週刊アスキーの連載ページ『ネット早耳かわら版』に掲載している“ニコニコ動画 今昔物語”クロス連載。週刊アスキー4/30号増刊号(3月25日発売)では、“ニコニコ技術部”カテゴリーを始めとする“つくってみた”を取り上げています。ゲストは、ニコ動発の同人イベント“ニコつく”を運営する八田大次郎さん、ニコ動運営の伊予柑(伊豫田旭彦)さん。今週は、レゴで謎のお役立ち(!?)アイテムをつくる“kohsuke's lab”さんをピックアップしました。
kohsuke's labさんの作品はヤバいです。何がすごいかって、まったくもってつくる意図がわからないところです。たとえば、生放送で披露していただいたトイレットペーパーホルダーは、タコメーター(クルマでエンジン回転数を示す針)が付いています。まず、レゴでトイレットペーパーホルダーをつくるという時点で頭の上に“?マーク”が浮かびますが、さらにトイレットペーパーを引き出す速度まで測ってくれるわけです。
レゴ以外の部品は一切使っておらず、さらに電気なしのアナログで実現したという点に感動してしまいます。ペーパーを引っ張った勢いがギアを通じて左下にある三脚に伝わり、速いほどその足が大きく開く。緊急時にトイレに駆け込んだ場合などに、急いでペーパーを引くとレッドゾーンを示してくれるという見事な仕様になっています。
タコメーターの右側には、トイレットペーパーの残量系を用意。「えっ、どう考えても紙の残りなんて見た目でわかるでしょ?」という質問はあまりに無粋なのでやめましょう。展示のためにつくったのではなくて、実際にkohsuke's labさんがトイレに付けて使っていたというのが素敵です。
さらによくわからないのが、タバコとんとんマシーンです。タバコを机の上でトントンして片側につめている人のために、それをレゴで自動化してくれるという画期的(!?)な機械なのです。3つのスロットにタバコをセットし、スイッチを押すとそのスロットが上下してトントンしてくれます。
しかもレゴの人形がとんとんマシーンの操縦席に立っていて、タバコの煙に影響されないようにガスマスクをしています。スイッチをオンにすると、操縦しているハンドルまで動いてくれるという、本当に意味がわからないレベルで芸が細かすぎなところにほれてしまいます。筆者の「なんでつくろうと思ったんですか?」という質問に、「そこにレゴがあったから」と答えてくれたkohsuke's labさんがカッコよすぎです。
↑レゴでできた名刺入れも見せてもらいました。黄色いレバーを引くとシャキーンと名刺が手前に飛び出します。挨拶したらこれだけで心をつかまれる一品です。
伊予柑さんは「これはチャップリンの『モダン・タイムス』から続く、効率化が進む現代社会への批判というテーマ。いわゆる“ピタゴラ装置”で、何かをするんじゃなくておもしろいだけのもの。日本でいえば明和電機さんの世界」と、かなり大きな枠で評価していました。
さらに「ニコ動には2つの流れがある。ひとつは“n次創作”で、誰かの作品を基にして差分でつくっていくもの。これはオリジナルの作品が出てきにくい。ニコ動の“集合知”は大量の可能性を全部試すところにあって、ジャンルとしてはスゴくなるわけですが、一個一個が飛び抜けているわけではない」とコメント。
「スゴいものは、“ひとりの狂気”から生まれているんです。『MMD』(MikuMikuDance、フリーの3DCGソフト)だったら、MMDのソフトをつくった人がすごい。今ニコ動でそんなひとりでつくらざるをえない状況にいちばん近いのは、単純な動画の切り貼り、パロディーができない“つくってみた”系の人だと思います。誰かの狂気で耕した空間を、わーってみんなで遊ぶのが一番楽しいんです」と、元2ちゃんねる管理人のひろゆきさんの言葉をふまえて、つくってみたのおもしろさを示唆していました。
ユーザーが欲しいものを提供するはずが、「こういうユーザーが欲しい」に変わっちゃう話(関連リンク)
ニコつくの八田さんも「同じ“つくってみた”というくくりでも全然ジャンルが違うので、エッジが立つ、遥か彼方にいて狂気じみている方がいっぱいいらっしゃいます。そういうところから実はブレイクスルーが生まれているんじゃないか」と語っていました。
誰かがつくった作品を自分なりにおもしろくアレンジした作品もおもしろいですが、「えっ、これって誰得なの……」と理解の範囲を超えた作品に出会えるのもニコ動の魅力ですよね。kohsuke's labさんは、4月28日、幕張メッセの“ニコニコ超会議2”内にて開催する“ニコつく3”にて展示する予定なので、行く予定のある人はぜひチェックして見てください。
■関連サイト
週刊アスキーチャンネル(ニコニコチャンネル)
ニコつく3
■週刊アスキー 連載ページ『ネット早耳かわら版』
リニューアルしてパワーアップしたネット情報満載の連載ページ。SNSを使いこなすテクニックやウェブアプリやサービスの紹介、ソーシャルメディアの話題など、盛りだくさんの4ページでお届けしている。
■著者紹介-広田稔
ウェブサイト“ASCII.jp”でMacやネットサービスなどのネタを担当。初期からニコニコ動画を取材し、2007年には笛のお兄さんの「Fooさん」を取材(関連サイト)していたりして、有り体にいえば“ニコ厨”(ニコ動好きな人)、好きが高じて『ニコニコ動画めもりある ~ニコニコ大会議編~』という書籍を執筆。
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