2018年08月07日09時00分

働き方改革の成功の鍵は「何を」使うかでなく、「どのように」使うか

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 2018年7月9日、モバイルワークオフィス「ちょくちょく...」を運営するザイマックスの主催により、「ちょくちょく... 会員企業 公開座談会 第2弾~女性の働き方×ワークプレイス~」が開催された。「ちょくちょく... 」の導入企業である日立ソリューションズ、リクルートコミュニケーションズ、リコーの3社からは、働き方改革の担当者と実際にテレワークを実践しているワーママ、ワーパパが参加。テレワーク導入の苦労や効果など、実体験に基づいた説得力のある話を聞くことができた。

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ザイマックスオフィスで行なわれたイベント

 「ちょくちょく...」とは、法人向けにモバイルワークオフィスを提供するサービスだ。テレワークを行なう社員のためのサテライトオフィスや外出の多い営業マンたちが外出の間に活用するワークスペースなど幅広い用途で利用されている。キッズスペース付きの施設の提供も開始し、柔軟な働き方を望む子育て中の社員からの支持を得ている。今回登壇した3社の中でも、「ちょくちょく...」の存在が子育て社員の強い味方になっているようだ。

テレワークの導入は20%未満。固定概念の払拭が課題

 まずは、「データからひも解く、女性社員の働き方の実態大公開」と題して、総務省・ザイマックス不動産総合研究所のもつ数値データを元に、テレワークの実態に迫った。

 総務省ではテレワークを導入している企業は13.9%、ザイマックス不動産研究所の首都圏オフィスワーカー調査では普段テレワークを行っているワーカーは8%と発表しており、いずれも10%前後であり、まだまだ広く普及しているとは言えない。

 普及率の伸び悩みの背景には、中小企業での導入が進まないことがある。テレワークを導入しない企業の70%が、その理由を「テレワークに適した仕事がない」と回答している。

 総務省担当者は、「特に中小企業の中には、営業職など人と話しをする仕事はオフィスに出社するべきだという固定概念がまだある」とコメント。ザイマックス担当者も「今回の発表数字とは別に、営業担当が企業に調査したアンケート数値がある。質問を”テレワークを実施しているか”でなく、”社外でメール返信や資料作成を行なうことがあるか”に変えると、数値は16%となった」と答えた。「テレワーク」という言葉の捉え方が定まっていないことも、課題の一つと言えそうだ。

 一方、まだ約10%の普及率だとはいえ、導入した企業の82%が効果を実感している。昨年総務省が公表した「平成28年通信利用同行調査」によると、テレワーク導入企業は、未導入の企業に比べ、一社当たり労働生産性が1.6倍高いことがわかった。

 また、導入目的からテレワークに企業が期待するものの変化が読み取れた。導入目的の一位が、昨年の「生産性の向上」に代わり、「勤務者の移動時間の短縮」となったのだ。都内での移動時間の長さやその間満員電車に耐えることは、労働者の大きなストレスになる。近年の”健康経営”の注目の高まりなどもあり、テレワークには新たな効果が期待されているようだ。

 さらに、テレワークを実施している勤務者を性別年代別にみてみると、女性では35歳~39歳が他の年代の2倍以上の実施状況であり、ここから育児世代のテレワーク活用が推測できる。特に、低学年の子供を持つ人はテレワーク実施率や3rdプレイスオフィスの利用率が高くなっていることがわかった。育児世代の労働者は、従来の固定化された働き方でなく、柔軟な働き方を求めているようだ。

 次のテーマでは、そんな育児世代のテレワーク事情について、座談会の中で探っていく。

子育て社員にとって、サテライトオフィスの利用方法は無限大

 今回の座談会には登壇企業である3社から、実際に「ちょくちょく...」を利用したテレワークを実践している社員の方々が参加。

 日立ソリューションズのワーママ社員は、「ちょくちょく...」の活用によって、通勤時間が削減され、働き方を改善できたという。普段は子供を保育園に預けているという彼女。子供の体調が悪い時には、保育園に送り届けた後、近くのサテライトオフィスで仕事をしているという。これなら、保育園からの急な呼び出しにも対応できる。また、テレワーク解禁前はお迎えの時間に制限され参加できない会議もあったが、現在は「ちょくちょく... 」の個室を借りてWeb会議によって参加をすることができている。子供を保育園に預けることができても、子育てと仕事の両立は簡単ではない。しかし、時間や場所の選択肢が増えれば、自分の意欲に制限をかけずに仕事に向き合うことができるようになる。

