2014年01月14日22時01分

新APU『A10-7850K』の内蔵GPUは現役最強クラスだった

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 2014年1月14日、AMDはデスクトップ向けのGPU統合型CPU『AMD Aシリーズ APU』の新モデル3製品を発表しました。先日開催されたCES2014では“Kaveri”という開発コードネームと概要だけが示されていた製品ですが、今回の発表によって『A10-7850K』と『A10-7700K』の2製品の発売が開始されました。初値はA10-7850Kが2万2000円前後、A10-7700Kが2万円前後と、倍率ロックフリーな4コアCPUとしては、インテルのCore i5よりもお得感のある価格設定になっています。

『A10-7850K』

A10-7850K

 今回は最上位の『A10-7850K』を入手できたので、既存のAPUやインテル製CPUと比べどの程度速いのか、ざっくりとテストしてみました。

●Steamroller+GCNの強力なタッグ
 まずは、今回リリースされたKaveri世代のAPUの見どころをチェックしてみます。

・CPUは最新Steamroller世代
 KaveriのCPUコアは、2011年に登場した『Bulldozer』アーキテクチャーの第3世代にあたる『Steamroller』が採用されました。既存のA10-6800Kなど(Richland)に使われている第2世代の『Piledriver』に比べ、整数演算の強化や分岐予測などの改善など、コア自体の処理効率が強化されています。AMDによると演算効率は従来比で2割アップ。また、APU全体の製造プロセスも32nmから28nmにシュリンクされました。

・GPUは『RADEON R7』、DX11.2やMantleにも対応

A10-7850K

 Kaveriの最大の目玉といえるのがGPUの強化。今回の内蔵GPUは『RADEON R7グラフィックス』、つまり現行RADEONと同じ“Graphics Core Next(GCN)”世代の設計で作り直されました。先代Richlandに組み込まれたGPUは、型番こそHD8000番台でしたが内容は『VLIW4』世代、つまりRADEON HD6000シリーズの焼き直しだったので対応DirectXは11止まりでした。しかし今回最新設計で作り直されたことにより、DirectX11.2のほかAMDが推す3D描画用API『Mantle』にも対応できるGPUになりました。

 まだMantle対応ゲームがちーっとも出ていない現状ではピンとこない要素ではありますが、最上位のA10-7850KのSP数は512基と、A10-6800Kの384基に比べ大幅に増えているため、それなりにパワフルな描画が期待できそうです。ちなみにA10-7700KのSP数は384基なので、ゲームをやりたいならA10-7850K一択でしょう。また、デスクトップ用RADEON R7にも搭載されている新サウンド機能『True Audio』や、4K(UHD)などもサポートされています。

・ヘテロジニアスコンピューティングのためのCPU

A10-7850K

 ディープなネタとしては、KaveriではAMD初の“ヘテロジニアス・システム・アーキテクチャー(HSA)”対応のAPUであることです。早い話が、GPGPUのようなGPUを使った汎用処理をもっと使いやすくするために、CPUとGPUの連携をとりやすい設計にした、ということです。

 例えばこれまでのAPUやCPUでは、CPU用のメモリ空間とGPU用のメモリー空間は(たとえメインメモリー上にあったとしても)全く別モノとして扱われていました。GPU側に処理をヘルプして欲しい場合、メインメモリーからグラフィックメモリー側へ作業データを送り、戻ってきた結果をメインメモリー側に送り返す……といった手間が必要でした。

 ところがKaveriではCPUもGPUも“hUMA”という仕組みを通じて対等に全メモリー空間にアクセス可能になりました。データの大移動が不要になるので、GPUを使った処理が効率良くなるどころか、GPUを計算力として勘定してもいいよね?ということで“ヘテロジニアス”と付けているわけです。

 そこでAMDは、Kaveriのコア数を語る際にCPUもGPUも一緒くたにした『Compute Core』というスペック表記をはじめました。A10-7850Kの場合、CPUが4コア、GPUが8コア(SP64基の塊、つまりコンピュートユニット1基を1コアと称しています)、合わせて12コンピュートユニットのAPUです。A10-7700KはSP384基なのでGPUは6コア、つまり10Compute Coreですね。KaveriではこのCompute Coreを自由に使っていろんな処理ができるよ! というのがAMDの主張です。

 もちろんこれが有効なのはGPU支援が効く処理だけなので、OSやアプリの大半の処理はSteamroller世代の4コアCPUにかかっています。ただし、4K動画のデコードや静止画・動画処理では効果が期待できそうです。AMDは『Adobe Photoshop Creative Cloud』の新エフェクト“SMART SHARPEN”フィルターや『LibreOffice』の表計算などで効果があるとしています。

