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ドコモがMNP流出に歯止めをかけた独自サービスと今後の目標

2013年10月28日 17時15分更新

 NTTドコモは25日、2013年度第2四半期の決算を発表した。上期は対前年同期比で減収増益となり、パケット収入や新領域の売上は増加したものの、MNP流出や月々サポートの積み増しなどが影響した。同社の加藤薫社長は、iPhone 5c/sの導入によってMNP流出は改善傾向にあるとしており、通期の営業利益計画8400億円に対しては計画通りとの認識を示している。

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↑登壇したNTTドコモの加藤薫社長。

 同期の営業収益は対前年同期比0.4%減の2兆1990億円、営業利益は同0.4%増の4732億円、四半期純利益は同5.1%増の3004億円、EBITDAマージンは同1.1ポイント増の37.6%、設備投資は同592億円減の3018億円、フリーキャッシュフローは同1431億円増の1993億円だった。なお、設備投資の減少は、前年に相次いだ障害対応のための設備増強がかさんだという特殊要因があったためで、投資を効率化しつつ年間の設備投資は一定規模を確保する。

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↑上期の業績。減収ながら増益を達成した。

 営業収益では、パケット通信料収入が193億円増加し、端末販売収入も371億円増加。販売促進費用を効率化するなど、販売費用が600億円減少したのも功を奏した。dマーケットなどのサービス・コンテンツといった新領域分野を含めた収益も691億円増加している。しかし、月々サポートによる割引の影響が1338億円と大きく、利益を圧迫した。

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↑営業利益では、月々サポートの影響が大きいが、構造改革などの効率化の効果も出ている。

 端末全体の販売数も、前年同期が1184万台だったが、1047万台に減少。これはスマートフォンの販売に注力した結果で、スマホの販売数は644万台から632万台の微減にとどまった。全体の販売比率のうちのスマートフォンは54%から60%に上昇し、パケット収入増加を後押ししている。

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↑スマートフォンの利用者が拡大し、総販売のうち6割がスマートフォンになった。

 新規の契約数は前期並みの342万契約を確保したが、純増数は24万にとどまり、解約率の高止まりとMNP流出の増加が響いた。解約率は、「iPhone 5の発売以降、1年間上昇傾向にある」(加藤社長)状況で、MNPでも第2四半期は39万のマイナスと流出超過となり、苦戦を強いられている。しかし、10月からはドコモもiPhoneを取り扱うため、販売強化や解約率低減の取り組みをさらに強化していく。

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↑高止まりしていた解約率やMNPは改善を目指す。

 スマートフォンの増加に伴い、Xi契約数は1640万に達し、2013年度末の2500万契約の目標に対しては順調に拡大。スマートフォン利用者も2157万契約で、年度末目標の2700万契約に向けて順調。携帯電話利用者の約半数がスマートフォンになっている。

 ARPU(ユーザー一人当たりの平均収入)は、前年同期の5130円から5210円と増加。音声ARPUは190円の減少だったが、パケットARPUが180円増、スマートARPUが90円増となり、減少分を補填し、増加に転じた。ただし、月々サポートの影響を加えると、上期は4600円となり、300円の減少。加藤社長は、月々サポートを除いたARPUを年度末には5250円まで拡大したい考えだ。

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↑ARPUは上昇傾向にある。

 通期目標に向けて進捗は順調とは言え、「上期は芳しい結果ではなかった」と加藤社長。下期は、年間8400億円の利益目標達成に向け、スマートフォンの販売をさらに拡大。コスト削減をさらに強化していく意向だ。

 加藤社長は、「下期は競争環境が大きく変わると想定している」とコメント。各社が同じiPhoneを扱うことで、競争はほかの端末やネットワーク、サービスといった分野に移り、「ドコモの良さをアピールできる本格的な時機が到来する」(同)との認識で、それに向けて4つのポイントで訴求していく考えだ。

 1つめは販売・料金施策で、現在のドコモユーザーに対しては「iPhone買いかえ割」などの施策を、MNPユーザー向けには「ドコモへスイッチ割」などのプランを用意し、既存ユーザーからの乗り換えを含めてサポートする。

