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日本の官庁が本気で進める「空白の7年」を取り返すプロジェクトの背景を聞く

日本が空飛ぶクルマを進めるべき 経産省若手官僚が狙う産業革命

国内外の事業者と連携し、移動サービスや航空管制システムの構築を進める

Voom

 空飛ぶクルマの機体開発以外では、機体を使った移動サービスや、航空管制システムの構築など課題もまだまだある。Uberは、NASAと連携して管制システムの開発を進めており、日本でもドローンの運航管理システムの延長として開発していく可能性がある。

 機体を使ったサービスとしては、先日発表されたヤマトホールディングスとベルヘリコプターの「空飛ぶ輸送」のように、物流サービスは比較的早く実現すると考えられる。また、ヘリコプターの移動サービスの業界では、従来のチャーター(貸し切り)から、安価なライドシェアサービスが始まっている。

 エアバスが出資するVoomは、空港から都市部まで、車で2時間のところを15分でつなぐといった、空をうまく使ったサービスを考える事業者が徐々に増えている。官民協議会では、こうした事業者の動きも踏まえ、具体的な構想を立てていく、とのこと。

 また、どんなときに空の移動を使うのか、といった顧客のニーズは、既存のヘリコプターの利用サービスからヒントが得られる。鉄道やバスでは、現在どのような人たちが、どのように移動をしているのか。これらの情報と、将来的な都市交通のありかたを掛け合わせることで、最適な移動、空をどう活用するべきかが見えてくる。

垂直離着陸機(VTOL機)

 制度的な面で、「空飛ぶクルマ」は、電動・垂直離着陸型・無操縦者の航空機と定義され、航空機としての規制対象になる。自動車メーカーが参入する余地は十分にあるが、このような観点から航空機の規制にくわしい事業者が有利な面もある。世界の例を見ると、一業界ではなく、自動車、航空機、ドローン、Uberのようなプラットフォーマーまで各業界から参入している。一社単独というよりも、各業界の垣根を越えて連携し、それぞれの長所を持ち寄って取り組むことになるだろう。

 制度は本来、政府が先回りして整備するのではなく、事業者のビジョンやニーズに突き動かされて、制度整備をしていくのが望ましい。「現状の制度に捉われ過ぎず、社会に意味のある新しいサービスの将来構想や技術開発の見通しをどんどん提案してきてほしい。それによって、必要な技術分野の開発支援や社会に受け入れられる制度を整合的に進めていくことができる」と海老原氏は語る。

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