週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

契約ガイドライン策定業務検討会 座長小林茂教授インタビュー

スタートアップの「ものづくりトラブルあるある話」を一掃する契約ガイドラインが凄い

契約ガイドライン策定検討会の様子

契約ガイドライン策定検討会参加メンバーの想い

 最後に、この「ものづくりスタートアップのための契約ガイドライン」を作るにあたって知見やノウハウを提供した検討会の参加メンバーから、このガイドラインへの想いをコメントしていただいた。

伊藤毅氏(東京フレックス法律事務所):契約ガイドラインや契約書フォーマットには、1. トラブルを防止する機能、2. トラブルが起きた際の対応方針を示す機能、3. 発注者と受注者の関係をより良いものとするという3つの機能を有しています。自分としては、特に3の、より一層の協業を促進するという観点を重視して作成してきました。スタートアップ企業とものづくり企業の英知が結集し、日本のものづくりが更なる発展を遂げることを願っています。今回出来上がったガイドラインや契約書フォーマットは常に改変されていくことを前提としたものであるため、何よりも現場の皆様に活用いただき、フィードバックを受け、バージョンアップしていくことが重要と考えています。

内田誠氏(iCraft法律事務所):弁護士としてものづくりに係る仕事を長年やってきましたが、日本の競争力の源泉はものづくりだと信じています。日本が成長していくためには、ものづくりを中心としたイノベーションが大事であるという認識のもと、今回世に出すガイドラインが、ものづくりのイノベーションを起こすきっかけになれば、関わった人間としては大変嬉しいことと思います。

岡田淳氏(森・濱田松本法律事務所):スタートアップにおける試作品製造のような契約の交渉の現場では、十分な費用や時間をかけることができないことが一般的です。しかし、今回作成した契約書フォーマットは、業界の商慣習等を踏まえた上で、多くの法律実務家が知恵を絞って一項目ずつ丁寧に検討しました。日常のルーティンになってしまいがちなこの種の契約について、これだけの時間をかけ、契約書に対して想いを込めることは稀有な出来事であり、その成果物を世の中に公表できることは大変幸せなことと感じます。これまで、各種契約ガイドラインの作成に関わるまでは、「契約ガイドライン」というものがどこまで世の中で広く受け入れられるのか懐疑的な面もありましたが、最近のこの種の取組みに対するポジティブな反響をみていると、まさに実務界のニーズに沿った有意義で画期的な取組みであることを再認識しました。

柿沼太一氏(STORIA法律事務所):これから日本の製造業者がどのように自らを変え、生き残っていくのかを考えたときに、スタートアップと連携し生き残っていくという発想が必要です。そういった発想が世の中に普及するように契約ガイドラインを作ってきました。製造業には、従来からの商慣習があり、変化は少しずつかもしれませんが、自らを変えていくという意思のもとに、スタートアップとの連携が進んでいくのであれば、検討した甲斐があったといえますね。

齊藤友紀氏(メルカリ):今回作成した契約ガイドラインは、現実の実務を追認するようなものではなく、これから起こるべき実務の姿を見据えて契約そのものがどうあるべきかという議論の積上げで出来上がったガイドラインです。経済がめまぐるしく変化する中で、日本の法律家は、今を語る力が優れている一方、あるべき姿を語ることが少ないため、今回の取り組みは非常に有意義だったと感じます。従来の契約に係るガイドラインと比べて、革新的なものが出来たと確信しています。

福岡真之介氏(西村あさひ法律事務所):海外での低コストでの生産が進む中で、日本の製造業は、高度な技術・ノウハウを武器にして、付加価値をつけていくしか生き残りの道はないと思います。本契約ガイドラインは、スタートアップとの連携を念頭に作成したものですが、日本の製造業が、いかに付加価値をつけていくのか、そのモデルになればと考えています。

 そして今回お話を伺った小林教授からは次のようなコメントをいただいた。

 「スタートアップと製造業者がよりよい関係を築いていく段階において、契約書というものは設計図のようなものだと思って取り組んでいただけたらと思います。スタートアップのエンジニアなら、設計は楽しいし、重要だということを理解されていると思いますが、それが契約になるととたんに面倒に感じるかもしれません。しかし、契約はみなさんがやっているソフトウェアやハードウェアと同じくらい重要で、そこをうまく進めることでリスクを最小限にできます。

 今回の契約ガイドラインや契約書フォーマットには検討会に参画頂いた先生方だけでなく、実際の実務に当たる事業者やものづくりスタートアップの成功企業など、多くの方のノウハウが凝縮されているので、ぜひ活用していただければいいなと思っています」

量産化トラブルあるある:量産編

■量産に移ったところ、品質低下や歩留まりの悪化が発現。設計からやり直すことに……。

小林座長のワンポイントコメント
 量産試作の段階ではそれほど数が多くないので、問題が見つからず、後になって出てくることがある。例えば、量産試作では、熟練した人が「これがベストだ」という方法で作っていたのに対して、量産ではスキルレベルの異なる他の人が作業したことで量産試作のレベルに到達しないことがある。その場合、一般的な腕の人が作業しても量産試作レベルをクリアできるよう設計を変更する必要が生じるかもしれない。
 ガイドラインでは、スタートアップが量産の工程や進捗を把握することが重要としている。依頼して契約し、「ではいつまでに納品してください」だけではこうした問題の発見が遅れ、対策も立てられない。クラウドファンディングなどを見ていると、「工場にお金を払ったのに納品されない」というようなことを書いているスタートアップも見受けられるが、あくまで主体になるのはスタートアップ側であり、量産でも問題が発生することを念頭に置いて、工程や進捗を把握する必要がある。

Startup Factory構築事業の成果報告イベントが3/14(木)に決定

スタートアップ、支援者が集まる交流会も同時開催
詳細は下記をご参照ください!

〈スタートアップファクトリー構築事業 成果報告イベント〉

■関連サイト

(提供:環境共創イニシアチブ)

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この特集の記事