MSXゲームといえば『コナミ』ということに異論のある者は少ないだろう。それくらいコナミのMSXゲームは素晴らしかった。しかもハズレがほとんど無いというところも“伝説”というにふさわしいと言えよう。ということで、今回はそんな偉大なコナミのMSXゲームを4本紹介。ぜひ、みなさんのゲームにまつわる思い出もつぶやいて頂ければと思う。
■わんぱくアスレチック(1983年)
記念すべきコナミMSXソフト第一弾。“わんぱく坊や(マニュアルより)”を操作してひたすらアスレチックを右へ右へと進んでいく、アクションゲームである。できることは左右移動とジャンプのみだが、軽快な操作性は現代でも十分に通用するデキ。以後MSXで伝説を作るコナミの実力が感じられる一本。グラフィックも背景の夕焼けをはじめとしていきなり水準以上の完成度で、それまでなんとなくノッペリしていたMSXゲーム界において異彩を放ったと言ってよい。
ゲームの方は個々の障害を避けるのは難しくないが、先に進むにしたがって複合攻撃をかけてくるようになると、難易度が急上昇する。ハチ、ボール、魚、噴水、イガグリなどが坊やを殺しにかかってくる、恐るべき殺人アスレチックである。ちなみに、なぜ坊やがこんな目に遭っているのかの説明が全くないのがいかにも当時らしい。さてゲームは基本的には左から右へと進んでいくのだが、開始直後にいきなり左に進むとそれはそれでゲームが進行してしまう、という不思議要素がある。この時、右から転がってくるボールを避けなくてよくなり、ほんの少しではあるが楽になってしまう。ここにどんな意味があるのかは今もって分からない。
↑『わんぱくアスレチック』 トランポリンや綱渡りなど、タイミングよくボタンを押して進んでいく。 |
初期のコナミMSXソフトは“教育シリーズ”と銘打たれており、取扱説明書に見せかけてゲーム本編にはまるで関係のないウンチク話が満載されている。恐るべきはゲームの説明を全くしておらず、そっちのほうは箱の裏に丸投げしている点であろう。ちなみに“教育シリーズ”は4本発売された後にネタ切れとなったのかなかったことになり、『わんぱくアスレチック』自身も“教育シリーズ”の名を外されたバージョンが存在する。そちらのほうが稀少ではあるが、あえて探すほどのものでもない。教育の価値はさておき、明るく楽しいゲームとしてオススメだ。
■けっきょく南極大冒険(1983年)
記念すべきコナミMSXソフト第一弾。『わんぱくアスレチック』も第一弾なのだが、実は同時に発売されたのでどっちが第一弾かはちょっと微妙なのである。信じがたいことに『けっきょく南極大冒険』も“教育シリーズ”であり、こちらがNo.1、『わんぱくアスレチック』がNo.2となっている。が、製品番号は『わんぱく』がRC700、『けっきょく』がRC701となっていて、どっちが先なのかはよく分からない。こちらはMSXからファミコンへと移植されたこともあって知名度は抜群に高い。“けっきょく・なんきょく”というゴロの良さも愛すべき名タイトルと言えよう。
しかし相変わらず“教育シリーズ”としては意味不明で、“I Love 地理”なのだ。先程の『わんぱく』が“I Love 体育”なのは強引ながらも理解できなくはないが、こちらの地理は南極大陸限定の地理なのだ。いったい誰が昭和基地の位置を覚える必要があるのか。あるとしても、都道府県とかもっと先に覚えるべきものがあるのではなかろうか。とはいえ「勉強に役立つんだよ!」と強引に親を説得したという話をチラホラ耳にするあたり、コナミの狙いは当たっていたと言えなくもないのかもしれない。
↑『けっきょく南極大冒険』 つまずいたときに「おっとっと…」と聞こえる効果音もおもしろかった。 |
さてゲームはペンギンを左右に動かすこと、ボタンでジャンプすることの2つ。アザラシにぶつかったりクレバスにハマったりするとタイムロスとなり、時間内にチェックポイントにたどりつけないとゲームオーバーとなる、ごくごくシンプルなもの。ちなみに旗と魚はただの得点である。ファミコンでは“ペギコプター”なるヘンなアイテムが追加されたが、MSX版には存在しない。そのこともありゲームとしては単調だが、スケーターズワルツの軽快な曲に乗せてひたすら滑り続けているとなんとなく癒されてしまい、ついつい遊び続けてしまうタイプの魔性のゲームであった。この作品でペンギンはコナミの象徴となり、以後長らくキャラクターとしてあちこちに出演していくのだった。
■グラディウス(1986年)