 長期利用者向けの買い換え促進策やポイント優遇などの施策も用意し、ドコモ全体の半数以上という「10年以上の長期ユーザーを大切にしたい」(同)としている。こうした販売施策に加え、「ドコモの顔と言うべき」(同)ドコモショップやコールセンターは、「一朝一夕では得られない、ドコモが築き上げてきた価値であり財産」(同)として、ユーザーへの接点として、今後も力を入れていく。

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↑さまざまな料金施策や長期ユーザーへの優遇策。

 iPhone 5c/sの導入では、販売期間がまだ短いこともあり、まだ判断は付かないが、「導入効果は確実に見えている」と加藤社長。販売第1週目は、MNP流出が前年比で33%改善。spモード対応後の販売3週目では同54%改善したということで、流出に多少の歯止めがかかっているようだ。

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↑iPhone効果が出始めており、MNPで転入したユーザーの満足度も高い。

 また、iPhoneでMNPによりドコモを契約したユーザーへのアンケートでは、前キャリアに比べて満足度が高くなったという人が多く、特に通信エリアが良くなったと答えている人が多かった。ネットワークへの強化をさらに進め、競争力を高めていく考えだ。

 iPhoneに加えてAndroidのラインアップも充実させることで差別化を図っていく考えで、幅広いニーズに応えられる端末を用意することで、ユーザーの期待に「応えられる」と加藤社長は自信を見せる。

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↑Androidラインナップも差別化要因として重視する。

 ネットワークに関しては、9月末までに3万7000局の基地局を開局し、年度末には5万局まで拡大。エリアだけでなく、ネットワークの高速化も進め、75Mbps以上の高速通信対応基地局は2万8000局となり、年度末には全体の80%となる4万局まで拡大する。このうち、112.5Mbps対応エリアは9月末で180都市となり、年度末には300都市まで広げる。9月から開始した150Mbps対応基地局は、まだ東名阪の一部だけだが、12月末までに山手線全駅をカバーし、年度末までに500局、15年3月末までには2000局に増やす計画。

 2GHz/800MHz/1.7GHz/1.5GHzという4つの周波数帯域を使った「クアッドバンドLTE」でネットワーク品質の向上を図り、特に混雑する東名阪エリアでは、前年と比較してLTE向けの帯域幅を倍増。15年1月には700MHz帯も加えて混雑解消と高速化を図っていく。

 サービスでは、docomo IDをベースにデバイス・ネットワーク・OS・キャリアがそれぞれフリーになる、という戦略を描く。spモードメールを改善するドコモメールをスタートし、PCやiPhone、他キャリアのユーザーでも利用可能にしていく。

 dマーケットも同様の施策を展開。新たなdfashionやdトラベル、dキッズを含めてiPhone向けにも提供していく。「他社のiPhoneにはない楽しさ便利さを体感していただきたい」と加藤社長はアピール。dマーケットは、上期に270億円の売上を達成。これをさらに拡大していくことが目標だ。

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↑ドコモメールやdマーケットのサービスをiPhoneに対応させ、さらに他キャリアのユーザーにも拡大していく。

 料理教室を運営するABCホールディングスとの資本提携では、学習分野への展開と位置づけ、モバイル環境での学習サービスへの展開、さらにドコモヘルスケアやらでぃっしゅぼーやといったグループ間での連携も図る。

 こうした新領域分野の収入は、上期には3,100億円に達し、年度末には7,000億円、15年度には1兆円規模まで拡大させる。

 ドコモは、「ここ1~2年、MNPで大変苦労しているのは確か」(同)で、その改善が急務だ。iPhoneを導入したものの、取り扱いのドコモショップが、当初は1,050店しかなく、品薄状態も続いている。今月末には、ほぼすべてのドコモショップで取り扱いを開始し、順次在庫も確保していくが、iPhone効果がどこまでMNPの状況改善に繋がるか、今後の動向が注目される。

 主要3キャリアが同じ端末を扱うことで、サービスやネットワークへの注目はさらに高まる。ドコモは、将来的にdocomo IDによって他キャリアのユーザーにサービスを訴求できるようになる。加藤社長は「コンテンツが強みになると思っている」と話し、ドコモサービスのユーザーの裾野を広げ、収益の拡大を図りたい考えだ。

(2013/10/30 22:00追記 初出時、営業収益を営業利益と誤記しておりました。お詫びして訂正致します)

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