 リクルートコミュニケーションズで働くワーパパは、専業主婦である妻が体調不良の際などに、キッズスペースを併設しているオフィスを活用しているという。「自分が仕事をしながら、子供が遊んでいる姿を見れるのは楽しい。通勤時間や昼食の時間を、子供と過ごせるので、距離が近くなったように感じる」と、仕事の生産性だけでなく、家族関係も好影響があったようだ。

 リコーは、今年の6月に利用を始めたばかり。担当者は「現在多くの社員が育児支援制度による時短勤務を利用している。テレワークによる通勤時間の削減によって、フルタイムにチャレンジしたい社員の後押しができれば」と、理想とするワークライフバランスの実現に「ちょくちょく...」が貢献することを期待している。

 労働者にとっては、働く時間や場所の制限がないことは、大きなメリットがある。生活や身体の事情や、成果が出しやすい環境は、個人によって異なるものだ。それを自ら最適な形でデザインできれば、個々の生産性も生活への満足度も多いに上がるだろう。

 しかし、個々人に事情が違うからこそ、それをマネジメントする管理者の悩みは尽きない。次のテーマでは、管理者の目線からテレワークの実態に迫っていく。

テレワークを定着させるために重要なキーワードは「公平性」

 日立ソリューションズがテレワークに着手したのは2015年。サテライトオフィスとして「ちょくちょく...」を契約したのは、社員からの要望がきっかけだったそうだ。日立ソリューションズでリモートワークが定着している理由として、ボトムアップの施策に対しトップが積極的に応援し浸透させる際にはトップダウンで進めていくことがあるという。上層部が前向きであれば、現場も活用がしやすい空気が生まれていく。しかし、通勤時間の削減やストレスの軽減はできたが、仕事量に変化がないという課題もあり、それについては別の施策による対策を考えているようだ。日立ソリューションズのように、働き方改革を一つの施策に頼るのではなく、いくつかの方向性の違うアプローチを組み合わることによって、理想的な働き方の実現を目指すことが重要だ。

 また、リクルートコミュニケーションズでは、定量的な仕組みとしての整備だけでなく、利用者や共に働く社員の”気持ち”の面を大切にしたという。担当者は「プロジェクトを進めていくうちに、ワーキングマザーなどテレワークに強いニーズをもつ人は「自分の働き方がどうなるか」ということだけでなく「周囲に迷惑をかけてしまわないか」ということにとてもセンシティブであることに気がつきました」とコメント。同社では、対象者を子育て中かどうかなどの条件で限定せず、全ての人が自律的に働き方を選択できる世界観をめざし、基本的には入社半年以降の全ての従業員としているという。ザイマックス担当者も「テレワーク導入における公平性は、どの企業においても重要」と、強く同意していた。

 以前から在宅勤務制度を導入していたリコーは、今回制度の対象者を広げテレワーク制度として拡大するにあたり”マネジメントワークショップ”を実施。多くの人が柔軟な働き方を選択できる職場では、マネージャーはメンバーが自律的に働けるかなどを判断する必要があり、より深く個人を知ることが大切になる。そのため、これまで注力をしてこなかった1 on 1をしっかりと実行することを決め、そのレクチャーとなるマネージャー向けのワークショップを開催したのだ。さらに社内でテレワークの普及が加速していく中でも、働く場所や時間を柔軟にすることが難しい職種もある。その場合は、全社の仕組みを導入するのではなく、部門内で実現しやすい”働き方改革”を進めているという。こうした地道な設計により、特定の職種の”置いてけぼり感”を無くすことができ、公平性を担保することができるわけだ。

 ユニークで柔軟な働き方といえばベンチャー企業が注目を浴びることが多いが、今回登壇した3つの大企業の話からは、「働き方改革」に真摯に取り組む姿が見えた。

 働き方改革には、ITツールやサテライトオフィスなど、設備投資は欠かせない。しかし、今回の座談会ではそうしたハード面ではなく、いかに文化や空気作りをしていくかが重要だと感じた。企業内の働き方改革担当者は、外部パートナーの知恵を借りるより前に、社員の声にまずは耳を傾けることからスタートすべきかもしれない。

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