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ユーザーがささえた21世紀のMSX。あと最新情報も少し:MSX30周年

2013年08月06日 10時30分更新

MSX30周年スロット&スプライトロゴ

 MSXの役割は時代の変化の中で変わってきました。8ビットという点ではハードもソフトも規模が小さいことから、コンピューターの仕組みを学ぶのに適している面があります。

MSX30周年企画第9回
↑中学の技術家庭で使われた教材バージョン(MSXPLAYer)。BASICプログラムを作ってロボットの制御を学べるもので、文部科学大臣賞を受賞している。先生用と生徒用の教科書があった。2003年版。(写真は、MSXマガジン永久保存版2より)

 しかし、'83年登場当初のMSXの最初の役割は、まだ高価だったパソコンを安価に提供し、まず家庭に導入してもらえるようにすることでした。コンピューターの仕組みがわからなくても、誰でもゲームやアプリを立ち上げて楽しむことができる。例えるなら“テレビで放送番組を気軽に楽しむ”ようにパソコンを使えるようにする必要がありました。それだけのことが当時のパソコンには実現できていなかったのです。MSXはカートリッジスロットを実装することでその要求に応えようとしました。

MSX30周年企画第9回
↑サンヨー『MPC-3』(MSX1)4万6800円。キーボード上部に横一列に3つのスロットが並ぶ珍しい仕様のMSX。カートリッジ3つも何を挿そうかな。拡張という言葉にわくわく夢が広がった時代でした。(写真は、MSXマガジン'85年5月号より)

 時代を経て21世紀。WindowsやMacなどで誰でもずいぶん手軽にパソコン利用できるようになりました。MSXはパソコンという実用的な道具(ワープロなどの)である必要はなくなり純粋に玩具や実験用具として楽しんだり、シンプルなアイディア一発的ゲームを作ったりといった楽しみ方が主となってきました。

 ただ、問題は既にMSX本体の生産が終了してしまったことでした。2000年代の初頭からオークションなどでは高値で中古の本体を取り合うユーザー同士の値のつり合いなどが散見されるようになってきたのです。やはりどうにかMSX本体の供給を継続的に維持する必要がありました。

 Windows環境で手軽にMSXを楽しむことができるソフト“MSXエミュレーター”は、公式、非公式含めいくつか出回っていましたが、カートリッジの利用が問題でした。そこで登場したのが2004年にアスキーから発売された“MSXゲームリーダー”でした。

MSX30周年企画第9回
↑MSXゲームリーダー(左)。アスキーソリューションズ社とMSXアソシエーションの共同開発。Windows機のUSBに挿してMSXPLYerを立ち上げるとカートリッジのゲームが遊べた。2台使えば“炎の予言”もOKだ。シルエットを松下機(右)のイメージに似せている。

 エミュが出てもやはり本体復活はユーザーの悲願ということで、ついに“1チップMSX”が登場します。“FPGA”という、書き換えができるチップを使ってMSX2相当の環境を再現しました。これは自由に内容を書き換えながら「MSX3とはどういう規格であるべきか」をユーザー同士、検討しあうことを目標に、あえて中身を“書き換えられる”仕様にしたのです。

MSX30周年企画第9回
↑2006年に発売された『1chip MSX』。限界まで小さく作った結果、拡張ディスクドライブを挿すとこんなことに(笑)。松下のMSX-AUDIOとか大きなカートリッジを挿すとさらに凄い風景が見られる。カシオの低価格記録を抜きたかったが無理だった。1万9800円。(写真は、1chip MSXの取扱説明書より)

 MSXはI/Oがシンプルに外に出ていることから、いろいろな電子工作機器をつないで遊ぶことができます。プリンター端子やジョイスティック端子に簡易な拡張音源を挿したり、MIDI端子変換させたり、これまでもいろいろな(同人含め)ハードが登場しました。特にスロットは基板に電子回路を組んで挿して遊ぶのに最適です。

