6月3日、COMPUTEX TAIPEI 2013の開幕前日のプレスデーにて、Acerが、以前から噂されていた世界初となる8インチのWindows8タブレット『ICONIA W3』を発表しました。
同日にはライバルのASUSもカンファレンスを行なったものの、Windows8タブレットの発表はなかったこともり、ICONIA W3が大きく注目を集める結果になりました。7~8インチクラスの小型タブレットはiPad miniやNexus7で盛り上がっていたこともあり、ついにその市場にWindows8が参戦したことで、大きさや重さ、価格に関心が集まっているようです。
しかし筆者がひそかに注目しているのは、Windowsボタンの位置が大きく変わったという点です。
『ICONIA W3』 |
まずはICONIA W3について簡単におさらいしてみましょう。
■ハードウェア的には小型Atomタブレット
ICONIA W3のディスプレーは8.1インチ、画面解像度は1280×800ドットで、Windows8タブレットとしては珍しい解像度に感じます。これは、今年の3月に行なわれたWindows8のハードウェア要件の変更に伴い、最低1024×768ドットの画面解像度があれば、Windows8タブレットを実現できるようになったからです。
プロセッサーはAtom Z2760を搭載。メモリーは2GB、ストレージは32GBまたは64GBの2モデルです。このことから、ICONIA W3の基本性能は従来のAtomプラットフォーム(Clover Trail)を採用したタブレットと同等であると見られます。10インチのAtomタブレットをそのまま8インチに小型化したと考えてよいでしょう。
販売価格は32GBが329ユーロ(約4万3000円)、64GBが379ユーロ(約4万9500円)となっています。地域によって同梱または別売となるキーボードは、69ユーロ(約9000円)となる予定。Office Home and Student 2013が付属することを考えれば、なかなかお買い得な値段と言えます。日本での発表にも期待したいところです。
↑発表会ではタッチ操作でExcelのグラフを作るデモが行なわれた。 |
■ICONIA W3は横持ちと縦持ちの両方をサポート
さて、ICONIA W3で注目したいのは、Windowsボタンの位置が変わったことです。これをわかりやすく図示してみましょう。
↑スタートボタンの位置が長辺から短辺に移動。 |
これまでのWindows8タブレットでは、Windowsボタンは赤い丸印の位置にありました。一方、ICONIA W3では青い丸印の場所に配置されています。長方形の長辺から短辺に移動したわけです。
これにより、タブレットを縦持ちしたときに、Windowsボタンがセンターに来るようになっています。つまりICONIA W3は最初から縦持ちでの利用を想定したデザインになっているのです。
↑縦持ちすると、Windowsボタンがセンターに。 |
とはいえ、完全に縦持ち専用というわけではありません。タブレット正面左上と、タブレット背面にあるAcerのロゴは、横位置で正しく見えるように配置されています。パッケージにも、横位置の写真が使われています。
↑キーボードにドッキングした状態。背面のAcerロゴは横位置を意識。 |
↑ICONIA W3のパッケージ写真も横位置。 |
↑フォトセッションで、Acer会長のJ.T.Wang氏(中央)は横位置で持った。 |
これに対して、発表会のプレゼンでは縦位置での片手持ちができることもアピールしています。
↑縦位置で片手持ちするという写真も用意されている。 |
また、ICONIA W3のオプション品として外部キーボードが発表されました。タブレットとの接続にはBluetoothを利用するため、タブレットはキーボードの溝に物理的にはめ込むだけ。横方向にも縦方向にもはめ込むことができます。
↑オプションのキーボードには、横位置でも縦位置でも使える。 |
■アプリの対応に期待
このようにICONIA W3は、縦でも横でも使えるデザインとなっています。一方、同じ8インチクラスのタブレットでも、縦位置での利用を前提とした機種も存在します。たとえば『GALAXY Note 8.0』で、サムスンのロゴやボタン類がどのように配置されているか、比較してみてください。
↑GALAXY Note 8.0。縦位置での使用を想定したデザインだ。 |
これに比べてICONIA W3は、縦位置と横位置のどちらで使うべきなのか中途半端な印象を受けます。その原因は、これはWindows8というOSがPCに由来していることが原因に思えます。
一般にスマートフォンは、片手で握るようにして持つことから縦位置で使うことが多く、多くのアプリも縦位置に最適化されています。小型タブレットや“ファブレット”も、その延長にあることから、縦位置で使用する頻度が高いと言えます。
これに対してPCの世界では、基本的にはディスプレーを横長に使ってきました。たしかにモニターのなかには回転に対応したものがあり、文書作成やデザインなどの用途で縦画面を便利に使えるシーンはあります。しかしノートPCがどれも横長のディスプレーを搭載していることからもわかるとおり、主流はあくまで横位置でした。
そのため、Windows8から対応したストアアプリにおいても、横位置で使ったほうが便利なものが多いように感じます。しかしCOMPUTEX TAIPEI 2013を含め、今後は7~8インチクラスのWindows8タブレットが続々と登場するはず。これにより、縦位置でのWindows8アプリという“新ジャンル”が確立するのではないかと思います。
これを促進するため、たとえばWindowsストアにおいて、縦位置で便利に使えるアプリを探しやすくするのはどうでしょうか。既存のアプリ開発者への対応をうながすこともできるはずです。また、縦位置での利用に特化したアプリコンテストのような取り組みも考えられます。
さらに先を見据えると、Windows Phoneアプリも視野に入ってくるでしょう。いまのところ、Windows8ストアアプリとWindows Phoneアプリには互換性がありません。しかし縦位置での小型Windows8タブレットでは、Windows Phoneアプリを使ってみたくなるはずです。将来的に、WindowsストアアプリとWindows Phoneアプリが統合されることにも、期待したいところです。
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