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iPad AirとiPad mini Retina 解消された不満と残された不満 by 石川温

2013年10月23日 21時15分更新

文● 石川温 編集●ガチ鈴木 撮影●Mac People編集部

 アップルが『iPad Air』、『iPad mini Retina』を発表した。

 事前にネットに流れていた情報どおりの進化ではあったが、まさか『iPad Air』という新しい名前になることや、ドコモが取り扱いをしないということにはさすがに驚いてしまった。ドコモは「導入に向けて検討中」と語っており、実際のところは、ドコモショップの多くがiPhoneの取り扱いで手一杯で、受け入れ体制が整っていないという理由もあるとされている。確かに現場が混乱しないような冷静な対処といえば「さすがドコモ、大人だね」と言えるが、裏を返せば「ユーザーのニーズに応えていない」わけで、あまりにドコモが情けない。

 さて、そんななか、今回のアップルのプレゼンには“本気”を感じてしまった。ユーザーのこれまで抱えてきた“不満”をうまいこと解消してきたデバイスを投入してきたからだ。

iPad AirとiPad mini Retina

 まず、iPad改め『iPad Air』。これは触ればすぐに「カルっ」と言いたくなるほど、薄く軽くできている。これまでのiPadはウェブや読書をしているうちに腕が痛くなってくるほど重たいというのが不満だったが(ちょっと大げさか)、iPad Airに関しては、ビックリするぐらい軽くなり、片手でも持ち続けられるほどのサイズに仕上がっている。これまでのiPadは、女性にはとてもオススメできそうにないほど重たかったが、iPad Airであれば、きっとこの記事を読んでくれている淑女たちもよろこんで使ってくれそうだ。狭額縁になり、スッキリとした見た目にもなったし、背面の処理も『iPhone 5s』っぽくなり、iPhoneとiPadをおそろいで持ち歩きたくなるぐらいに仕上がりになっている。

iPad AirとiPad mini Retina

 一方、『iPad mini』に関してはiPadよりも解像度が劣るという“不満”を誰もが予想できた“Retina Display”で解消してきた。

 とにかく文字や写真を見ると実に美しく感じる。実際に本などを読もうとすると、難しい漢字もきっちりと表示してくれるだけでなく、とても見やすい。本体サイズが小さいこともあり、まさに電車のなかで読書をするのに最適なサイズ感。iPadのRetina版に慣れると、iPad miniの画面は見られたモノじゃなかったが、新型iPad miniはこれまでの不満を一気に解消してくれた。しかも、7.9インチながら、Retinaディスプレーを搭載したことにより、iPad Airの264ppiよりも高精細な326ppiというスペックを実現してしまったのに驚きだ。

iPad AirとiPad mini Retina

 アップルはこれまでiPadでタブレットという新たな市場を切り開いてきた立役者といえある。プレスイベントでティム・クックCEOも、自慢げに語っていたが、これまでのアップルの功績は誰も否定できないだろう。アップルがいたからタブレット市場ができたし、iPadがその中心にいたのは間違いない。

 しかし、ここ最近といえば、Googleが『Nexus7』を投入。コストパフォーマンスのよいスペックで、しかもSIMロックフリーとあって、iPadに満足できないユーザー層の気持ちをとらえるのに成功してきた。また、マイクロソフトが『Surface』を発売し、こちらは思い切った価格戦略で、ウインドウズノートPC市場を食いあうカタチでシェアを伸ばしている。

 そんななかアップルも昨年、満を持してiPad miniを投入するも、ディスプレーがRetinaでなかったり、価格設定もあって、ユーザーの満足度は必ずしも高いものではなかった。またiPadはもワクワク感から遠ざかっていたタブレットに成り下がっていた。

 だが、今年のアップルは、iPadに対して本気で取り組んできたように思える。iPad Airでは薄型軽量化、iPad miniは高精細化を実現。 既存ユーザーも納得の進化だし、 新しいタブレット購入で迷っている人への決定打として新製品を投入してきた感がある。ティム・クックCEOが「これでどうだ」と、どや顔していたような気がしていたほどだ。

iPad AirとiPad mini Retina

 今回、iPad Air、iPad miniはRetinaディスプレーだけでなく、A7で64ビット化された。その一方で『Keynote』、『Numbers』、『Pages』などiWorkアプリは64ビット対応に生まれ変わり、iPad Air、iPad miniでの編集や閲覧もサクサクとやりやすくなっている。

 しかも、新たにデバイスを購入したユーザーであれば無料で手に入る。

 このあたりのデバイス、OS、アプリを一体的に開発し、使いやすい環境を同時に提供できるのは垂直統合ならではアップルならでは。こうした面を見ても、アップルはタブレット市場でまだまだリードを築いていけそうな雰囲気を感じる。

iPad AirとiPad mini Retina

 ただひとつ、今回、唯一“不満”が残るとするならば、やはり、『iPhone 5s』で採用された“Touch ID”が非搭載だってことだろう。タブレットこそ、法人市場でのニーズが高く、だからこそ指紋認証が求められているはずなのに。iPhone 5sでの出来が良く、利便性が高いだけに、この“不満”は今後1年引きずることになりそうだ。

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