算発表

↑決算説明会でPCやテレビ事業の構造改革を語る平井氏。

 ソニーはPC事業に売却にあたり、スマートフォンやタブレットにシフトする市場環境の変化を理由に挙げていた。実際、Xperiaブランドの商品を展開するモバイル事業は、比較的好調だ。グローバルで年間4000万台の出荷が見込めるうえに、ややスローダウンしたと言われるがそれでも全体の市場規模は拡大している。

ソニー決算発表

↑セグメント別に見ると、スマートフォンやPCを含む『MP&C』の営業利益は伸びている。PCが赤字と言われるなか、この業績をけん引したのがXperiaだ。

 ソニーは平井氏が社長に就任して以降、モバイル、ゲーム、イメージングを3つの“コア事業”として、経営資源を集中させている。記者会見では平井氏も「モバイル領域ではスマートフォン、タブレットに集中すべきと判断した」と語っていたが、ここに人材を手厚く配置する可能性は高い。PCとスマートフォン、タブレットの技術的な親和性を考えても、それは効率がいい。


 結果、スマートフォンやタブレットの事業は、VAIOで培ったPCのノウハウを取り入れることができる。平井氏は「まずPCビジネスが新会社で立ち上がり、その時点ではWindowsの商品は新会社に行く。マイクロソフトさんのOSは、モバイルも含めていろいろある。そこでどういう商品展開をするのかは、ソニーとして考えていく」と述べている。つまり、ソニーモバイルで、Windowsを搭載した小型のタブレットや、Windows Phoneを展開する可能性は残されているというわけだ。その際に、VAIOの資産がソニーモバイルで活かせる。

ソニー決算発表

↑『VAIO Tap 11』を見ればわかるように、PCとタブレットの境界線はあいまいになりつつある。

 実はVAIOとスマートフォン、2つの知見や技術を掛け合わせた製品は、すでに登場している。それが、『Xperia Tablet Z』だ。同モデルの開発にあたっては、VAIOのノウハウが注ぎこまれており、一部の人員はソニーモバイルに移っている。薄型化を実現した実装技術などでPCを開発してきた強みが発揮されており、VAIOを開発してきたソニーだからこそできたAndroidタブレットに仕上がっている。このように、VAIOの技術を生かし、ソニーモバイルが製品ラインアップをさらに広げる可能性はある。単純にリソースが増えた以上の効果は出るだろう。

ソニー決算発表

↑Xperia Tablet Zは、VAIOとXperiaの掛け算で生まれたタブレット。2つの事業のノウハウがなければ開発はできなかった。

 一方で、スマートフォンビジネスが順風満帆かと言うと、必ずしもそうではない。足元の状況を見ると、Xperiaは順調に販売台数を伸ばしており、ソニーのモバイル・プロダクツ&コミュニケーション部門をけん引している。ただ、現時点でも特にハイエンド端末の市場は、全体的に成長が鈍化しつつあるという見方が一般的だ。実際、ソニーモバイルは同日発表した決算で、スマートフォンの年間販売目標を200万台下方修正し、4000万台とした。販売数は昨年度より大きく伸びているが、やや見込みより成長が鈍かったというわけだ。CFOの加藤優氏によると、「中国を含めたアジアや、欧州の一部で想定を少し下回った」というのがその理由となる。

 経済不況が続く欧州市場では、高級路線のXperiaが今後も順調に伸びるのかは未知数だ。また、中国ではソニーモバイルのシェアはまだ低く、振興の中国企業が台頭しているためアジア全体がメーカーのひしめき合う激戦区になりつつある。ここでどこまで戦っていけるかは今後のXperia次第だが、決して楽観視はできない。

 また、ソニーモバイルは、最大のモバイル市場の1つである北米にも弱い。昨年からT-Mobileと協力して、少しずつ知名度を上げているところだが、Verizon、AT&T、Sprintの大手3キャリアとは十分な関係が構築できていない。逆に言えば、伸びしろもここにある。今回の構造改革を受け、VAIOのノウハウやリソースを活かし、未開拓の市場にどこまで進出できるのかが、今後の行方を左右しそうだ。

ソニー決算発表

↑Xperia Z1Sは米T-Mobileの独占商品。米国でのシェア拡大の足掛かりになるか、注目したい。

●関連サイト
ソニー投資家向け情報 2013年度 第3四半期 業績説明会

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