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CPU占有率を下げてゲームプレイも配信もPC1台でこなす

GeForce RTX&新NVENC、OBSで高画質ゲーム配信できるって本当?

2019年03月14日 13時45分更新

新しいNVENCではフレームレートへの影響が少ない

 まずは画質云々より先に、OBSでNVENCを利用することで、ゲームのフレームレートにどの程度の影響が発生するかをチェックする。OBSの新しいNVENCはメインメモリーを経由せずにGPUとVRAMのやり取りだけでエンコード作業を行なえる。つまり、新しいNVENCのほうが負荷が軽くなることが予想できる。

 最初のテストはDirectX 11ベースの「Far Cry New Dawn」を試してみたい。このゲームを選択した理由はベンチマークモードがあり、異なる録画条件での比較がしやすいためだ。ベンチマークを再生し、その模様をOBSでMP4形式で“録画”する。設定は前ページの通り。

 なお、ゲーム内解像度は1920×1080ドット、画質は「最高」に設定した。OBSを起動せず、ベンチマークモードだけを回した時の結果とも比較してみよう。

RTX 2060で「Far Cry New Dawn」を録画した場合のフレームレート。録画設定はCBR 8Mbps。

GTX 1080で「Far Cry New Dawn」を録画した場合のフレームレート。録画設定はCBR 8Mbps。

 NVENCの新旧差は意外と大きく、平均フレームレート比較で4~7fps違ってくる。メインメモリーを経由せずにエンコード処理できる新しいVideo Codek SDKは、かなり効率が良いようだ。新しいNVENCで選択できるLook-aheadはCUDAコアを使うため性能に影響が出ることを予想していたが、今回の実験ではフレームレート上で実感できるほどの数値ではなかった。

 GPUがRTX 2060でもGTX 1080でも、CPUのみ(x264)のエンコード時よりは新しいNVENCを使ったほうがフレームレートが高い、という点も予想通りだ。

 ここで両者の画質を比較してみよう。録画したデータを再生し、なるべく同じシーンで違いがわかる部分を切り出してみた。ただし、動き回るキャラは毎回微妙に動きが違うし、録画スタートを手動で行なう関係上、完璧に同一フレームでの比較にはならない。

 本来なら「FFmpeg」などのツールに同一の動画ソースを変換させて違いを見るのが正確だが、FFmpegの現行バージョン(v4.1.x)はVideo Codek v8.1がベースなので実際のPCゲームタイトルでの比較となった。

【編集注】記事内の画質比較はクリック・タップすると2.5MB以上の大きいサイズで表示します。LTEや3G回線で閲覧されている方はご注意ください。

RTX 2060環境で録画した動画(CBR 8Mbps)の画質比較。左から新NVENC(心理視覚エフェクト+Look-ahead)、新NVENC(心理視覚エフェクト)、旧NVENC、x264 fast、x264 medium。

同じく別のシーンでの比較。

 旧NVENC(上の比較では中央)では、「WEAPONS」の文字やヘリの機体に書かれている文字の輪郭が眠く、ヘリの機体のグラデーションにブロックノイズが出ている程度で、正直なところ新しいNVENCとx264は見分けがつかない。

 NVIDIAが主張するようなわかりやすい差異は見られなかったが、少なくとも旧NVENCよりは画質が改善されている。そして、x264 fastやmediumと同等レベルになった、と言えるだろう。

 ただし、録画した動画のクオリティーに関して言えば、新しいNVENCでLook-aheadを有効にすると、建物から外に出るような書き換わりの激しいシーンでわずかにコマ落ちが確認できた。GPUパワーを使って処理するためだと思われるが、FPS系ゲームでゆっくりフライバイするようなシーンでもLook-aheadは無効が良いようだ。

 続いては録画のビットレートをVBR 40Mbpsにした時のフレームレートを見てみよう。

RTX 2060で「Far Cry New Dawn」を録画した場合のフレームレート。録画設定はVBR 40Mbps。

GTX 1080で「Far Cry New Dawn」を録画した場合のフレームレート。録画設定はVBR 40Mbps。

 GTX 1080のほうが描画性能が高いので最高フレームレートはわりと差がつくが、平均フレームレートはRTX 2060がわずかに下になる程度。フレームレート差から導き出せる負荷の度合いで言えば、新しいNVENCが最も低く、次いで旧NVENC、x264の順となる。また、8Mbpsでも40Mbpsでも、x264を使い1台のPCでプレイと録画を同時に処理させると、60fps以上を維持できなくなる点も共通している。

 VBR 40Mbps時の画質比較もしてみよう。建物の看板のシーンはまったく見分けがつかなかったので、ヘリコプターの機体マーキングまわりだけを比較する。

RTX 2060環境で録画した動画(VBR 40Mbps)の画質比較。左から新NVENC(心理視覚エフェクト+Look-ahead)、新NVENC(心理視覚エフェクト)、旧NVENC、x264 fast、x264 medium。

 このビットレートになるとほぼ見分けることはできない。強いて言えば、旧NVENCではマーキングのシルエットがやや眠いとか、ドア縁の黒い部分のモヤモヤ感が強いかなという気もするが、ほぼ難癖に近いレベルだ。とはいえ、ここまで画質を上げても普通にベンチマークで60fps以上がキープできているのだから、NVENCはx264に比べて効率が良いことは確かだろう。

 では録画中のCPU占有率はどうなっているのだろうか? タスクマネージャーで観察してみた。

RTX 2060でFar Cry New Dawnを新しいNVENC(心理視覚チューニングのみ)を使って録画した時のCPU占有率。Look-aheadを有効にしてもこれと見分けがつかない。

同様に旧NVENCで録画した時のCPU占有率。CPU占有率の傾向は新旧で同程度。

x264 fast(左)とx264 medium(右)の場合は、CPUでエンコードが実行されるため、16基の論理コアがフルパワーに近い状態で回る。画質の良いmediumのほうがCPU占有率がより高くなる。

 x264で高画質録画するためには数年前ならHEDT向けの強力なCPUが必要だったが、ここ2年ほどでメインストリームにも8コア/16スレッド駆動のCPUが降りてきた。そういったCPUを使っているなら、NVENCを使わなくてもCPUパワーでなんとかできるだろう。だが、裏でなにか別の処理が始まったら、x264は非常に危うい状態になることは間違いない。

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