週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

「Ethics(倫理)」と「Empathy(共感)」にまつわるAIの課題

SXSW 2019で議論されたAIと人類のあるべき関係性

2019年06月27日 09時00分更新

国内の”知の最前線”から、変革の先の起こり得る未来を伝えるアスキーエキスパート。KDDI総合研究所の帆足啓一郎氏による人工知能についての最新動向をお届けします。

SXSW2019で感じた「AIに対する逆風」

 2019年もさまざまな話題を振りまいたSXSW(サウスバイ・サウスウェスト)。筆者は、日本での認知度がまだ低い時期からSXSWに参加する機会をいただいており、今年で4年連続5回目の参加となった。過去4年間は一貫してAIを調査の主目的としており、今年もAI関連セッションをひたすら聴講するというスタイルで参加した。その結果、筆者はSXSWのセッションを通して、これまでなかった「AIに対する逆風」を感じた。

 本記事では、SXSWでのAIに関連する2つのキーワードを中心に聴講したセッションの内容をまとめ、今後のAIのあるべき姿についての所感を示す。

キーワードは「Ethics(倫理)」と「Empathy(共感)」

図1:SXSW 2019の日本からの出展“The New Japan Islands”での石黒浩氏と落合陽一氏の対談のひとコマ(筆者撮影)

 今や日本のビジネスパーソンの間でも認知度が高まっているテクノロジーのビッグイベントSXSWが、今年も盛況のうちに開催された。SXSWでの出展の創造性・革新性を評価する賞「SXSW 2019 Creative Experience “Arrow” Awards」の各賞を日本勢がほぼ独占するという快挙を達成するなど、例年以上に日本企業のプレゼンスが高まっていた。

 2018年のSXSWについて振り返った記事では、筆者は「AIブームの終焉」を予測した。したがって、今年のSXSWではそもそもどれほど「AI」が話題になるのか、若干の不安を抱きながらの参加だった。結果的には、今年のSXSWでも「AI」をテーマとしたセッションは数多く企画されており、聴講するセッション選びに困るほどの事態にはなっていなかった。

 しかし、これらのセッションを聴講していくなかで、今年のSXSWにおける「AI」の議論の様子が変わっていることを感じた。具体的には、テクノロジーとしての「AI」に関する言及が劇的に減少し、代わりに2つの非・技術的なキーワードが「AI」の文脈で語られていた。その2つのキーワードは「Ethics(倫理)」と「Empathy(共感)」である。そして、これらのキーワードは、AIがこのままでは人類・社会にとっての脅威になりえるというネガティブな文脈で語られていたことが特徴的だったように思えた。

 以下、筆者が聴講したセッションから特に印象に残ったものについて、「Ethics」と「Empathy」というキーワードと関連付けて紹介する。そのうえで、今年のSXSWにおけるAI関連の議論を総括し、AIを前提とした世界作りに向けて人類が意識すべき課題に関する考えを述べる。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事