種子島宇宙センターで予定していたH-IIBロケット3号機(H-IIB・F3)による宇宙ステーション補給機“こうのとり”3号機(HTV3)の打ち上げ時刻は、7月21日(土)11時06分18秒と決定した。
飛行計画によれば、打ち上げから3分40秒までに高度120km(距離245km)まで一気に上昇する(地球と宇宙との境目はだいたい高度100km)。
※2012年7月19日発表「H-IIBロケット3号機の打ち上げについて」より抜粋。 |
(C)JAXA |
まず打ち上げから2分7秒前後に高度63km~65km(距離67km~71km)で固体ロケットブースター第1/第2ペアを、3分38秒でHTV3を保護するロケット先端部のフェアリングが分離される。5分45秒後には高度183km(距離702km)にまで到達し、第1段主エンジンの燃焼を停止。高度188km地点でロケット第1段、第2段が分離され、打ち上げから14分52秒後には、高度288km(距離3984km)でいよいよ“こうのとり”3号機(HTV3)の分離となる。
※2012年7月19日発表「H-IIBロケット3号機の打ち上げについて」より抜粋。 |
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“こうのとり”3号機(HTV3)は打ち上げから6日かけて国際宇宙ステーション(ISS)に接近。相対速度を合わせて静止し、ロンドンオリンピック開会式直前の7月27日(金)21時5分ごろ、ロボットアームによるキャプチャを行ない、その後いよいよ星出宇宙飛行士が待ち受けるISS日本実験棟“きぼう”へのドッキングを果たすのだ。
↑大型ロケット組立棟に移動する「こうのとり」3号機。 |
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“こうのとり”3号機(HTV3)には食糧や衣服など、ISSで宇宙飛行士が必要な物資のほか、多数の物資や実験装置が搭載されており、この実験装置を使って約50日間のミッションが行なわれる予定だ。(→関連記事【7月21日打ち上げ予定のHTV3号機はどんな実験機器を宇宙へ運ぶの?】)
注目の実験装置
●宇宙でメダカの長期飼育に挑む“水棲生物実験装置”
●和歌山大学をはじめとする大学が開発した超小型衛星“キューブサット”と、ロボットアームを使ってキューブサットを軌道上に放出する“超小型衛星放出機構(J-SSOD)”(→関連記事【手のひらサイズの人工衛星を宇宙空間にプイッとするJAXAの新技術】)
●宇宙ロボット“REX-J”実証実験機など、ISSの船外で実験を行なう実験装置“ポート共有実験装置(MCE)”
“こうのとり”3号機(HTV3)は2012年9月8日(土)に地球へ再突入し、再突入データ収集装置“i-BALL”を放出。ばらばらに燃え尽きる姿を間近で撮影されながら、南太平洋の海に沈むまでが任務となる。
↑報道関係者向けに公開された宇宙ステーション補給機「こうのとり」3号機(HTV3)に搭載する再突入データ収集装置(i-Ball)。 |
(C)JAXA |
迫力の打ち上げ映像を生中継してくれる主なサイトはこちら。
PC向け
■JAXA 宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)特設サイト(7月21日午前10時~)
■ニコニコ生放送 H-IIBロケット3号機打上げ/「こうのとり」3号機(HTV3)(7月21日午前10時~)【独自映像ソース】(番組ID:lv100543499)
■ディジタルスタジオ SPACE@NAVI-Kibo SPECIAL LIVE(7月21日午前11時~)
スマホ向け中継サイト
■SmartLive JAXA インターネットライブ がんばれ、こうのとり3号機!(7月21日午前10時~)
■上野原ブロードバンドコミュニケーションズ JAXAライブ中継(7月21日午前10時~)
そのほか、JAXA 筑波宇宙センター、相模原キャンパス、日本科学未来館をはじめとする各地の科学館などでパブリックビューイングが行なわれる予定だ(場所はすべてJAXA特設サイトにて確認可能)。
