2020年01月28日08時00分

ガスボンベが85%も小さくなる!? 関西企業の革命的な先端材料

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「NEDOフェスタin関西 2019」開催
スタートアップ4社がピッチを披露

 12月17日と18日の2日間、大阪府大阪市のグランフロント大阪ナレッジキャピタル コングレコンベンションセンターにて「NEDOフェスタin関西 2019」が開催。

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の活用事業者や大学による展示会、研究開発内容のセミナー、成果報告会、有識者による特別講演といったプログラムが実施され、大いに賑わいを見せた。

 NEDOでは、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)との共催で、オープンイノベーションを創出することを目的としたピッチイベントを、神奈川県川崎市のK-NICにて定期的に開催している。今回は、「JOICセミナー・ドリームピッチ」と題し、関西圏に拠点を置く企業がイベント内でピッチを行なった。本稿では、その模様をお届けする。

 登壇企業は、株式会社エマオス京都、株式会社FLOSFIA、株式会社ケミカルゲート、株式会社Atomisの4社。テーマは「最先端材料技術」だ。

高分子多抗体の可能性を追究
株式会社エマオス京都

株式会社エマオス京都 石塚 紀生氏

 株式会社エマオス京都は、マイクロメートルサイズの貫通型細孔と骨格が連続的につながった共連続構造の「高分子多抗体(ポリマーモノリス)」の研究・開発を手がける。

 同社のポリマーモノリスを拡大すると、一見、スポンジの拡大写真のように見える。しかし、空間は「穴」ではなく、表面から表面へと貫通した「孔」の形式をとり、すべての空間と骨格がつながった構造だ。

 主に、液体クロマトグラフィー用(混合材料を、含まれる物質ごとの性質を利用して分離させ、目的の物質を取り出す際などに利用する方法)のカラム(「ふるい」のような役割を果たす、クロマトグラフィーの核となる部材)や、リアクター、リチウムイオン電池用セパレーターといった用途に向けた開発を重ねている。

 「従来のセパレーターと比較すると、低い電池抵抗で同等のサイクル特性を実現でき、高効率な分離が可能になること、また、同社のポリマーモノリスは熱に強いという特性があり、高温時の信頼性が担保できる点が強み」(同社 石塚 紀生氏)であるとした。

 また、共連続構造が均一なため、デンドライト(結晶化した物質が、カラムに表面に枝状に固着してしまうこと)も防げるという。

 用途として、最初のターゲットに考えているのは、医薬品の製造現場。医薬品の製造コストは、3分の2ほどが、材料の分離、精製過程になるという。高効率なカラムを使用することで、時間もコストも削減でき、将来の医薬品の製造現場に革命を起こす可能性がある。

酸化ガリウムでエネルギーを低コスト化
株式会社FLOSFIA

株式会社FLOSFIA 営業部長 井川 拓人氏

 株式会社FLOSFIAは、京都大学で開発された「ミストCVD法」を独自に改良。「α型酸化ガリウム薄膜」の形成に成功し、これを利用したビジネス展開を目指している。

 想定している用途は、主にパワーデバイス(電気の交流と直流を切り替えるインバーターやコンバーター)の材料。現在、インバーターやコンバーターの材料としては、シリコンが使われることが一般的だが、同社の開発した材料を用いることで、小型化、低コスト化、またエネルギーの低損失化が可能になるという。

 現在は、PCメーカーや周辺機器メーカーと連携し、ACアダプターなどの商品化に向けた協業や共同研究を進めているとのこと。同社によれば、パワーデバイス市場は年々、伸張傾向にあり、今後も拡大が続いていく見込み。「既存のパワーデバイスの置き換えを図りつつ、新規分野での成長も目指したい」(営業部長 井川 拓人氏)構えだ。

負熱膨張微粒子で熱膨張を制御
株式会社ケミカルゲート

株式会社ケミカルゲート 山田 展也氏

 株式会社ケミカルゲートでは、負熱膨張微粒子「CG-NiTE」を開発。多くの物質は、熱を加えると、かならず「熱膨張」を起こす。精密機器などの分野では、わずかな収差が全体の設計に影響し、理想の設計ができず、妥協点を見つけるということも多いようだ。

 CG-NiTEを用いることで、物質の熱膨張が制限できれば、物質の特性上、これまでは実現できなかった設計が可能になる。同社では、CG-NiTEは幅広い産業に適用可能であるとし、「不可能を可能にできる」と話した。

 CG-NiTEは複数の金属の酸化物で構成され、科学的には非常に安定した物質であり、環境への害もないとしている。熱を加えると縮むという性質を持つため、製造段階で部材と混合すれば、物質がもともと持っている膨張性を打ち消す作用を発揮する。

 なお同社は、開発にあたって、「微粒子高速製造」の特許を、福井大学から取得している。「競合他社では実現し得ない製造ノウハウ」(同社 山田 展也氏)であるとし、この分野でのパイオニアを目指す姿勢を見せた。

京都大学発の新素材が切り拓く未来
株式会社Atomis

株式会社Atomis 代表取締役CEO 浅利 大介氏

 株式会社Atomisも、京都大学の研究過程で生まれた材料のビジネス展開を目指す企業だ。

 その材料とは「多孔性配位高分子PCP/MOF」。金属イオンと有機物の配位結合を利用した多孔性構造を形成し、錯体化学を基盤とする材料だ。金属イオンと、金属イオンw連結する架橋性の有機配位子を組み合わせることで、内部に細孔を持つ結晶性の高分子構造をとる。

 同社では、この技術を応用することで、高圧ガス容器「CubiTan」や、人体に無害な医療用材料「bioPCP」を開発している。

 高圧ガス容器「CubiTan」は、多抗性配位高分子PCP/MOFの持つ優れたガス圧縮性能を利用したもので、「従来のガス容器と比較すると、容量や内圧を同等に保てるにもかかわらず、容積は大幅に縮小できる」(代表取締役CEO 浅利 大介氏)という。

 普及が進めば、ガスメーカーの輸送過程や効率、また消費者目線では、使用時の取り回しにも、大きな変革を起こす可能性がある。

シリコンバレー発ベンチャーキャピタルのディレクターが語る
オープンイノベーションの課題と解決策

500 StartupsのDirector, Innovation and PartnershipsであるThomas Jeng氏

 同会場では、500 StartupsのThomas Jeng(トーマス・ジェング)氏による講演も披露された。

 「オープンイノベーションに取り組むためには、大企業の担当者が、リスクを取る覚悟も必要。みんなが、膨大な資金を投入して失敗に終わることを恐れると、オープンイノベーションは進まない。

 大企業側は、戦略を立ち上げる際に『自分たちがスタートアップにどういう価値を提供できるのか』という目線を持つことが重要」と話した。

 また、「スタートアップの1日は、大企業の1週間や1ヶ月に相当。アメリカでは、2日でNDAを結び、すぐにPOCをはじめるのも普通」と、スタートアップ企業の環境にも言及。

 オープンイノベーションを加速させるためには、「早くはじめる」「小さく回す」という姿勢で、スピード感のある連携をとることが必要であると述べた。

 この日のピッチ、講演に集まったのは、各スタートアップ企業の関係者や、大企業がわのスタートアップ事業担当者が中心。終了後には、名刺交換会も実施され、参加者のほとんど全員が、会場の誰かしらと名刺を交換しているというシーンも見られた。この会から、次世代のテクノロジーに向けた歩みが始まっていたかもしれない。

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