現実世界のモチーフを模倣したiOS6までのデザインとは大きく変わり、装飾を限りなく削ぎ落し、クリーンなデザインに生まれ変わったiOS7。多くの人の手に馴染んできたものをリセットしてまで新しく変えてきた理由は何か? iOS7のデザインから、AppleのUIデザインのこれからを読み解いていきたいと思います。
■より普遍的なデザインへ
数年前までは、誰も見たことも触れたこともなかったiOSのタッチインターフェイス。これまでのiOSでは、それらを直感的に操作できるように、ノートやカレンダーといった現実世界にあるモノを模倣したデザインがよく使われてきました。それは同時に、現実の概念に縛られることで新しい操作性への可能性を閉ざすことにつながっていました。
しかし、いまやiOSは多くの人々の生活の一部となりました。それに伴って、これまでのような明喩的なデザインにする必要性は低くなりつつあります。iOS7の限りなくシンプルで普遍的なデザインは、より自由度が高く、多くの人に受け入れられるようなものに仕上がっています。
■見た目の美しさ以上に、体験の美しさへ
iOS 7のUIでは余計な装飾が取り除かれて、機能がシンプルに際立つデザインになっています |
現実世界の模倣から解放され、シンプルなグラフィックになったことで、「カレンダー」や「メッセージ」アプリのアニメーションがより軽快なものになっています。主張しすぎないシンプルなグラフィックとスムーズなアニメーションで、触れた時の心地よい体験を重視したデザインへと移行しつつあることが感じられます。
■「魅せる」デザインから「見えない」デザインへ
iOS6までは、以前の責任者だったスコット・フォーストール氏が、ルーペを使ってすべてのアイコンに1ピクセルの乱れもないことを確認していたと言います。そこまで徹底してディテールの美しさを「魅せる」デザインになっていたのです。これに対しiOS7では、そういった質感やボタンの立体感などのデザインのパーツらしさが排除され、その存在を意識させない「見えない」デザインになっています。
今回iOS7のデザインを主導したジョナサン・アイブ氏は、ドイツの偉大なインダストリアルデザイナー、ディーター・ラムス氏に大きく影響を受けていると言われています。ラムス氏の言葉に「良いデザインは、押し付けがましくない」というものがあります。単に見た目をシンプルにするということではなく、デザインそのものを意識させないぐらい透明な存在にすること。iOS7のデザインを変えることで、人とインターフェイスの関係のあり方をフラットに再定義する……。アイブ氏は、Apple全体のデザインをそのような方向性に変えていこうとしているのではないでしょうか。
松本隆応(Takamasa Matsumoto)
iOSデバイスやAndroid端末を用いたモバイル決済システムで話題の「Coiney」のデザインを手掛ける(関連サイト)。
iOSやOS Xのデザインへの造詣も深い。松本氏の個人ブログ「DESIGN ARCHIVE」のコンテンツ「細かすぎて伝わりづらい」シリーズは、Appleファンなら必読だ。
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