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日本の官庁が本気で進める「空白の7年」を取り返すプロジェクトの背景を聞く

日本が空飛ぶクルマを進めるべき 経産省若手官僚が狙う産業革命

社会実装へ向け、安全性を高めていくことが最重要

 日本発の空飛ぶクルマのスタートアップであるSkyDriveは2020年にデモフライトを目指しており、Uberやエアバスは、2023年に商用化すると発表している。しかし、海外の規制当局が2023年までに規制などを整備するとは決定していない。

 いずれも事業者が目標を掲げているだけであり、目標を達成できるかどうかはわからないが、空飛ぶクルマは、IF(いつかの未来)からWhen(いつ)の段階に入っている。当然息の長い取り組みなので、10-20年先の社会実装を見据えて、着実に進めていくことが政府としても念頭にある。

 実用化には、安全性の確保が最も重要だ。故障率は、現行の航空機と同レベルであれば、10億時間に1回以下まで到達させなければならない。安全対策として、飛行可能エリアや脱出装置の開発などは、まだこれからだが、少なくとも危険な段階での飛行が許可されることはないので、その点は安心してよさそうだ。

若手による特命チームで「空の移動革命」プロジェクトが始動

 そもそも官公庁の若手官僚がこうした案件をつくるのは珍しいように思える。どのような経緯で「空の移動革命」のプロジェクトのアイデアが生まれたのか気になるところだ。

 きっかけは、2017年の夏だった。

 「自動車で起きている電動化や自動化のトレンドは、今後すべてのモビリティに生じるのではないか」と考える海老原氏(航空機武器宇宙産業課)の元に、海外の大手航空機メーカーが来訪し、空飛ぶクルマに関する日本の動きを問われた。また、同時期に、ドローンの運航管理システムを担当する別の課室(産業機械課)でも、将来の航空管制への発展可能性を認識していたという。

 海外の動きやドローンの発展に触発され、ヒアリングや調査を進め、空飛ぶクルマの世界動向やポテンシャルに気付いたとのこと。

 ただし、航空機、自動車、ドローンでそれぞれ担当する課が異なり、空飛ぶクルマが該当する業界がなかった。産業構造の変化は、縦割りになってしまっている組織の改変よりもはるかに早い。

 そこで、局長以下の特命チームという形で若手3、4人が集まり、兼業副業のように空いた時間に調査やヒアリングをして、問題意識をクリアにしていった。いわば、省内スタートアップ的に生まれたプロジェクトだ。初めのうちは、実際にこういう動きが本当にあるのか、と各方面から否定的な反応があったが、調査を進めて定期的に省内外に情報共有をしていくうちに反応が変わっていき、後押しをしてくれる雰囲気になったそうだ。

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