土曜日の朝、ロケットの飛翔で熱く盛り上がろう!【H-IIBロケットは、7月21日午前11時6分18秒、予定通りに種子島宇宙センターから打ち上げられ、所定の軌道に投入。打ち上げから14分53秒後にHTV3を分離しました。】
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【7月28日 続報】
日本時間7月27日午後21時23分、国際宇宙ステーション補給機“こうのとり”3号機(HTV3)をISSのロボットアームでキャプチャーする作業が行なわれた。キャプチャー実行時間はNASA側コマンド確認のため、予定時刻の21時05分よりやや遅れて実行。ISSから10mまで接近し、待機するHTV3はNASA(ヒューストン)からの管制によってキャプチャーコマンドを実行、筑波宇宙センター、HTV運用管制室の内山崇フライトディレクタへ成功が伝えられた。
↑ISSに接近したHTV3のキャプチャー間近となる筑波宇宙センター HTV運用管制室。 |
キャプチャー後の取材に三宅正純ISSプログラムマネージャーは「マイナートラブルもほとんどなく、ほぼ完ぺき」というコメントが出たほど順調に進行。メインエンジン、姿勢制御スラスタともに国産化、トランスポンダなどの通信機も国産化して最初のミッションを無事に消化したという。また、ISSで今回のキャプチャー作業のサポートを担当していた星出彰彦宇宙飛行士からも、「日本の皆さん、日本の技術と誇りの詰まった”こうのとり”が到着しました。宇宙ステーションの窓から見える”こうのとり”は非常にきれいです。関係者の皆さんの努力に敬意を表したいと思います。おめでとうございます」とのメッセージが伝えられた。
↑ISSに接近するHTV3とロボットアーム。 |
提供:JAXA/NASA |
その後HTV3はISSの結合部“ハーモニー”へ固定する作業を行い、空気漏れや電源配線などの確認作業。作業はまったく順調なため、目視点検などの時間が大幅に短縮された模様。2時31分には、ISSからHTVへ電源供給の配線も完了した。日本時間3時ごろにはハッチ間の断熱シートを取り外し、HTV入室直前まで作業を進めていたため、10時間以上の前倒しでHTV入室まで進んでしまうか? と思われたがさすがにそうはならず、本日はここまで。
作業を急いだ理由は、HTV3打ち上げの直前で積み込んだGoogle公募の実験用ハエトリグモが7月17日から絶食を強いられており、それを気遣ったためとも、クルーが28日一日を休みにしたかったためとも言われていたが、さすがに公式の発表はなかった。
↑HTV3キャプチャーに臨む内山崇HTV3フライトディレクターを後ろから見守っている“こうのとり”(ちなみに3号。手前の頭部のみ見えているのが2号)。 |
地上ではオリンピックの開会式が盛大に行なわれていた日本時間5時10分、筑波宇宙センターでは小鑓幸雄プロジェクトマネージャー(PM)と内山フライトディレクター(FD)の記者会見を開催。作業が順調であったこと、また今回初めてHTVを日本人宇宙飛行士の星出さんが迎えてくれたことに対する喜びが語られた。
星出さんは宇宙からHTVチームに“こうのとり きれいすぎて見とれて手が止まってしまい、作業に集中するのが大変”というメールを送ってくれたとのこと。そして、小鑓PMによれば「今回はHTV3のミッション4つの関門のうちの2つ目。3つめとして、次は8月5日から始まる、日米の船外実験装置を搭載した”曝露パレット”をHTV補給部キャリア非与圧部(真空に直接曝されている部分)の移送とISSへの取り付けがあります。また、“ISSからの離脱と国産メインエンジンでの再突入”が4つ目の関門です」とのこと。9月8日(予定)までのミッションの無事を見守りたい!
■関連サイト
JAXA 「こうのとり」3号機/H-IIBロケット3号機 特設サイト
JAXA 「こうのとり」3号機(HTV3)ミッション
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