この時期までのMSXのROMカートリッジは容量が多いとは言えず、それまでの標準は32キロバイト程度だった。この数値がどれくらいのものか細かいことは省くが、この容量では面ごとに景色の異なるグラディウスにはどう考えても容量が足りず、そもそものスペックの低さも相まって“MSX用グラディウス”は夢のまた夢……と思われていた。しかしコナミはやってしまった。独自開発のチップを内蔵し、“1M(メガ)ビット”の大容量を駆使してグラディウスを実現してしまったのである。1MビットROMはMSXにおいてはグラディウスが初採用で、ユーザーのドギモを抜いたことはなはだしい。それでありながらお値段はそれまでの4800円から4980円と、些細な変化しかなかった。このへんは当時の半導体の急激な値下がりの恩恵ではあるものの、グラディウスという看板商品を絶妙のタイミングで投入したことに意義があった。ちなみに“1Mビット”というとなんか無闇に凄そうなのだが、実際は128キロバイト、それまでの4倍となる。4倍というとインパクトが薄いので、“1M(メガ)”という聞き慣れない単位を使ったセンスを評価すべきだろう。以後アスキーは後追いで“メガロム”マークを制定し、MSX末期まで使われることになる。
↑『グラディウス』 グラフィックや機能こそ制限があったが、ゲーム内容はまさにグラディウス。すごい! |
さてゲームはアーケード版『グラディウス』から多少のダウングレードはあったが、グラディウスらしさは十分に発揮している上、MSXオリジナルステージもあるサービスぶりだ。ところで1M ROMだが、実は容量がかなり余っていて、後半4分の1くらいは中身が入っていない。オマケを入れてもまだ余るあたりが凄いのだが、元のアーケードに割と忠実だったのは本作のみで、翌年の『グラディウス2』ではオリジナル要素を大きく加え、さらなるパワーアップをするのだから、当時のコナミの勢いは大変なものだったのである。
■THEプロ野球 激突ペナントレース(1988年)
コナミのMSXゲームは約70タイトル存在するが、とにかくあらゆるジャンルに手を出していた。通称“激ペナ”こと『激突ペナントレース』は名前の通りの野球ゲームである。それまでのMSXにおけるコナミのイメージは『グラディウス』等のシューティングか『イーアルカンフー』等のアクションが主体で、スポーツもののイメージは薄かった。確かに過去には『コナミのテニス』、『コナミのベースボール』といったスポーツ物はいくつも存在したが、あまり目立つ存在ではなかった。さらに言えば、MSXにおいて野球ゲームはコナミ以外の他社を見回してもパッとするものがなく、野球ゲーム不毛地帯であった。ファミコンにはナムコの『ファミリースタジアム』という定番ソフトがあったものの、MSXの野球と言えばこれ、と言える作品が存在していなかったのだ。
そこへ現われた激ペナは、軽快な反応、分かりやすい操作系、当時普及しつつあったフロッピーディスクを使ったチーム作成、最大130試合を戦い抜くペナントレースなど、独自の要素を満載しつつも段違いの完成度で登場し、瞬く間にユーザーの人気をさらったのである。特にチーム作成の人気は高く、ユーザーの作ったチーム同士を対戦させるリーグ戦の企画が長らくMSX誌に掲載されていたことを覚えている方も多いだろう。また地味ながら効果的だったのは、試合の展開によって演奏されるBGMが変わる、というシステムであろう。激ペナはコナミ独自の音源チップ“SCC”をカートリッジに搭載 しており、普通のMSX2の内蔵音源だけでは味わえない独特のサウンドを聴かせてくれた。本作ではこれまでのシューティング系ゲームのクールさやアクション系のコミカルな曲調とはかなり異なる印象の、野球場ではおなじみなノリの良い調子をSCCが奏でていて、この音源チップの器用さや可能性を感じさせた。しかも翌年の“激ペナ2”ではまた更なる進化を遂げ、まったく飽きさせないテンポの良い展開に音楽が一役も二役も買っていた。まったく恐ろしい技術とセンスである。
↑『THEプロ野球 激突ペナントレース』 球種や打力などを設定できる、チームエディットが熱かった。 |
(編集部より)
“コナミのMSXゲーム伝説”は、“MSX30周年”企画の一環として、月2回くらいの目標で連載いたします。ツイッターでのおたより、ご意見、ご感想をお待ちしています。目についたツイートはこの記事内でご紹介させていただくかも。ガッチンコ!
(C)Konami Digital Entertainment
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