MSX30周年企画第9回
↑SDメモリーカードをMSXに挿す国産同人ハードの試作機。SDスロットを2個持っているので ファイルのやりとりが便利だ。ヨーロッパなどではすでにこっそりと発売中っぽいぞ。
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↑電子工作用のユニバーサルボード。一般のゲームカートリッジサイズ版とちょっと大き目のとがあった。これでまず試作して実験、検証して遊ぶ。評判が良ければ量産化して同人ハードにしようっと。(写真は、MSXマガジン'85年8月号より)

 MSX“空”カートリッジ(ケース)は現在は入手が非常に困難ですが、時代はもう“3Dプリンター”ですよ。もうすぐ手軽に利用できるようになるでしょうし、そうなれば解決は時間の問題です。これからは更に手軽に拡張カートリッジを作れるようになるでしょう。

 さて今回はそんな“実験”を続けている人のひとり、金沢大学の大野浩之教授を訪ねてNT金沢(関連サイト)に行ってきました。大野先生は金沢市で“UNIXネイティブ電子工作塾”を主宰されており、大学での最新の研究成果を生かして社会貢献活動をされています。

 大野先生は既存のMSXには最新のテレビで標準的に採用されているHDMI端子が無くて困っていることを聞き、HDMIカートリッジを試作してみたとのことでした。

MSX30周年企画第9回
↑実際に先日の8月4日にNT金沢で展示された試作機。MSXからの映像をカートリッジ側が取 りこぼさないかどうかの検証をしている。こぼせば画面が映らなかったり化けたりしてしまう。
MSX30周年企画第9回
↑HDMI実験用カートリッジをソニーの『F1-XV』に挿しているところ。

 このカートリッジは内部に“RaspberryPi”と呼ばれる32ビットマイコンを搭載しMSXの“下請け作業”をさせているのだとか。カートリッジ側にMSXのI/Oポートを監視させることができるということで、HDMIのみならずさまざまな拡張機器が製作可能となるわけです。例えばMSXをネットワークに接続する方法も考案できるのです。
 このアイディアの基本はもともと、ビデオデペロッパーやスーパーインポーズカートリッジ、MSXバージョンアップアダプターなどでの拡張方法と同じなのです。

 NT金沢の会場では、週アスPLUSの読者の方や地元MSXユーザーらがブースの展示開始と同時に多数訪れ、強い関心を寄せていました。大野教授、なにやらニコ生中継などでも野望の数々をお話しされていた様子。ならば次の日曜に池袋でひっそり行なわれるイベント(関連サイト)でも実物を見せて頂くと同時に、大野教授に直接ちょっとお話しを伺ってみましょう。

 来週は、いろいろなMSX本体の写真をたくさんご覧頂こうと思っています。みなさんの“思い出のMSX”はなんですか? リクエストお待ちしております。
では、また!

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進撃のおたよりコーナー

@nf_ban さん
MSXのROMカートリッジと言えばゲームばかりの印象だけれど、本来は拡張バスであり各種ヘンテコ周辺機器も繋がった。電波新聞社のセンサーキッド、とか。

──センサーキッドは、当時の男子の実験心(ごころ)をくすぐりまくりでしたね。温度、光、音をMSXで読み取れるんでしたっけ。これ、USB接続とかにしたら今でもいけるかも?

@Clearnote_moe さん
MSX-WIZERD(MOVIT2)持ってた。右左折でなく、左右モーターを個別onoffしてたような。

──MSXのカートリッジを口で加えたように見える外見がちょっとシュールですが、三角形のキャタピラを持ったロボットは、当時の男子の操作心(ごころ)をくすぐりまくりでしたね。

@imacfun さん
XD→XV→GTと買ったw XDはクロックアップ図り壊した(笑)

──うは、当時から、オーバークロックされてたんですか。今でもそういうことに興味がある人は、ぜひ週アスの自作増刊号を買ってください(宣伝宣伝)!

今回はここまで。本文にあるように、みなさんの思い出のMSXをぜひTwitterでお寄せください。

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