ドコモは1月31日、2013年度第3四半期の決算を発表した。営業収益は3兆3636億円、営業利益は6887億円で減収減益。携帯電話の通信料収入は増加したものの、月々サポートによる減収が大きく、収益を圧迫した。ただ、iPhoneの導入によって純増数やMNPは改善しており、ARPU(ユーザーひとり当たりの平均収入)も上昇基調にあるとしており、加藤薫社長は、「主要な指標が確実に改善した。力強く中長期的な取り組みを進めていきたい」と強調している。
↑ドコモの加藤薫社長。
減収とはいえ、営業収益の3兆3636億円は前年同期比0.2%減で「ほぼ横ばい」(加藤社長)。営業利益は6887億円は同1.9%減だが、純利益は同3.3%増の4302億円となり、最終増益となった。売上では、パケット収入が同0.1%増の1兆4196億円で横ばいだったが、端末販売数は同8.6%減の1607万台と減少。ただし、スマートフォン販売数は同1.8%増の987万台で、累計のスマートフォン利用数は同37.1%増の2278万台、そのうちのLTE契約数は同119.2%増の1902万台と増加しており、「着実にユーザー基盤が拡大している」(同)状況。
↑第3四半期の決算。ネットワークの増強は図りつつ、全体では効率化による削減を達成。それに伴い、フリー・キャッシュフローが大幅に増加した。
月々サポートの影響を除いたARPUは5230円で同50円増。音声ARPUが180円減となったが、パケットARPUが140円増、コンテンツなど新領域分野のスマートARPUが90円増で、音声の減少を補った。全体で音声収入は766億円の減少で、パケット収入は939億円の増加となったものの、月々サポートを積極的に展開した結果、1962億円の収入減に繋がった。新領域分野や端末販売の収入も拡大し、コスト削減による販売費用の低減も達成したが、償却費・除却費の増加も影響し、最終的に営業利益は135億円の減少となった。
↑収入は伸びているもののマイナス要因が大きく影響し、収益を圧迫した。
しかし、前年比で半分以下の純増数だった前期に比べ、第3四半期では41万の純増数を獲得。前年同期の20万から倍増となった。個別では、9月が6.7万の純減だったが、10月以降は純増に転じ、12月には純増シェア1位となる27万9000を獲得。9月20日のiPhone 5s、5cの発売以来「上昇トレンド」(同)となったほか、12月には冬春モデルが出そろったことも功を奏したという。
↑純増数は拡大。とくに10月以降に伸びた。
MNPでは、9月は前年同期よりも高い転出数だったが、10月以降は「毎月3割の改善」(同)で減少幅が小さくなり、12月は転出数5.1万に抑えた。加藤社長は、「競争力が回復している手応えを感じている」と強調。今後、さらに事業の改善を進め、「転出超過の解消」を目指していく。MNPの改善に従って解約率についても、9月の0.91%から12月は0.74%まで改善した。
↑MNPもマイナスながら改善している。
端末の総販売数は前年同期比で150万台の減少だが、スマートフォンは20万台近く増え、総販売数に占めるスマートフォンの割合は55%から61%に増加。累計のスマートフォン利用数が2278万台となり、そのうちの73%がLTE対応となった。LTE契約数も1000万以上増加して1902万契約となり、より高機能でパケット通信の多いLTEスマートフォンの増加で「顧客基盤は着実に拡大している」(同)。その結果、パケットARPUも同100円増の2930円で、通期予想の2970円に向けて上昇基調にある。
↑スマートフォンの販売数が伸び、LTE利用者も拡大。
↑LTE契約数の拡大にともない、パケットARPUも上昇。
dマーケットなどのコンテンツサービスをはじめとした新領域分野の収入となるスマートARPUは、同80円増の500円。サービスの拡充に加え、iPhone向けにもサービス展開したことから成長を続けている。
↑スマートARPUも拡大したことで、音声ARPUの減少を補ってARPU全体で上昇傾向にある。
加藤社長は、「iPhoneの発売以降、競争力は着実に改善しており、競争の新たなステージに入った」とアピール。最大の商戦期となる春商戦に向けて、各種施策で「さらに勢いを加速」(同)させていきたい考えだ。
具体的には、新生活をターゲットにした若年層とその家族に向けた学割などの販促施策、“世界最速”をアピールする下り最大150Mbpsの“クアッドバンドLTE”の拡大、サポートの強化などを展開していく。
↑若年層とその家族向け施策。
クアッドバンドLTEでは、“LTE基地局倍増計画”を掲げてエリア拡大を進めてきたが、12月末時点で4万5000局まで数を増やしており、当初3月末での計画だった5万局を上回る、5万2000局を設置していく。4つの周波数帯域を使うクアッドバンドLTEの対応エリアも、たとえば鉄道では大阪環状線の全駅、東京・山手線の25駅で利用可能になるなど拡大させており、「世界最速のLTEを体感していただけるように頑張っていく」(同)。
↑LTE基地局を前倒しで拡大。
↑新幹線駅などでLTEエリアを拡大。
↑都市部で150Mbps対応エリアを拡大している。
↑こうした対策の結果、各調査で効果が現れてきている、という。
今後、「顧客対応力がますます重要になる」(同)という考えから、ドコモショップやコールセンターの対応力をさらに強化。自社調査で満足度が1位になっているとして、今後もこれを継続し、サポートの強化を図る。
サポートサービスでは、Androidスマートフォン向けに提供している“ケータイ補償サービス”をiPhone向けにも拡大。遠隔からスマートフォンの画面を操作してサポートを行なう“スマートフォンあんしん遠隔サポート”が532万契約に達して好調のため、アフターサービスの強化も継続する。
新領域分野では、2015年度で売上1兆円を目標に掲げてサービスを強化しているが、第3四半期には4650億円まで拡大し、同26%増と順調。主要サービスは1993万契約まで拡大しており、“dマーケット”のひとりあたりの利用料も、スマートフォンの拡大にともなって増加している。
第3四半期では、契約数の拡大が鈍化。一時期“dマーケット”は減少もしたほか、iPhoneへの移行の遅れが影響して“dビデオ”も減少していたが、iPhone対応を進めた結果、現在は「復調している」(同)という。“dアニメストア”や“dヒッツ”は継続して伸びており、ほかのサービスも「かつての勢いを取り戻していきたい」(同)としている。
↑契約数の伸びは鈍化しているが、今後さらなる拡大を狙う。
↑目標に対しては順調に拡大しているという。
また、11月末に提供を開始した“dキッズ”は好調で、1ヵ月で2万契約を獲得したほか、契約者の4割がタブレットを同時に購入しており、「タブレット販売にも貢献している」(同)。今後、「魅力的なコンテンツを整備して、新しい顧客の開拓、利用促進を図っていきたい」(同)考えだ。
加藤社長は、iPhoneの導入によって主要な指標が改善はしたものの、「もう少しiPhone効果を早めに出したかった」と述べ、iPhone導入の遅れ、コンテンツサービスの対応の遅れが響いたという認識を示す。
また、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が一段落して伸びが鈍化していることも影響したとしており、春商戦ではこれを拡大していくことを目指す。
割引施策の月々サポートが収益を圧迫していることに対しては、来年度中は継続していく見込みだが、今後削減していく方向で進めていきたい考えだ。
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