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Snapdragon 865をベンチマーク! 855より確実に性能向上、特に機械学習で差が大

2019年12月16日 21時30分更新

ハイエンドのSoC「Snapdragon 865」
ベンチマークで他社との比較をした

 12月3~5日に渡って開催された、クアルコムの「Snapdragon Tech Summit」。ここで発表された製品の1つが、次期フラッグシップモデル向けのSoCとなる「Snapdragon 865」だ。既報のとおり、Snapdragon 865は1世代前にあたるSnapdragon 855比でCPUで25%、GPUで25%の性能向上をはたしている。より大きな進化を遂げたのがDSPやそれに伴う機械学習の処理能力で、1秒間にできる演算回数は15TOPS(15兆回)と、Snapdragon 855の約2倍に達した。

Snapdragon 865を搭載した試作機で、ベンチマークを取った

 では、これらの性能は本当に実現できているのか。Snapdragon Tech Summitの会場で、Snapdragon 865を内蔵した試作機を使ってベンチマークを取ることができた。1世代前のSnapdragon 855を搭載した「Galaxy Note10+」や、競合となるファーウェイの「HUAWEI Kirin 980」を搭載した「HUAWEI P30 Pro」、アップルの「A13 Bionic」を搭載した「iPhone 11」などとの比較を交えつつ、その結果を見ていきたい。

数値にどの程度の差があるのかが分かるよう、別のSoCを搭載した端末とも比較をしている

おなじみ「AnTuTu Benchmark」では
トータルスコアが55万超え!

 まずは「AnTuTu Benchmark(V8.0.5)」の結果から。こちらは、トータルのスコアが55万点を超えた。CPUは約18万、GPUは約21万と、いずれも高い数値を記録している。現行モデルでは、これを超えるスコアの端末は存在しない。Snapdragon 855を搭載したGalaxy Note10+との比較を見ると結果の違いがよくわかる。CPUはクアルコムの公称値である25%を大きく上回っており、GPUは大体25%ほどの差が見て取れる。SoCの違いの影響がないとみられるメモリーについては、ほぼ同スコアだった。こうした結果が、トータルスコアの10万点ほどの違いとして出ているようだ。

AnTuTu Benchmarkでは、Snapdragon 855を10万点近く上回った

CPU、GPUのスコアがトータルスコアの差に影響を与えていることがわかる

 次に、ベンチマークアプリを変えて比較をした。利用したのは「Geekbench 5.0.2」だ。上記と同じように、Galaxy Note10+との比較を以下に掲載する。Snapdragon 865を搭載した試作機は、シングルコアスコアが933、マルチコアスコアが3433だったのに対し、Galaxy Note10+は前者が734、後者が2507。シングルコア、マルチコアともに、Snapdragon 865の性能が上回っていることがわかった。

Geekbenchでも、Snapdragon 855より高い数値を出すことができた

A13 Bionicとの比較では、シングルコアスコアが下回っている。マルチコアスコアはほぼ同じ

 対Galaxy Note10+比では、どちらも25%を超えたスコアの上昇を確認できている。Snapdragon 855とSnapdragon 865では、CPUの最大クロック周波数は同じで、構成も1つのプライムコアを含むオクタコアのbig.LITTLE。一方で、L3キャッシュが2倍に増強されるなど、アーキテクチャの改善が図られている。こうした進化が、ベンチマークのスコアにも反映されたと見ていいだろう。

 同様に、GeekbenchでGPUの性能を測るCOMPUTEスコアも比較した。こちらは、Snapdragon 865の試作機が3165点だったのに対し、Galaxy Note10+が2320。うたい文句の25%以上、スコアが向上していることがわかった。

GPUのスコアも、想定どおりに向上している

iPhone 11との比較は意外な結果

 Geekbenchでは、iPhone 11のスコア比較も実施してみた。まずCPUについては、シングルコアスコアが1328のiPhone 11が圧勝。ただし、マルチコアスコアではわずかな差で逆転されている。GPUは、iPhoneが6326で、Snapdragon 865の2倍程度のスコアになっている。ただしこちらは、iPhone 11がMetal、Snapdragon 865がOpenCLでのスコアで、レンダラーが異なるため、厳密な比較とは言えない点には注意が必要だ。

レンダラーが異なるためか、A13 Bionicには2倍程度の差をつけられてしまった

 CPU、GPUはおおむね公称値程度かそれ以上の性能向上が見込めることがわかったが、AIについてはどうか。ここでは、「AImark」と「AITUTU Benchmark」の2つで、スコアを計測してみた。前者はiPhone 11と、後者はGalaxy Note10+やP30 Proとの比較を実施している。

 まず、AI markでの比較だが、Snapdragon 865は約10万8000点を記録した。これに対し、A13 Bionicを搭載するiPhone 11は5万8000点強。スコアにして、およそ2倍近い差が開いていることがわかる。クアルコムは、基調講演でアップルと見られる「競合A」の数値を挙げつつ、2倍程度の性能差があることを示していたが、AImarkのスコアもそれを裏付ける。15TOPSの演算能力は、伊達ではないというわけだ。

AImarkによるAIの処理能力比較。A13 Bionicのおおよそ2倍で、クアルコムが挙げていた競合他社がアップルであることがわかる

Galaxy Note10+とは2倍の差に

 次に、AITUTUでの結果を掲載していこう。こちらは、まずSnapdragon 855を搭載したGalaxy Note10+との比較を見てほしい。Snapdragon 865の試作機が約46万点なのに対し、Galaxy Note10+は約23万点と、きっちり2倍の差が開いている。Snapdragon 855は7TOPS、同865が15TOPSなため、その差が如実に表れたとみていいだろう。こちらも、Snapdragon 855比で2倍をうたっていたクアルコムの発表どおりと言える。

AITUTUで測定したSnapdragon 855との差は約2倍。こちらも、公称値どおりと言える

HUAWEI P30 Proとは6倍程度と、非常に大きな差が出た

 では、AI処理に特化したNPUを搭載するKirinとの差はどうか。残念ながら、最新のHUAWEI Kirin 990については、日本で発売済みかつGMS(Google Mobile Service)に対応した端末がなかったため、1世代前のHUAWEI Kirin 980を搭載したHUAWEI P30 Proとの比較をしている。結果は以下のとおりで、HUAWEI P30 Proが8万2000点程度だったのに対し、Snapdragon 865は46万点強のスコアをたたき出している。

 両者の差は6倍弱。クアルコムは、ファーウェイとみられる「競合」との比較を基調講演で披露していたが、その際の差は3倍とされていた。おそらく、これはHUAWEI Kirin 990との比較だったのだろう。1世代前のHUAWEI Kirin 980とHUAWEI Kirin 990で2倍程度の差があることを踏まえると、6倍程度の差がついている結果のつじつまは合う。

 いずれの結果も、あくまでベンチマークアプリが出した数値で、実際にそれをどう生かすかは、Snapdragon 865を採用するメーカー次第。実装のされ方によるところはあるものの、SoCとして、Snapdragon 865が高い数値を示していることがわかった。Snapdragon Tech Summitの基調講演では、XiaomiやOPPOといったメーカー幹部が登壇し、同SoCを搭載した端末の投入を表明していたが、こうしたスマホが発売されるのが、今から楽しみだ。

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