2013年09月26日18時30分

Macを買うには土下座が必須!? 電子版我が妻との闘争|Mac

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 MacPeopleにて好評連載中のコラム「我が妻との闘争」。Macを愛し、毎夜ホームページ作成に挑むサラリーマン、呉エイジさん。新製品やOSを買いたい気持ちはやまやまですが、小遣いは月2万、加えてとにかく無駄使いを嫌う奥さまに「Macを卒業しろ」「金食い虫」「ダメ夫」と嫌みを言われる毎日。本作は鬼嫁の迫害に耐えながらMacを愛し続ける男の悲しい記録です!

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 すでに紙版で発売されている1〜4巻と、2009年1月号から2011年6月号までの全30話を収録した第5巻が9月26日に電子書籍で発売されました。ここでは、「第1巻 恐妻夫の忍従編」から、記念すべき1話目「土下座のMac OS」を丸ごと掲載しちゃいます。まずは奥さまの恐妻っぷりをご確認ください!

土下座のMac OS

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 天災は忘れたころにひょっこり訪れた。
 物語は、Macがシステムクラッシュしてしまった翌朝から始まる。

 完全に壊れてしまった我が愛機、LC630(通称キングジョー)はウンともスンともいわない。「常に最強のMac」を目指していた私は、調子に乗ってパソコン雑誌の付録CD-ROMに収録されているソフトを大量にインストールしまくっていたのだ。

 黒い画面を見つめたまま放心しつつ、ダウナー気味に何度か起動ボタンを押してみても、出てくる画面はサッドマックのみ。もはやシステムを再インストールするしか方法はなさそうである。

 実は、キングジョーに付属していたシステムCDを紛失してしまっていた。そのため、CDから起動するには当時販売されていたOS「Mac OS 8」を新たに購入しなければならなかった。

 私は慌てて財布に手を伸ばし、全財産を確認してみる。札入れは見事なぐらいに何もなくスッキリとしており、小銭のほうは缶コーヒーと「うまい棒」を買えばジ・エンドな額であった。鬼の大蔵省の力を借りる以外に、現状を打破する方法はなさそうだ。

 前日の修復作業でほとんど徹夜だった私は眠い目をこすりながら、日曜の朝11時にノロノロと顔を洗っていた。台所で食事の支度をしている嫁に事情を話さなければならないのだが、どうしてもためらいが先に立ってしまう。

 「どのように理由を話せば嫁はわかってくれるだろう……」

 わかってくれるはずがないのは重々承知の上だが、それでも冷たい水を顔に受けながら一心不乱に考えずにはいられない。タイミングを逃せば勝機はない。無言であっても圧倒的な威圧感を与える嫁の背中に、これまで何度お願いするのをためらい、挑戦し、そして敗れてきたことだろう。

 イヤしかし、今はそんなことを言っている場合ではない。愛しいキングジョーのためなのだ。一刻を争う状況なのだ。

 私はこの場を借りて世のダンナ族に聞きたい。食事の用意をしている嫁にお願いをしたら、包丁の動きがピタッと止まったーー。そんなとき、貴方はそれ以上頼みごとができますか?

 「お、おはよ~」
 「よう寝取ったな」(日曜の午前中をムダにしたので、敵はすでに不機嫌である)
 「いや~、Macの調子が悪くなってさぁ~。ほぼ徹夜の作業でフラフラや。こりゃぁ奮発して、新しいソフト買わねばいかんなぁ~」

「永遠に寝とっても別にエエんやで」

 日本憎まれ口選手権があるとすれば、嫁は余裕で優勝することだろう。

 「そ、そないな冷たいこと言わんでもええがな」
 「アンタのパソコンが壊れようがどーしようが、新しいもの買うお金なんて、もうないからなっ!」
 「た、頼む! 一生のお願いだからソフト買ってくれ」

 私は恥も外聞も関係なく、朝の台所で嫁にひれ伏した。一家の主としてはたぶん間違っているのだろうが、自分の誠意を嫁に見せつけるため、一応オデコを床にこすりつけるのも忘れてはいない。

 これくらいのことで新しいOSが買えれば安いモノである。借りに土下座ごときで新しいMacが買えるのだとしたら、私は躊躇せずに頭全部を地中にめり込ませることだろう。

 「アンタ、ええかげんにしときや。1年に何回、一生のお願いがあるんじゃ。意味わかってぬかしとるんか?」
 「今回は無駄金とちゃう。ホンマにMac、死んではるもん。ピクリともせえへんし」

 ここで私は姑息にも、「不慮の事故」を装う手段に出た。実際は機能拡張書類を入れまくった報いなのだが……(起動時には2.5段も機能拡張アイコンが並んでいた)。

 「だから私も忠告したやないの。シロウトが徹夜したって直らへんって」
 「じゃあこうしよう。ボーナスから小遣いの前借りしてくれ」

「そんなもん却下!」(断言!)

