ついにベールを脱いだ新iPhone。iPhone 4と外観はまったくと言っていいほど同じで「なんだiPhone 5じゃないのか」などという声も聞かれた。しかし、今回は昨年にも増してリーク情報があまりにも多すぎ、なぜかiPhone 5という名前だけがひとり歩きしていたように思えた。これまでのiPhone 3G→3GS→4という流れから見れば、今年はiPhone 4Sの年であることは順当と言える。
しかし、だからと言って、これはマイナーアップデートではない。むしろ、「もうiPhone 5と言ってもいいんじゃ?」というくらいの大きな進化を遂げていることに、筆者はかなり興奮している。デュアルコアCPUのA5を搭載することは想定内だったが、あらためてiPhone 4Sのポイントを確認していきつつ、「iPhone 4Sは買いなのか、それともiPhone 5まで待ちなのか?」を考察していきたい。なお、筆者は実機に触れていないため、いくぶん推測を含んでいることをお許しいただきたい(編集部注:実機レポートは別記事を参照)。
iPhone 4S 白&黒 |
■ポイント1 基本性能のアップ
デュアルコアのA5の実力はすでにiPad 2で証明済みだ。アップルによればiPhone 4SはCPU性能は2倍、グラフィック性能は7倍とのことで、動きの速いアクション系ゲームもストレスなく楽しめる。これまでのiPhoneのスペックに合わせて設計されていたアプリも、A5 CPUの性能に合わせてどんどんパワーアップしていくものと期待できる。
また、待望の64GBモデルが登場したことも大きな魅力のひとつ。これは、後述するカメラ画素数と動画撮影性能の向上に伴うものと考えられるが、音楽やビデオ、写真を目一杯詰め込んでもかなり余裕だろう。特に、写真やビデオはどんどん高解像度化してファイルサイズが大きくなっているので、財布に余裕があるならぜひ、64GBモデルを手に入れたい。
■ポイント2 800万画素の裏面照射型CMOSセンサー
iPhone 4Sの目玉のひとつは、800万画素のカメラだ。iPhone 4の500万画素カメラでも十分ではあったが、それを上回るスペックに加え、顔検出機能、手ぶれ補正まで付いている。また、トリミングや画質補正、赤目除去などのレタッチ機能も標準で付いている。
「iPhoneの楽しみはなんと言ってもカメラ」というユーザーは多いはず。筆者もそのひとりだ。豊富なカメラアプリを駆使して、これまで以上に写真が楽しめるのはいい。新しいデジカメを買う感覚でiPhone 4Sを買ってもおかしくない。アップルは今度のカメラには相当自信あるようで、アップルのサイトにはサンプルギャラリーも用意されている。
↑アップルの“iPhone 4Sフォトギャラリー”サイト。CMOSセンサーや映像エンジンなど、カメラ性能が大きく向上していることがわかる。 |
↑新たに追加された顔検出機能は、顔を認識して自動的にピントと露出を合わせるという本格的なもの。 |
また、動画撮影機能も強化された。1920×1080ドットのフルHD撮影が可能なのだ。もちろん、フレームレートはフルレートの30fps。iPhone 3GSが640×480ドットだったことを考えると、格段に進化した。撮影したビデオは、直接、大画面の外部ディスプレーに映し出したり、PCで取り込んで楽しんでもいい。
さらに、CPU性能がアップしたことで、写真の編集やiMovieなどを使った動画編集がかなり快適になっているものと思われる。iPhone 4でビデオ編集するとちょっと重たく感じられたものだが、iPhone 4Sでは軽快になっていると期待したい。
↑iMovieでのビデオ編集が快適にできるだろう。 |
■ポイント3 auが選べる!
