八百屋ベンチャーとして食農業界の人材排出を活性化させるアグリゲート
月商300万円超のすごい八百屋「旬八青果店」が目指す未来
農産物の価値を見抜いたマッチングビジネスの行方は
アグリゲートのコアにあるのは、農産物の価値を見抜いたマッチングだ。高い感度を持った層への適正な価格帯の商品展開はそもそも誰も提供しなかったものだが、展開地域ではブランディングも含めて強い支持を集めている。
中間マージンやこれまで存在したロスを最適化させた、生産者から小売りまでをつなぐSPAならぬSPF構想には、生産者とのコミュニケーションをはじめ、農業そのものについてのノウハウ蓄積が大きい。スーパーなどでも、これまで廃棄してきた商品の買い取りを行い、別ビジネスに生かす事例や、生産者と売り場をつなぐ試みは始まっているが、旬八青果店のようなターゲットの固定化は異質でマネできないだろう。
現状は日本国内ならではのサービスであり、囲い込んだ顧客に対しての商品クオリティ・目利きの勝負となっているが、社会規模に応じて、一定単価での食糧関連の需要は今後世界的に高まる可能性がある。また、そのようなネットワークを持たない企業からすると、サプライチェーンやメディア、飲食業態のノウハウは利用価値も非常に高く、事実アグリゲートでは小売り以外の販売事業として拡大を狙っている。属人的なノウハウから突破口を見いだした左今氏が、さらに教育事業や農業、メディア運営、IT活用といったなかでどのようにシステムを再生産していくのかが、企業としての価値となるだろう。
現在アグリゲートでは、外注を活用していた物流についても、自社で2トントラックとハイエースを1台ずつ持ち、コスト削減につなげている。さらに、茨城県つくばみらい市に自社農場となる「旬八農場」を運営しており、独自のサプライチェーン構築を続けている。
当然ながら、市場だけでない直接で仕入れている産地との関係も忘れてはならない。「売ってくださいではなく、買います!という姿勢からお話を始めるので、強力な関係を築くことができている」と左今氏。産地や流通との関係、そして実績が、労働集約的で低くなりがちな食農ビジネスの利益率を高い水準へと導いている。
現在、アグリゲートの社員は15名で、アルバイトスタッフも含めると50人体制。「ベンチャー企業としては、離職率は低い。かつてのベンチャーのような吐くほど働いて、経営者が常にビジョンを言い続ける組織というイメージではない。アグリゲートのビジネスを成り立たせるために、食が好き、農家が好きという人を優先している」
6期は赤字を経験したが、コアとなる小売業の成果は取り戻しており、年間での売上げは4億円規模、直近の7期は黒字化となった。黒字にこだわるのも、食農業界の人材排出というビジョンがあるからだ。
この先、2021年までは東京をコアとしたビジネスを続け、売上高40億円規模を想定しているという。その先はユニクロや良品計画と同様に海外も見据えた業態展開を狙う。
「将来的には、売上規模にはこだわらず”川上の商品”を価値化するための業態をどんどん作って行きたい。数十の業態を持ちその結果、売上規模が数千億円となっても、あくまで価値提供にこだわる結果の売上という形にしたい」と左今氏は語る。
●株式会社アグリゲート
2010年1月設立。旬八青果店(八百屋)の企画運営をはじめ、農と食の業界でSPF(speciality store retailer of private label Food)のビジネスモデル構築を目指す。
SMBCアグリファンドから2015年時点で資金調達を実施。(5月30日情報を更新)
社員数は2016年5月現在で15名。仕入れた青果への付加価値をつける社員を募集中。
※お詫びと訂正:記事初出時、旬八青果店の出店1店舗目の表記に誤りがありました。記事を訂正してお詫びします。(2016年5月30日)
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