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新社長のお披露目ともなった「NetApp Insight 2019」

データファブリックの実績と事例を披露したネットアップ

2019年12月11日 07時00分更新

自らがアーキテクチャを用意した私たちのデータファブリック

 後半の事例パートに登壇したのは、映画会社のドリームワークスのケイト・スワンボーグ氏になる。同氏は、来年に日本で公開される最新作「Abominable(原題)」を例にデータとデジタルの戦略について説明した。

米ドリームワークスアニメーション テクノロジー・コミュニケーションズ アンド ストラテジックアライアンス シニアバイスプレジデント ケイト・スワンボーグ(Kate Swanborg)氏

 ドリームワークスの活動はまさにデジタルデータを制作するという営みだ。Abominableは主人公の女の子がイエティ(雪男?)を故郷に帰してあげるという話なのだが、CGのキャラクターも、ロケーションももちろんゼロから作っている。1つの場面は30億におよぶ木と葉のオブジェクト、12億もの花びらで構成されるという恐ろしく緻密な作品だ。そして24フレーム/1秒なので、90分の作品中は約13万フレームにおよび、ファイル数は5億に達するという。1本の作品を作るのに約4年かかり、しかも最大10本を同時制作するため扱うファイル数は50億になる。「私たちはアニメーションスタジオをして世界的なブランドを確立しているが、舞台裏ではデジタルメーカーだ。大量のデータを制作しており、データがわれわれの製品であり、プロセスである」とスワンボーグ氏は語る。

 経済性とコントロールを両立しつつ、これら膨大なファイルをいつでも取り出せるようにするためには、オンプレミスとパブリッククラウドのハイブリッド環境が必要だった。昨年、ドリームワークスはネットアップと共同でエンジニアチームを組織し、自社のニーズにセキュアで柔軟性の高いデータファブリックを構築した。「ネットアップは25年に渡るデータ制作の要である。最近はデータ管理、データサービス、ハイブリッドクラウドのアプローチが、われわれの将来の戦略にとって重要であることに気づいた」とスワンボーグ氏は語る。

 ドリームワークスのデータファブリックは、複数のシステムとワークフローが組み合わせられた階層構造のサービスだ。FlexCacheによるオンデマンドアクセスを実現した商用レイヤ、ほぼ瞬時のデータリカバリを実現する保護レイヤ、Cloud Insightを用いてアーティストの利用動向を調べる分析レイヤ、そしてエンジニアの手作業を軽減する自動化レイヤから構成されている。「これは私たちのデータファブリック。自分たちでアーキテクチャを用意することが重要だった。これにより、想像のスピードでコンテンツを生み出せる環境が重要だった」とスワンボーグ氏は語り、ネットアップへの高い信頼を聴衆にアピールした。

フラッシュアレイを選んだIDCF、空飛ぶクルマで未来を見せたSkyDrive

 次に国内事例を披露したのはIDCフロンティア 代表取締役社長 鈴木 勝久氏になる。2019年にソフトバンクグループ入りしたIDCフロンティアは、データセンターとクラウド事業を展開している。クラウドサービスに関しては、2009年にマネージド型クラウド、2011年にセルフサービス型クラウド、2014年にはアーキテクチャを刷新した現行の「IDCFクラウド」を提供している。

IDCフロンティア 代表取締役社長 鈴木 勝久氏

 IDCFクラウドのこだわりはパフォーマンスだ。2015年からオールフラッシュを採用し、従来のHDD+フラッシュの構成に比べ約2倍(最大40倍)の性能を実現した。また、SSD搭載のベアメタルサーバーやGPUクラウドも国内でいち早く提供した。

 このパワフルさに磨きをかけるため、2年前にシステム刷新を進め、ゼロから製品選定とテストを重ねた。この結果、採用されたのがオールフラッシュアレイの「NetApp AFF A700s」になる。「従来に比べた約3倍のスケール、VM作成も10秒程度で実現できるようになった」と鈴木氏は語る。

 最後の30分は空飛ぶクルマを開発するSkyDrive代表取締役の福澤知浩氏が講演。こちらはユーザー事例というより、データ活用の先進ショーケースという位置づけで、空飛ぶクルマの概要や市場動向、屋外飛行実験の現状、2023年からの商用サービスのイメージなどを披露するものだった。

SkyDrive代表取締役 福澤知浩氏

 「電動」「自動」「垂直離着陸」といった特徴を持つ空飛ぶクルマは、移動によるロスやストレスを軽減する。総重量的に航空機に分類され、ヘリや飛行機と同じく認証のハードルは高いという。MaaSに組み込む予定のUberやドイツのVolocopterをはじめ、世界の多くのプレイヤーが今も開発にしのぎを削っており、法整備も徐々に進んでいるという。

 一方、有志団体CARTIVATORからスタートしたSkyDriveは国内でいち早く空飛ぶクルマの開発を進め、90社以上と協賛および共同開発を進めているという。2018年末には日本初の屋外飛行試験を開始しており、2023年には飛行許可を得やすい海上ルートでの実用化を進めるべく、自治体とのコラボレーションもスタートしている。最後は、商用サービスのイメージ動画を披露し、空飛ぶクルマの可能性をアピールして講演を終えた。空飛ぶクルマは単なるハードウェアではなく、いわゆるMaaSの1コンポーネントとして扱うことが重要で、さまざまなサービスと連携するためにはデータ利活用を実現できるプラットフォームが必要になるという。

 イベントではクラウド、AI、DevOps、アプリケーションモダナイズ、ビジネスなどのカテゴリでネットアップやパートナーの講演などが行なわれた。また、展示会場ではネットアップやパートナーによるソリューション展示、NetApp Kubernetes ServiceやCloud Volumes ONTAPなどのハンズオンも行なわれた。

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