「Republic of Gamers」が「Republic of Gamers」ではなかった?
――直近で発表されているGeForce RTX 2060搭載グラフィックボードでは、「ROG Strix」「TURBO」「DUAL」「Phoenix」と、4つのシリーズで製品がリリースされるとうかがっています。改めて、それぞれの位置づけとターゲットについて教えてください。
David ご存知の通り、「ROG Strix」は弊社のグラフィックボードにおける最上位シリーズです。ベストな冷却、Aura SyncによるRGBライティングなど、すべてが揃っているフラッグシップモデルですね。「TURBO」はより特殊なフォームファクターで、いわゆるNVIDIA純正の「Founders Edition」に本体サイズを近づけています。GPUクーラーのファンも外排気ですし、SIなどの省スペースで冷却効果を出すような用途向けと言えます。「DUAL」は、ほかの製品と同様に良好な冷却パフォーマンスを求める方、そしてRGBライティングが好きではない方向けです。「No RGB!」という人(笑)。
――実際、「RGBライティングはいらない」というユーザーのフィードバックはあるんですか?
David ええ、当然あります。RGBの有無はファッションと似たようなものですから、たとえ80%の人が好きでも、20%の人はそうではないし、反対意見は絶対になくなりません。ASUSではそういったところも受け入れて、製品を作っています。
――すみません、話の腰を折ってしまいました。最後に「Phoenix」の解説をお願いします。
David 性能的にはエントリーレベルのシリーズ、という位置づけです。冷却力や機能面ではその他のシリーズに後れを取りますが、なるべくコンパクトで、CPU内蔵GPUよりも快適にPCゲームをプレイしたい人向けですね。
――余談ですが、「ROG Strix」というダブルネームのブランドの位置づけについてお伺いしたいです。Maxwell世代までのグラフィックボードでは、現在の「ROG Strix」にあたる製品でも、単に「Strix」というブランドネームが使われていました。現在はほとんどの場合「ROG」とセットで使われていますが、単純に「ROG Strix」が「Strix」に置き換わったものと考えていいのでしょうか。
David 順を追って説明します。もともと、6~7年ほど前にはStrixというブランドも存在せず、ゲーマー向けにカテゴライズされるのはROGブランドの製品だけでした。しかし、いくつかの製品をリリースしていく過程で、ある時期からROGブランド自体がオーバークロッカー向けにシフトしてしまい、純粋なゲーミング向けとは言えなくなってしまったんですね。この傾向は特にマザーボードにおいて顕著でした。電圧の微調整やオーバークロックなど、機能は多いのですが、本当にゲーマーのためのプロダクトとは言えなかった。そこで、我々は新たなゲーマー向けブランドとしてStrixを立ち上げました。結果的にStrixブランドは成功し、多くのエンドユーザーに愛されています。
――「Republic of Gamers」であるはずの製品がゲーマー向けになっていなかった、というのは興味深いですが、言われてみると確かにそうかもしれません。ただ、ふたつのブランドが最終的に「ROG Strix」へ合流したのは何故でしょう?
David 製品が、「オーバークロッカー向けであり、ゲーミング向けでもある」というところに落ち着いたからですね。現在のROG Strixシリーズは、コアなオーバークロッカーでなくとも「GPU Tweak II」などのユーティリティーで簡単に性能アップが可能ですし、どちら側のユーザーの需要も満たせると考えています。
RTX 2060の大型化とMaxContactの採用経緯とは
――では、個別の製品についてもお聞かせください。まずは1月18日に販売開始された、「ROG-STRIX-RTX2060-O6G-GAMING」についてお伺いしたいと思います。外見の特徴的なデザインに関しては、Pascal世代の製品とよく似ていますが、厚みが増しています。先ほどおっしゃっていた通り、それだけ冷却に気を遣っているということでしょうか。
David その通りで、我々は常に、競合メーカーと比較してもベストなGPUの冷却を実現したいと思っています。今回の「ROG-STRIX-RTX2060-O6G-GAMING」が前世代の「ROG STRIX-GTX1060-O6G-GAMING」と比べて厚くなった理由のひとつに、前世代の製品が現行のMaxContactテクノロジーではなく、従来の「DirectCU III」方式を採用していたことが挙げられます。MaxContactはヒートスプレッダーへの熱伝導性が改善しており、ヒートシンク自体もやや大きいです。加えて先ほども言った通り、GPU自体の発熱が増しているのは大きなポイントです。クーラーの幅に余裕をもたせることで、冷却力を担保しているのですね。
――個人的には、RTX 2060を以前のようなミドルクラスのGPUと捉えているユーザーにとって、「ROG-STRIX-RTX2060-O6G-GAMING」の本体サイズにはかなりインパクトがあると思っています。実際のところ、RTX 2060は前世代のGTX 1060と違い、性能的にはほとんどハイエンドに近いGPUですし、カードが大型化するのは仕方ないとは思うのですが、そのことについてどうお考えですか?
David ASUSではシリーズごとにセグメントを分けているため、現状はその中で製品を選んでもらうのがいいと考えています。我々の考えでは、やはりRTX 2060でベストな冷却を実現できるのはROG Strixシリーズです。3スロットを占有するのが嫌である、あるいはよりコンパクトな製品を求めているのであれば、DUALやPhoenixシリーズが候補に入ってくると思いますね。
――GPUの冷却に関しては、MaxContactテクノロジーが引き続き採用されています。「DirectCU」から冷却方式を変更してやや時間が経ちましたが、ユーザーの立場から言うと、なかなか変化が分かりにくい部分だと思います。御社内のMaxContactの評価はいかがでしょうか。
David まずは、なぜMaxContactを導入したかについて解説したほうがいいでしょう。正直に言って、私はDirectCU方式が今でも良い冷却パフォーマンスを発揮できると考えています。DirectCUで一部のユーザーに指摘されたのは、「複数あるヒートパイプのうち端の1~2本がGPUチップに接触していない」という問題でした。おそらく、GTX 700シリーズのあたりから問題視されるようになったと記憶しています。GPUチップが28nm、16nmとプロセスを微細化していくに従ってどんどん小型化したことで、場合によっては一部のヒートパイプがチップに接触しないという事態が起こるようになったのです。ただし実際のところ、端にあるヒートパイプはGPUに接触しなくても冷却自体に大きな影響はありません。とは言え、ユーザーからの意見は「よくない」というものでした。
――そこで、MaxContactの採用に至ったのですね。
David 「No contact!」と言われたので、そうした指摘を受けない、新しい方式を開発すればいいのではないかと考えました。ヒートスプレッダーに鏡面仕上げの銅素材を採用することにより、非常に熱伝導率が高くなったので、このクーラーには満足しています。RGBライティングと同じように、良いというフィードバックもあれば悪いというフィードバックもあったので、カスタマーの意見が100%一致することはないし、その時々によって変わっていくものだとも感じています。ただし、MaxContactへ移行してからのネガティブなフィードバックはほとんどありません。ヒートスプレッダーの鏡面仕上げのクオリティーに加え、冷却性能にも問題がないからだと思います。
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