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ペルソナを決めるのは誰か? 対話AIの発展に見る人工知能と人類の未来像

対話AIで人類にもたらされる”危うさ”の課題

2018年11月08日 09時00分更新

ペルソナ生成の技術的課題

 現在の対話AIは、対話の内容が限定されており、一般ユーザー目線ではまだまだ技術レベルは未熟である。しかし、今後多くの対話AIが世の中に普及するにつれ、個々の対話AIの差別化要素としてのペルソナに対する注目度は高まると考えている。いちユーザーとして、対話AIが心地よく使えたり、話し相手として楽しかったりした方が、エンゲージメントが高まり、特定の対話AIを選ぶための基準になりえるからである。そのためには、多種多様なペルソナを実現できる技術の発展が期待されている。

 ただし、任意のペルソナを創出するための技術を実現するためには(細かいアルゴリズムとは別に)新たな課題もある。

(1)学習データの整備方法

 既存の対話AIにおける「女子高生」や「若い女性」などといった、大まかな属性のみに基づいたペルソナを作る場合は、ターゲットとする属性の対話ログを集めることにより、データドリブン型のアプローチで対話AIのペルソナを構築することが(ある程度は)できる。しかし、たとえば「30代半ば」「独身の男性」「スポーツ好き」「外交的」など、ペルソナとしての個性を細かく定義し、データドリブン型のアプローチによって当該ペルソナを実現する場合、それぞれの属性を表す学習データをどのように整備するのかという課題がある。

 この方向性に関連するアプローチとして、オルツが開発している“Personal Artificial Intelligence”(以下「P.A.I.」)を紹介する。

 P.A.I.とは、簡単にいうと自分自身の分身としてのAIを実現するというコンセプトである。このコンセプトを実現するための学習データとして、オルツでは分身を実現したいユーザーのあらゆる情報(SNS、メールなどのコミュニケーション履歴、ウェブ閲覧履歴)を学習データとして活用し、発話の内容はもとより、話し方や表情などの細かい表現もあわせて分身のAIに実装させている。

 実際、オルツの米倉CEOは自身のメールやウェブ閲覧履歴などの情報を学習データとして活用することにより、自らの分身となるP.A.I.を実現している(図3参照)。このようなやり方であれば、特定の人物を模擬した任意のペルソナを作ることは可能である。

図3 オルツ社のP.A.I.。米倉CEO(右)の分身となるP.A.I.をディスプレー上で表示している

 しかし、逆にいえば、元ネタとなるペルソナが実在する人物でない限りは、この方法によるペルソナの構築は難しい。たとえば、バーチャルアイドルのような、架空のキャラクタの実データは存在しないため、学習の元となるコミュニケーションログを集めることは難しい。ちょっとした対話のサンプルを用意することはできるかもしれないが、機械学習のアルゴリズムにとって必要な質と量を有する学習データにはならないだろう。

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