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メシも炊ける! 三菱アウトランダーPHEVは最大10日間の給電が可能

2019年12月29日 12時00分更新

災害に備える電気自動車の側面

 令和元年を振り返ると、台風15号や19号による被害が記憶に残る。中でも「停電」というライフラインの途絶は、大きな問題として取り上げられていた。そのたびに出てくるのが「動く電池としての電気自動車」だ。先日、三菱自動車はメディア向けに「アウトランダーPHEV」における災害時の優位性に関するデモンストレーションを行なったので、その様子と車両の魅力についてお伝えしたい。

アウトランダーPHEVの前に置かれた炊飯器と電気ポット

 アウトランダーPHEVを一言で言えば「エンジンを搭載した電気自動車のSUV」であり、三菱自動車の看板といえるモデルだ。エンジンを主としてモーターが動力のアシストをする従来のハイブリッド車とは異なり、メインは2基のモーターで駆動し、搭載するエンジンは発電機を動かす、もしくは高速道路でモーターをアシストするというタイプのハイブリッド車である。同社ではこの方式をPHEV(プラグイン・ハイブリッド・エレクトリック・ビーグル)と呼んでいる。よってアウトランダーPHEVには給油口のほかに、充電コネクターが別途用意されている。

三菱自動車「アウトランダーPHEV」

 充電できるのなら、家電が動かせるのでは? とは誰もが考えること。だが、搭載するバッテリー容量やDC/ACコンバーターといった部品の追加、発電機とエンジンの関係などにより、できそうでできない車種は意外と多い。もちろんハイブリッド車の中には、家庭用100VのACインレットを搭載する車種がないわけではないが、エアコンを長時間動かせるモデルはそう多くはない。その中において、元々「電気自動車として大容量バッテリーを搭載し、かつ発電機を搭載」という設計をしている三菱のアウトランダーPHEV、トヨタではプリウスPHVなどが、災害時において「家の電気をまるごと車から」というような使い方が可能なのだ。

アウトランダーPHEVの特徴

 搭載するバッテリー容量は13.8kW/hで、モーターのみで約65kmの走行が可能。これは一般家庭1日分(約10kW/h)の電力消費をまかなえるほどの容量だという。たった1日分か、と思うなかれ。アウトランダーPHEVのガソリンタンク容量は45リットル。エンジンを発電機として充電すると約5リットルのガソリンを消費する。つまり9回フル充電が可能というわけだ。もともとフル充電だった時に停電が発生すれば、最大10日間、一般家庭分の電力が車1台で賄える計算になる。

アウトランダーPHEVを使えば一般家庭において約10日間電力が供給可能

 これは余談になるが、V2H(Vehicle to Home)規格対応機器を接続すると、アウトランダーPHEVの場合、6000Wにまで給電能力が上がるほか、車庫に車がある時は蓄電池として利用すれば、夜間充電した電力を昼間に使って電気代を削減することが可能だ。ただし、設置機器の価格は100万円を超えるが……。

電力復旧までの3日間
アウトランダーPHEVが命をつなぎとめる

 2018年9月6日に北海道胆振地方中東部を震央として発生した地震では、とある家族が電力が復旧するまでの3日間、アウトランダーPHEVが発電する電気で生活。必要に応じて最小限の電力を使っての生活だったとのことだが、当初約80%くらいだった充電とガソリンの残量は、3日後には電池容量は0%になったものの、ガソリン残量は約60%残っていたという。

アウトランダーPHEVで3日間の停電生活を送った家族の例

 また三菱自動車は台風15号の翌日、「動く蓄電池」として被災者支援を実施したという。指揮を執った金子さんによると「停電している千葉県でアウトランダーPHEVが役に立てるのではないかと思い、千葉県の対策本部に電話をしました。ですが、千葉県でも情報を把握しきれていないということで、あらためて連絡を貰うことになったのですが、いくら待っても連絡がなくて。そこで今度は各市町村に電話をしたところ、その中ですぐに反応があった鋸南町から、老人ホームが停電しているという話を聞いて向かうことにしました」とのことだ。

三菱自動車国内営業本部の金子さん

 老人ホームでは、「照明のほか洗濯機や電子レンジ、そして本来は使用を推奨していないが非常時かつ命に直結はしないということで、痰を吸引する医療機器にも給電をしました」という。夏場でエアコンを使わなければ、頻繁に着替える必要が出てくる。その時に洗濯機が使えるのはありがたい話だ。こうした経験は金子さん自身も初めてとのことで「給電をするうちにバッテリーの充電量はほぼ0%になっていくのですが、ガソリンさえあればエンジンで発電をしながら給電できるため、ガソリンさえあれば大丈夫と思えたことがとても心強かった」とPHEVの強みを語る。

2台のアウトランダーPHEVで、電源車が到着するまでの3日間、老人ホームの冷蔵庫や洗濯機、電子レンジなどを稼働したという

 アウトランダーPHEVから家電への給電方法は、インパネにあるAC1500WのスイッチをONにして、フロアコンソールボックス背面とラゲッジルームの2ヵ所にあるアース付きコンセントにプラグを差し込むだけという簡単なもの。特殊な変換器などは必要はなく、自宅で家電を使う時と同じ感覚だ。

センターコンソールに設けられたAC1500Wボタン

後席に設けられたACインレットプラグ

ラゲッジスペースにもACインレットが用意されている

センターコンソールのディスプレーで電力量などがチェックできる

 そこで炊飯器と電気ポット、そして液晶テレビにDVDプレーヤーをつなぎ「テレビを見ながらご飯を炊き、インスタント味噌汁とお茶」という生活を実演してもらった。屋外で炊飯器や電気ポットから湯気がたち、ご飯ができ上がる様子は、普段見たことがないだけに不思議な光景だった。だが被災時は暖かいご飯は何よりのごちそうで、身も心も温まることだろう。そして最新の情報はテレビから。DVDをつなげば、子供が退屈している時にアニメを見せることだってできる。

アウトランダーPHEVで家電を動かしている様子

自動車の電気で炊き込みご飯

炊いたご飯はスタッフと取材陣がおいしくいただきました

 もちろんスマートフォンの充電だってできるし、ドライヤーも動かせる。日常生活でも、車内でドライヤーを使ってヘアースタイルがセットできたら女性にとってもうれしいだろう。しかも、アウトランダーPHEVは移動中でも電気が使えるという。

発電機を搭載したEV車「プラグインハイブリッド」

 スマートフォンが当たり前の時代であるかのように、クルマで家電が使えるのも当たり前、という時代が間もなく来るだろう。それを先取りするアウトランダーPHEV。「SUVだし、電気が使えるし、実はこの車、最強のモテ車なのでは?」などと思いながら、温かい炊き込みご飯をいただいた。

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