 「そ、そんな冷たいこと言うなや。ホームページでクリエイティブなことをするのがホンマに好きなんや。俺の生きがいなんや」

 「ちょっと待ちいや。生きがいって何やねん? 私や子供は生きがいとは違うんか?」
 「そ、そういう意味と違うがな。何でケンカするほうへ、するほうへと持っていくんや。オマエは」

 「パパってひどいでちゅね~」(子供をあやす)
 「ひ、卑怯な(汗)……。子供を使うなや!」

 嫁は私と目を合わそうともせず、子供と遊び続けている。私がじっと我慢して待っていると、沈黙のムードを嫁のほうから打ち破ってきた。

 「そんならまぁ、話だけ聞いたるわ。そのソフトっていくらぐらいするねん。買わへんけどな」
 「2万円くらい……かな」

 「2万! どないな顔して言うとるんじゃ!」

 「意外と安いもんやろ」

 「何言うてるねん。めっちゃ高いがな。2万あったらワレ、紙オムツがどれだけ買えると思うとるんじゃ」

 ちょっと勝負をアセりすぎたか? いきなりの2万円宣告はやはりヤバかった。こういう展開になるのなら、先にニノミヤで5回ローンを勝手に組み、その1回目の金額だけを嫁に提示すればよかった。いわば「怒り先送り戦術」である。

 「なぁ、聞いてくれ。毎日お客さんも増えてるんや。こうしてる間にもホームページ見にきてくれる人がおるかもしれへんのやで」  
 「……」

 「ええか。ものすごーくおいしいレストランがあるとするわな。おいしかった。また行こう。そんでまた行った。閉まってる。何度行っても閉まってる。お前ならどうする?」
 「もう行かへん」

 「なっ。なっ。そうやろ、絶対そうやろ。それとおんなじ理屈や。」
 「それとおんなじってなぁ、アンタ。じゃあ聞くけど、いま『お客』って言うたよなぁ」

 嫁の声のトーンが1オクターブ下がったのは私の気のせいではない。
 「う、うん。毎日来てくれるねん。お客さまは神様やねん」

「そのお客さまはホームページを見てお金でもくれるんかいな。我が家の家計に貢献してくれるんかいな」

 「えっ?」

 「どうせ何もくれへんのやろ? なら家計からお金使ってもムダな話や。一銭も出るかいな」
 「ちょ、ちょっと待って……」

 「もうええやん。この際、卒業しといたら」
 「だからファミコンとかと違うんやから、そないに簡単には……」

 「ってアンタ、ファミコンも卒業してへんやんけ!」

 いま思い出しても涙なくしては語れない奮戦記である……。結局頼み込んでMac OS 8を買ってもらったまではよかったのだが、その代償として過酷な宣告が待っていたのは言うまでもない。1カ月の皿洗いと風呂掃除である(むしろ、これだけで済んでラッキーだったとも言える)。

 その甲斐あってか、無事にシステムは立ち上がり、ホームページも毎日更新できるようになった。家庭人ともなると、何かひとつ買ってもらうのもひと苦労である。

これを読んでいる独身者諸君……
ひとりのときに、やりたいことをやっておこう
と、ひと言いっておきたい。

 第1巻では、いまは懐かしきPowerPC時代の呉さんの愛機が、奥さまからの迫害によって部屋の隅に隅に追いやられていきます。呉さんの夫として、父親としての尊厳は果たして残っているのでしょうか? ぜひ全編お読みください。

 「我が妻との闘争」1〜5巻は、9月26日から 「BOOK☆WALKER」で発売開始。1〜4巻は300円、5巻は800円。iBookstoreやAmazonをはじめ、各電子書籍ストアでの発売は10月10日以降。配信が決まり次第、お知らせいたします。

●関連サイト
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