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n次創作は仲間内で楽しむのが最大の幸せ - 雪ミクイベントで語られた“創造の未来”(中編)

2011年02月17日 21時00分更新

文● 広田稔 撮影●高橋智 編集●Web担サカモト 

 前編に引き続き、札幌で激論が交わされた“創造の未来 ~クリエイトのこれから~”というトークショーの詳細をお伝えしよう。

 2つ目のテーマは、ネットにおける新しい創作活動とビジネスについてで、村上氏、伊藤氏、佐々木氏、片桐氏が参加した。

 初音ミクの世界では、誰かが作った楽曲を勝手に使って動画を作ったり、まったく新しい曲にアレンジしたりと、クリエイターによる創作の連鎖(n次創作)が生まれている。そうしたネットで生まれた作品を、いざ流通に乗って販売しようとすると、権利的な問題が出てきたり、割り切れない気持ちを感じる人も少なくない。

 何が違和感を生み出しているのか。その原因を伊藤社長が端的にまとめていたので、そのまま引用しよう。

雪ミクイベントで語られた“創造の未来”(中編)

  僕らは今、二つの世界に住んでいる。ひとつは家族や町内会といった人の絆がある“社会規範”の世界。もうひとつは、自分が働いて給料をもらったり、何か作ってお金をもらったりという“経済規範”です。

 その前者においてお金の話をすると、「えっ」と思う訳です。例えば、20歳まで養ってもらった両親に「今まで育てていただいてありがとうございます。お代はいくらですか」と言うと、凍り付く。そこはお金の話をあまりしない世界。一方で後者は、お金の話をする。

 n次創作というのはおそらく前者の世界で、仲間内で楽しむ範囲に収まるなら最大の幸せだと思う。むしろそこに収めておいておけば、こんなに幸せで楽しいことはない。

 しかし、いったん権利を使って商品を作ったり、映画化しましょうとなると、とたんに後者の世界に入ってくる。どちらがいいかという話じゃなくて、両方の世界に住んでいるというのが現実なんです。どちらかに一方にしようというのは無理なので、コントロールするのはなかなか難しい。

   この話には片桐氏が賛同を示し、村上氏も面白いと語っていた。

 佐々木氏は、“二次創作”という言葉自体が今に即していないと訴える。「既存の二次創作は、アニメを模写したようなイラストだったり、そのサブストーリーを作るといったもの。一方、初音ミク以降の創作は、一次も二次もなくて、並列化している。みんな作っているし、それを受け取っている。どこまで誰が作っているのかという境目がどんどん曖昧になっているので、以前とごっちゃにしない方がいいんじゃないか」と語る。

 伊藤氏と同様、ネットコンテンツの商品化についても触れた。まずは「過去は企業が商品を作るところからスタートしているものが多かったが、pixivもニコ動も、今はまず社会規範に基づいて善意でスタートしてネットで盛り上がったものがほとんど。そこで人気を博して商品化されるという逆の流れが出てきたため、調整が利かなくなっている」と状況を解説。

 その上で「曲や絵を作った人が素晴らしいというのは確かなんだけど、誰に権利が及んで、誰に対価や名誉が行くべきなのかを判断するのは難しい。音楽出版社を通じたようなやり方だと、動画や絵師に権利が及ばないことも多い。“二次創作”じゃないですけど、ここも昔の言葉が現状に追いついていない」と、過去のやり方を見直すことを提案する。

雪ミクイベントで語られた“創造の未来”(中編)

 片桐氏は、「権利を曖昧にしていた方が、ユーザーがきちんと話し合ったり、クリエイティブなものがうまれてくる。n次創作は、クリエイティブコモンズが設定されていると生まれにくいと感じているので、pixivではそのへんをあえて曖昧にしている」と、権利を曖昧にする利点に触れる。

 ネットコンテンツの商品化については「必ずしも全員が商品になってほしいとは思っていない。pixivにも販売したいという話がくるんですが、コミュニティー全体で企画を作ったりデザインがいろいろなところから派生したものは、「これは売り物じゃない」と言われるケースも多い。基本的には企業側は売りたくてしょうがない状況なんだけど、クリエイターは売り物じゃないと断る話が多々ある」と語っていた。

 ちなみにこのテーマの最後に伊藤氏が「ミクは金儲けのものじゃないって感覚は初期の頃にあったと思う。純粋にネタのような感覚で広がっていく。最初はあまりお金の匂いをさせたくなかったんですが、今はそうしないとなぜか僕らが叩かれてしまう」と語っていたのが印象的だった。

 
後編に続く

前編はこちら↓

ツンデレを英語で伝えるのは難しい - 雪ミクイベントで語られた“創造の未来”(前編)

札幌市のあちこちで展開される初音ミク関連の企画をレポ
雪ミク大特集

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