A10-7850K

 これらを踏まえて今回発表されたKaveri世代のAPUのスペックを概観してみます。Richland世代のA10-6800Kと比べると、動作クロックはむしろ低く抑えられているのも今回の新製品のポイントです。CPU/GPUコアの設計が刷新され処理効率が上がりましたが、TDPを最大95Wに収めるためにややクロックを下げた、ということでしょうか。

  A10-7850K A10-7700K A10-6800K
コードネーム Kaveri Kaveri Richland
CPUコア数 4 4 4
GPUコア数 8 6 (6相当)
CPUコアクロック(ターボ時最大) 3.7GHz(4GHz) 3.4GHz(3.8GHz) 4.1GHz(4.4GHz)
GPU SP数 512 384 384
GPUコアクロック 720MHz 720MHz 844MHz
2次キャッシュ 4MB 4MB 4MB
TDP 95W 95W 100W

 

 また、KaveriではPCIエクスプレス3.0にも対応しました。既存のソケットFM2+マザーボードで使えますが、昨年秋から流通しているPCIエクスプレス3.0に対応したソケットFM2+マザーボードで使うのがベストといえるでしょう。

 そろそろA10-7850Kのベンチマークに入りましょう。今回は以下のような環境を準備し、比較対象として1世代前のフラッグシップ『A10-6800K』と、インテル製の『Core i5-4670K』を準備しました。APUの性能をフルに使うには、メモリーはもっと高速なもの(DDR3-2400など)を使うべきですが、機材の関係でDDR3-1600で統一しました。

A10-7850K A10-7850K

●テスト環境 CPU:A10-7850K(3.7GHz)、A10-6800K(4.1GHz)、Core i5-4670K(3.4GHz)、マザー:AsRock『FM2A88X Extreme6』(AMD A88X)、ASUSTeK『GRYPHON Z87』(Intel Z87)、メモリー:Patriot『PSD38G1600KH』(PC12800 DDR3 SDRAM 4GB×2)、グラフィック:CPU内蔵、SSD:インテル『SSD 335』(240GB)、電源:サイズ『GOURIKI3-P-500A』(80PLUS BRONZE、500W)、OS:Windows8.1 Pro(64ビット)

 まずは『CINEBENCH R15』で、CPUの計算力をチェックしてみます。Kaveriはコア自体の処理効率が上がった反面、クロックが下がっているため、それがどういう結果をもたらすのか気になります。

A10-7850K

 マルチコア、シングルコアともに、KaveriはRichland世代のCPUよりスコアーが下がってしまいました。A10-7850Kでは、CPUコアのクロックは定格・ターボ時ともにA10-6800Kよりも400MHz低くなっています。スコアーダウンはこれが原因といえるでしょう。単純なCPUの性能向上だけのためにA10-6800Kから乗り換える必要性は、残念ながらなさそうです。

 CPUコアの計算力だけで見れば、現行のインテル製4コア&K付きであるCore i5-4670Kが勝っています。CPUのパワーが目的なら、Core iファミリーのほうがずっと優れた選択である……という点はこれまでのAMD製のAPUやCPUから変化していません。

 次にGPUの性能を『3DMark』とで比較します。GCNアーキテクチャで生まれ変わったGPUの実力やいかに?

A10-7850K

 A10-7850KのFire Strikeはドライバーが未成熟なためか、画面に少々描画不良があったので参考値とします。しかしそれを差し置いても、APUのGPUパワーは順当に上がっていることが判ります。GPUコアのクロックはCPUコア同様にA10-6800Kよりも低く設定されていますが、SP数が増えたことによる馬力アップのほうが勝っていたようです。

 Core i5-4670Kは描画負荷の軽いCloud Gateではトップに立ちましたが、Fire Strikeでは描画負荷に負け、A10-7850Kに大きく水をあけられています。まだ熟成不足の感もありますが、Kaveriの内蔵GPUはかなり良いものになりました。Mantle対応ゲームが待ち遠しいですね。

 ついでに『ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア』の公式ベンチ(キャラクター編)も回してみました。解像度は1920×1080ドットに統一し、画質を変えて比較します。

A10-7850K

 A10-7850KのGPUの実力は、Core i5やA10-6800Kをしっかり超えてきました。スコアー比はA10-6800Kに比べ5~9%アップと、驚くほど大きくはありませんが、内蔵GPUだけでゲームがしたい人には魅力的なAPUといえるでしょう。