アップルのスペシャルイベント前に情報が洩れてしまったので、大サプライズにはならなかったが、それでもiPhone 4Sがauからも買えることはかなり驚きだ。筆者はもう少し先になるのでは……と、たかをくくっていたのだが、今度のiPhone 4Sはベースバンドチップにauが採用するCDMA EV-DO Rev. A(800、2,100MHz)」を搭載しているので、auでiPhoneが使えるようになったのだ。
ソフトバンクの電波が届かない、という声はよく聞かれるが、実は筆者の自宅もかなり電波が弱く、通話や通信が途切れてしまうことが多々ある。iPhoneユーザーが増えたことで、都心部のソフトバンク回線も混み合っている。iCloudを屋外で使おうとする場合は、こういった点が問題になるだろう。
だから、CDMA版iPhoneをターゲットにするのはアリだ。CDMA版のユーザーはまだ少ないので、ユーザー同士の“電波帯域の取り合い”は避けられる。
↑筆者の自宅のソフトバンク回線の状況。下り170kbpsと非常に遅く、ウェブブラウジングすらかなりつらい。 |
■結局、iPhone 4Sは買いなのか?
以上、iPhone 4Sのポイントを駆け足で見てきた。iPhone 3G、iPhone 3GS、iPhone 4と毎年iPhoneを購入してきた筆者には、iPhone 4→iPhone 4Sの進化は、3G→3GSよりもはるかに大きいように感じられる。今、3GSを所有していて買い替えを悩んでいるユーザーなら間違いなく「買い!」と断言してしまおう。
ちょっと微妙なのが、今iPhone 4を持っているユーザーだ。あれほどまでにiPhone 5のリーク情報が巷を騒がせたからには、「iPhone 5まで待ち?」かどうか悩んでいる人も多いだろう。
↑iPhone 5用のケースをフライングで掲載してしまったメーカーも……。 |
↑“for the iPhone 5”の文字があり、iPhone 5らしき機器の写真もある。 |
リーク情報に基づいて、恐らく来年に発売されるであろうiPhone 5を予想するならば、ソフトバンクが採用するW-CDMA系3G通信向けの機種は、HSPAよりもさらに高速な“HSPA+”を採用する可能性が高い。また、au向けのCDMA版はWiMAXを搭載するとの噂もある。
ただし、HSPA+もWiMAXも、まだ現行のHSPAに比べれば利用できるエリアがやや狭いのが難点だ。
しかも今、データ通信の規格は、WiMAXの後継規格である“WiMAX 2”が来年以降サービス開始される予定であり、ドコモが推進しているLTEはすでに製品化されている。iPhone 5が実際どのような規格を採用するかは不透明、というのが本当のところだろう。
また、CPUの高速化は当然のこととして、ディスプレーが大型化したり、本体が薄くなる、あるいは曲面ガラスが採用される……など外観上の大きな変化も予想されるが、詳細はまだ闇の中だ。このようななかでもし“待ち”を選んだ場合、iPhone 3GSとiPhone 4ではiOS 5の動作がモッサリしている……という自体に直面する可能性がないとは言えない。
少なくとも、
・新しいカメラ機能に魅力を少しでも感じている
・ソフトバンクの電波状況が不満である
・iOS5を最速の環境で使いたい
という人なら迷う必要はない。今すぐに最先端のiPhoneの世界を存分に楽しんで欲しい。とは言え、本体価格と料金プランを気にしながら、秋の夜長に延々と悩んでみるのも悪くはない。
●著者
池田冬彦
フリーランスライター。金融系SEからIT出版業界に転身し、'93年よりフリー。IT雑誌、Web、書籍の企画・執筆を中心に活動する。'07年に米国で発売された初代iPhoneに大変な衝撃を受け、'08年から毎年、発売日初日にiPhoneを買い求めている。自称iOSエバンジェリスト(笑)。
近著に『iPad×BUSINESS PERFECT BIBLE(共著:翔泳社刊)』がある。
Twitterアカウント @ikeeda
URL http://www.aerovision.jp/
※関連サイト
iPhone 4Sフォトギャラリー
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