目を覆いたくなるようなかなりキツイ落下試験
続いて、落下試験を実演してもらった。最初にセットされたのはVAIO Phone。180cmの高さから落として、きちんと動作するのかチェックするという。これは、耳に当てた状態で落とすことを想定してとのこと。かなり試験を繰り返すため、さすがに外観的は傷だらけになるが、中身が大丈夫であることが重要なところ。落とし方もさまざまな方向から実行し、たとえガラスが割れたとしても飛散しないことを確認。利用者が怪我をしないよう配慮しているそうだ。
ノートPCの場合は90cmの高さから落下テストを行っている。これは、ワキに抱えている状態を想定。こちらも色んな角度から落としている。角から落とすとさすがにくぼむが、最悪データだけは取り出せるように確保しているという。
「弊社は、落下させる床に鉄板を使っています。他社さんでは板の場合もあるようですが、それでは甘いというのが弊社の考えで、一番硬い鉄板でやっています。また、コンクリートやビニールタイルなどでも試験しています」(海口さん)。もし壊れたときも、設計にちゃんと見てもらって、どこが壊れたのか確認し、改善していくそうだ。
お尻に入れて座っても壊れない圧力試験
製品の一部や全体に力をかけて、壊れるかどうかを試すのが圧力試験だ。まず見せていただいたのが、VAIO Phoneのテスト。製品の中央1点に荷重をかけて、耐えられるかをチェックする。これはポケットに入れたときを想定してやっているそうだ。
「何キロでやっているかは秘密ですが、CDケースが割れるぐらいの荷重はかけています。5回繰り返して壊れないことが前提で、基本的には曲がってもダメです」(海口さん)。スマホの場合は、ジーパンのポケットに入れて、尻圧で壊れるケースもあるが、それに耐えられるように設計しているとのことだ。
ノートPCでも同様のことをやっており、指で押した一点集中や手のひらで押した面押しでの試験がある。指先を想定したときは、先端が柔らかいものにしているが、堅い板みたいなもので、広い面をぐっと押し込むこともやっており、さまざまな持ち方を想定して圧をかけているという。
さらに、液晶部分も面で押したり、液晶を閉じたときにペンを挟んだことを想定しての圧力試験も行なっているそうだ。「これは一番痛い試験ですね。オフィスでバインダーのように紙とボールルペンを一緒に挟んで持ち運んだり、なかには、マウスを挟んでカバンの中へしまった人もいるそうです。そんな行為でも耐えられる製品を作っていくことが、メーカーの宿命だと思っています」(海口さん)。パソコンって昔に比べれば確かに壊れにくくなってきたと思うが、メーカーの努力による賜物だったのだ。
メーカー独自の機器を作成した角衝撃試験
先程と同様、最近はパソコンも一般化して精密機械という意識が薄れたためか、慎重に扱わない人が増えているという。ノートPCを机へ置く際、ガンっと叩きつけたりするケースもあり、それに耐えられるようにオリジナルの試験機を作ったそうだ。
この機械は5cmの高さから角部分を落下させて、壊れるかどうかチェックするもの。各角を5000回試験し、どのくらいの圧力がかかっているかは、感圧紙を使って調べている。色見本からすると、10キロから50キロぐらいかかっていて、意外と厳しく設計の人にはいやがれる試験だそうだ。
「HDD内蔵の製品も試験していて、リード動作時の試験はやっています。さすがにライト動作時は、HDD自体の規格を超えてしまうので、試験していません」(海口さん)。
机の上で動かしても大丈夫か摩耗を試験
机の上で、ノートPCを動かして、底面のゴムが剥がれたり、溶けたり、変形したりしないか、こする試験を行なっている。一番滑りにくいマットの上で行ない、キー入力時を想定し、手のひらを乗せた重さとして3kgの鉄アレイを載せて、2500回動かしている。
箱のことも気にしている梱包落下試験
ノートPCは、ほとんどが海外で生産され船積みで日本へ届く。その後もトラックに載せられるため、箱に入れられた状態での運搬も考慮しなければならない。ここでは、中身の入った箱を、面や角から落として中身が大丈夫か確認している。
「いまは、ある程度乱暴に扱ってもなかなか壊れません。ただ、コストダウンをするため、極力小さくし輸送費を減らすことを考える必要があります。そのため小さくなっても壊れない工夫がされています」(海口さん)。
箱のサイズを小さくすることで、パレット積みにも影響があり、いろいろとノウハウがあるそうで、製品だけでなく、梱包にも品質試験がきちんと行われているのは驚いた。
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