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クラウドソーシング最大の問題点解決を目指すオフィスハック

業務を極限まで最適化!キャスタービズが考えるリモート×ボットの未来

2016年09月09日 07時00分更新

人のインターフェイスとしての力

 「もし人工知能で応答するチャットbotの開発がより進んだとしたら、優秀な人材を集めて行っているキャスタービズの業務も機械化される可能性があるのでは」とたずねると、「人の仕事はなくならない」と中川氏は断言する。

 「なぜなら、人はインターフェイスとして圧倒的に優れている。作業の面では機械に比べると内容も速度も劣るが、リアルな人の価値はなかなかに高い。チャットのコミュニケーションであっても、人が話をしたいと思うのは人に対してだと考えている」(中川氏)

 実際、さまざまな「コミュニケーションbot」の開発が現在進んでおり、botによるチャットサービスも日々増えてきている。反応速度も人よりもbotの方が断然に速い。それでも、人はbotでは満足せずに、人とのコミュニケーションを求めるという。

 「たとえば、定期的に行っている相手との打合せをスケジュール管理するとき、人のアシスタントはいつもの打ち合わせということだけではなく、前後の散らばった情報なども加味したうえでセッティングが行える。現在のコミュニケーションだけに特化したAIではそうは行かない。人としてのインターフェイスとしての価値観はそこに尽きる。これはビジネス上の強み」(中川氏)

 キャスタービズでは、とくにコミュニケーション能力やマネジメント能力に長けているアシスタントスタッフはマネージャーという立場になり、クライアントとのフロントでのやり取りを専門的に担っている。人と人のコミュニケーションを決してないがしろにはしない。

稼働時間比率「1.0」を超えるイノベーションを起こしたい

 いま現在、中川氏が目の前にしている問題は、リモートワーカー1人の雇用で何時間分のクライアントを持てるのかという点だ。

 「キャスターでは『稼働時間比率』という言葉を使っている。1人をリモートで雇った場合、キャスターのために割く時間もあり担当クライアントのためだけに時間を消化するわけではない。つまり、稼働時間比率はだいたい0.8人分に下がってしまう。それを1.2人分に変えたい。どのようにシステムを使えば1の壁を越えられるのか。リモートワークは旧来必要だった移動時間などが削減されており、すでに有利な立場にあると思っている。かつて荷車1台の単位であった馬力という仕事量は、現在ではさまざまなイノベーションを経て、大きく変わっている。現在の”1人力”を2人力、3人力……そして最終的には250人力のような形に持っていくには、今のタイミングがベストだと思っている。せっかくスタートアップを始めたのだから、そのレベルのイノベーションを志向したい」(中川氏)

 単純作業のレベルなら、AIは人間を超える分野も多くなってきた。業務の中で人間の作業分野となっている側と、AIの分野の両方からアプローチして稼働時間比率1.2を目指していくという。

 ただ、このあとにキャスタービズの人材の稼働時間比率が1.2になる日が来たとしても、見た目にはわからない。表からは、仕事が的確で早いことから、優秀な人が雇われているのだろうとしか見えない。

 「リモートワーカーを活用している会社で、本気で生産性に踏み込んでいるところは気付くはず。現在のリモートワーカーの立場が低いのは、生産性が見えないから。だが理論的にはリアルよりもリモートの方が生産性は見えるはず」


目指すものはオフィスタスクの標準化

 現在のクラウドソーシングの一般的な仕組みでは「全体平均値を上げるメリットがない」と中川氏は語っていたが、システムによって業務自体の全体底上げを図る点がキャスタービズでのポイントだろう。

 人的リソースだけを追い求めていくと、結局のところスケールは難しい。どこまでいっても単純に人を増やすだけでは、仕組みとしてのメリットがない。求められる新たなシステムの一方、リモートワーク、オンラインワークだからこそ信用を重んじるというキャスタービズの今後の在り方が興味深い。

 キャスターは8月8日、大和企業投資株式会社を引受先とした総額1億円の資金調達を行ったばかり。この資金を投入して、オートbotによる最適化システム実現を推進している。だが中川氏はこのシステムを閉じたものにする気はない。

 「Googleでの検索エンジンのようなものとして、キャスタービズで使えるようになったら一般に公開する。そのシステムでオフィスタスクの標準化が行なわれるのなら、世の中の役に立つものとして出してみたい」(中川氏)

 ちなみにキャスター社はリモートワークを受注する企業だが、自社業務を行う社員はリモートだけでなく、オフィスに出社する旨を課しているという。

 「当初は社員全員をリモートワークで雇っていたが、そこについては失敗を経験してしまった。広報やエンジニアなどクリエイティビティが求められる担当者とは直接話をしながら、自分の思いを伝えて作り込むのが必要だ」と、中川氏は苦笑しながらリモートワークでの現在の限界を感じたと語った。

●株式会社キャスター
2014年9月設立。オンラインアシスタントサービス「CasterBiz(キャスタービズ)」のサービス運営を手掛ける。
2016年8月に大和企業投資株式会社を引受先とした第三者割当増資より、総額1億円の資金調達を実施。エンジニア・マーケティング担当者の採用を行い、マーケティングとオペレーション効率化システム開発に注力する。
契約、正社員数は2016年9月時点で30名。在宅社員は随時募集中。

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