 今度はGPGPUのパフォーマンスをOpenCLベンチ『BaseMark CL』を使って比較します。多彩なGPGPUテストが実行できるベンチソフトですが、今回は柔らかい布の挙動をシミュレーションする“Soft Body”と、動画にリアルタイムでぼかしをかける“Smoothing”のスコアーを比較します(大きいほど高性能)。テスト条件はプリセットの“Optimized”を使用しました。

A10-7850K
A10-7850K

 このテストはCPUとGPUを両方使います。A10-6800KよりもA10-7850Kのほうが結果が良いのは、SP数増加やGPUのアーキテクチャーが更新されたことによるパフォーマンスアップのほかに、HSAによる効率アップも含まれていると考えられます。特に布シミュレーションにおけるスコアー向上が強烈です。

 最後に『Watts Up? PRO』を利用してシステム全体の消費電力を比較します。アイドル時(システム起動5分後)と、高負荷時を比較しますが、高負荷時はCINEBENCH実行中の最高値と、3DMarkの『Fire Strike』デモ実行中の値を比較します。CPUだけを使っているときと、CPUもGPUも使っているときの差に注目しましょう。

A10-7850K

 A10-7850KはアイドルおよびCINEBENCH実行中の消費電力はA10-6800Kよりも減りました。3DMark実行時(同一シーンでの比較)では逆に増えてしまいましたが、A10-6800Kは最高120Wから80W台後半までダイナミックに変化するのに対し、A10-7850Kは90W台をウロウロする感じで安定しています。ここに関してもCINEBENCHと同様にCore i5-4670Kに及ばない、という点は残念なところです。

●まとめ:内蔵GPUの凄さは◎。HSAやMantle対応アプリの充実が待たれる!

 A10-7850Kのベンチを通じKaveriの気になる点を駆け足でチェックしてみましたが「ああ、AMDのAPUだな」と感じられる結果になりました。つまりGPU中心に見ればコスパも良く魅力的ですが、CPUパワーやワットパフォーマンスはCore i5より下。Core i5-4670Kよりも数千円安いので、低価格でゲームをしたい人には良いAPUである、といえるでしょう。

 しかし歯がゆいのはせっかくのHSAやGCNベースのGPUも、対応アプリがほとんど存在しないため、Kaveriの真価がフルに発揮できないこと。一応HSAに関してはLibreOfficeが対応し、演算処理に利用できるそうですが、一般的なアプリが取り入れるにはまだ時間が必要です。もう一方のMantleでゲームが楽しめることですが、これもリリース待ち。Kaveriが真の意味で輝くようになるには、まだまだソフト面の環境整備が必要といえます。

●Catalystも変わった!
 RADEONグラフィックボードユーザーにはおなじみのドライバーとユーティリティーですが、Kaveriにあわせていくつかの新機能が追加されています。1月末リリース予定の“13.35”ではオートアップデートなどのほかに興味深いもののも。
 

A10-7850K

 まずはAPU+GPU搭載時にフレームレートの挙動を安定させる“FRAME-PACING”です。グラフ青がこれまでのCPUとGPUを両搭載したときのフレームレートの動きで、かなり上下しているのがわかりますが、FRAME-PACING的用語のグラフ赤が安定しているのがわかります。そのほかゲーム描画については、RADEON R7とKaveriで95%フレームレートが向上したり、ゲームごとのプロファイルを設定して保存する機能も追加されます。

A10-7850K

 続いて動画クオリティーの向上について。空の青のグラデーション部分に“線”が入って見えてしまう現象などを抑える“CONTOUR REMOVAL”や、細部を強調する“DETAIL ENHANCEMENT”といった処理を行ないます。
 

A10-7850K

 ブルーレイ映像が24フレームに対してディスプレーは60Hzというギャップがあるため、従来はそのギャップを埋めるために同じフレームを反復して表示していましたが、“FLUID MOTION VIDEO”機能によりフレーム間の映像を予測して描画することでより滑らかに表示できるようになるとのこと。

 そのほか、JPEG画像のサムネイル表示を高速化する“JPEG DECODER”や、CPUやGPU、メモリーにPCIエクスプレスなどのシステムをオーバークロックする“OVERDRIVE”なども搭載。グラフィックボード用GPUがグラフィックレンダリング、APU側でHSAを用いて物理演算を行なう“CO-PROCESSING CAPABILITIES”など、性能だけではなくシステム全体を見ると大きく進化しているようです。

●関連サイト
AMD

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