作成済みの仮想空間・映像空間に入り込む「VR」
VRは、「Virtual Reality」の略称で、「仮想現実」と訳される。VRは、あらかじめ作成された仮想空間や映像空間内に人が入り込んで活動するものといえるだろう。ARと異なり、現実の世界からは隔離されていることが特徴で、日本ではエンターテインメント系アトラクション、ゲーム用途での利用が活発だ。ソニー・インタラクティブエンタテインメント「PlayStation VR」(PSVR)やHTC「HTC Vive」、Oculus「Oculus Rift」などといったヘッドマウントディスプレイ(HMD)製品が登場している。よほどVRに興味がないかぎり、PSVRや何らかのアトラクションを真っ先に思いつくという方は少なくないだろう。
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ARが現実の世界を“舞台”とすることに対し、VRのベースは映像といえるだろう。HMD型デバイスを装着すると、現実の風景はまったく見えず、CGなどの作られた映像が表示される。VRの世界では、上下左右全体を映像がカバーしており、現実のように周囲を見渡すこともできるが、あくまで用意された映像を表示している。また、VRデバイスはあくまでディスプレイの一種として利用され、デバイス単体で動作する例は数少ない。AR対応の「MOVERIO BT-300」や後述のMRデバイス「Microsoft HoloLens」と違い、PCや家庭用ゲーム機など何らかのコンピューター機器に接続して利用するスタイルが一般的だ。
マイクロソフトが唱えるMR(Mixed Reality、複合現実)とは?
マイクロソフトが唱えているMRは、Mixed Realityを略したもので、「複合現実」と訳される。具体的な製品は「Microsoft HoloLens」にあたる。
Microsoft HoloLensの個人開発者向けのバージョン「Development Edition」は、直販価格33万3800円(税込)、またエンタープライズ向けの「Commercial Suite」は55万5800円(税込)となっており、何らかの研究や業務で採用される例が多い。HMD本体内にCPUやGPUに加えて、マイクロソフト独自の“ホログラフィック・プロセッシング・ユニット”(HPU)が内蔵されており、HoloLens単体で動作する(OSとしてはWindows 10採用)。ディスプレイ部分は透過型となっており、実際の景色を背景にCGを重ね合わせて表示することで、MRを実現している。
またHoloLensは、4つの周辺認識カメラ、慣性計測ユニット(IMU)などを搭載している。これらを活かす形で、視線やジェスチャーの検知、デバイスの移動量検知、CGオブジェクトなどを認識する機能を利用でき、現実世界を背景にして表示したCGに対しユーザーが回り込んで反対側からのぞき込むといったことが行える。現実世界をベースとすることからARの一種として捉える方、CGに対して触る・動かすというユーザー動作が可能なことからVRの一種と捉える方のどちらも存在する。マイクロソフト自身は、ARおよびVRより進んだ概念としてMRを主張している。
「Windows Mixed Reality」対応ヘッドマウントディスプレイ(HMD)
「Windows Mixed Reality」は、もともと「Windows Holographic」と呼んでいたAPI群、プラットフォーム名を改名したもの。Windows Mixed Reality対応HMD(以下、Windows MR)とは、加速度センサー、ジャイロセンサーなどの各種センサー、コントローラー検知用のトラッキングカメラと密閉型ディスプレイを組み合わせたVR用HMD同様のデバイスで、Windows搭載PCと接続して使用する。HoloLensとは違い、VR用途や360度動画再生のみで利用可能となっている。その代表例としてはPCメーカー各社の「Windows Mixed Realityヘッドセット」が挙げられる。デル「Dell Visor with Controllers VRP100」、日本HP「HP Windows Mixed Reality Headset」、富士通『「Windows Mixed Reality」対応ヘッドセット』などがある。
AR、VR関連技術の総称として登場したXR - 仕様策定が進むAR/VR標準化規格「OpenXR」
XR(またはxR)は、X Reality、Extended Realityの略称とされており、具体的な技術を指す単語ではなく、ARおよびVRなど関連技術の総称として登場した。AR、VR、MRに加えて、Cinematic Reality(CR)、SR(Substitutional Reality)なども登場し、各テクノロジーの垣根が取り払われる傾向にあることから、個別の定義にこだわらず“新たな現実”を確立するテクノロジー一般を指すものとして利用されている。
このXR関連の動きで大きなものは、Khronos Groupの元で策定作業が進められているAR/VR標準化規格「OpenXR」がある(2018年公開予定)。この策定には、AMD、ARM、Google、インテル、マイクロソフト、NVIDIA、Unity、エピックゲームズ(Unreal Engine)などが参加しており、OSVR(Open Source Virtual Reality)を推進しているSensicsもこの策定に参加している点がポイントだ。
2017年12月、Sensicsは米エプソンと協業し、Github上でOSVRライブラリーに含む形で「MOVERIO BT-300」用デバイスプラグインを公開しており、「MOVERIO Apps Market」でもVRデモの「OSVR VR Demos」、ARデモの「OSVR AR Demo」の2本を配布している。OSVRが対応したことで、「OpenXR」の登場とともに「MOVERIO BT-300」で利用できるARアプリやVRアプリが増える可能性があり、MOVERIOユーザーやMOVERIOが気になっている方は、OSVRおよびOpenXRの動向に注目すべきといえるのだ。
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