2013年09月04日17時00分

Windows情報局ななふぉ出張所

Windows 8.1で“RTM”の意味が変わる? 開発者から不満の声も

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 8月27日(米国時間)、米マイクロソフトはWindowsの公式ブログにおいて、Windows8.1の開発が完了したことを発表しました。この記事はWindows担当バイスプレジデントであるAntoine Leblond氏の記事ですが、のちに日本マイクロソフト Windows本部 本部長の藤本恭史氏による日本語のメッセージも公開されています。

Windows 8.1で“RTM”の意味が変わる? 開発者から不満の声も
↑米マイクロソフトのAntoine Leblond氏(BUILD 2013基調講演より)。

 このように開発が完了したバージョンは、従来では“RTM版”と呼ばれていました。これは一般発売(GA)されるパッケージ版と同一のバージョンで、製品のDVDをプレスする際の元データでもあります。

 6月のBUILD 2013におけるプレビュー版の発表から約2ヵ月、ついにWindows8.1が完成したことになりますが、気になる点もあります。それは、開発者や企業向けに先行配布をしないという点です。

■TechNet、MSDNへの提供は10月18日まで“お預け”

 WindowsのRTM版が完成した場合、これまでは最初にOEMパートナー向けに配布され、それから2週間ほどでTechNetやMSDNといったサービスからのダウンロードが可能になるのが通例でした。

 TechNetはIT技術者向け、MSDNは開発者向けという違いはあるものの、いずれも技術情報の提供や、会員向けにマイクロソフト製品を提供するサブスクライバーダウンロードを提供してきました。これらの会員になれば、評価目的や開発目的に限られるものの、マイクロソフト製品を自由にダウンロードすることができます。

 実際にWindows8では、8月1日のRTM発表後、8月15日にはTechNetやMSDNからダウンロードが可能になりました。これによりIT技術者や開発者はいち早く完成版のWindows8を入手し、アプリや周辺機器などの動作検証を行なうことで、10月26日の一般発売に備えることができました。

 しかし今回、TechNetやMSDNの会員がWindows8.1を入手できるのは、一般のコンシューマーユーザーと同じ10月18日であるとLeblond氏は説明しています。さらに、企業ユーザーが中心のボリュームライセンス契約者についても、同じく10月18日の提供になるとしています。

Windows 8.1で“RTM”の意味が変わる? 開発者から不満の声も
↑BUILD 2013で発表されたプレビュー版。現在、TechNetやMSDNから入手できるのはこのプレビュー版のみ。

■技術者や開発者の不満が拡大へ

 この決定に対し、Windows8.1の公式ブログをはじめ、ニュースを伝える各メディアのコメント欄には非難の声が寄せられることになりました。

 たとえば開発者なら、Windows8.1の正式版でアプリの動作確認を行ない、不具合があるようなら対策を施したいはずです。しかしこのままでは、10月18日に開発者がWindows8.1の正式版を入手するまで、それを確認する手段がないことになります。

 万が一アプリの動作に問題があれば、Windows8.1の正式版でアプリを実行した一般ユーザーからの苦情が殺到するでしょう。このような問題をWindows8.1の発売まで“放置”した開発者や開発企業にとって、信用問題にもつながりかねません。

 これに対してマイクロソフトはアプリ開発者に対し、Windows8.1の正式版に備え、プレビュー版を用いてアプリを開発するよう案内する記事を投稿し、火に油を注ぐ格好となりました。

Windows 8.1で“RTM”の意味が変わる? 開発者から不満の声も
↑マイクロソフトはWindows8.1とVisual Studio 2013のプレビュー版を用いた開発を推奨しているが……。

 アプリ開発者だけでなく、顧客向けにWindowsシステムを導入するシステムインテグレーターや、企業内の情報システム管理者にとっても気になるところです。たしかにプレビュー版とRTM版は、アプリに深刻な問題を起こすほど大きな違いがあるとは考えにくいものです。しかし、だからといって影響がないとは断言できません。Windowsシステムを真面目に扱っている技術者であればあるほど、この決定に不安を覚えるでしょう。

 TechNetやMSDNが有料のサービスであること、さらには昨今のWindows 8の“不振”も相まって、マイクロソフトの姿勢に対して疑問の声が続出しているのが現状といってよいでしょう。

■RTMの意味は変わるのか

 マイクロソフトからのレスポンスとして、Brandon LeBlanc氏がブログのコメント欄において、10月18日までに残された時間を使ってWindows8.1のバグ修正や最適化を進め、ユーザー体験を向上させることが狙いであると説明しています。

 “RTM”後も継続的にWindowsをアップデートしていくというのは、なかなか面白い試みです。たとえばWindows8.1を発売直後に購入し、すぐにインストールした場合でも、Windows Updateでパッチが配布されているといったシーンが想像できます。これはパフォーマンスの改善やセキュリティーパッチといった、機能に影響を及ぼさない修正が考えられます。

 また、Windows8.1はWindows8の登場から約1年という短い周期で登場しました。これまで数年おきに大きなバージョンアップをしていたことに比べると、小さなバージョンアップをより短い周期で提供したことになります。そして今後もWindowsはこのペースを維持し、1年おきの継続的なバージョンアップを行なっていくという見方が有力です。

 これにより、“RTM”の意味は従来と異なるものになるかもしれません。Antoine Leblond氏はブログ記事中で、WikipediaにおけるRTMの説明を引き合いに出しながら、これがもはや過去の概念であることに言及しています。

 そういう意味で“RTM”は、もはやソフトウェアの完成を意味する重要なマイルストーンではなく、継続的な進化のための通過点になったのかもしれません。

■開発者の理解を得られるか

 とはいえ、残念ながらこのような考え方は現場の開発者から理解を得られていないように見受けられます。なにより、今後もマイクロソフトがOSの最適化を進めていくことが、開発者向けにRTM版を提供しない理由としては説得力が弱いように感じられます。せっかく盛り上がってきたWindowsストアのアプリ開発者にとって、発売までの2ヵ月弱は思いも寄らない“冷却期間”となり、熱が冷めてしまう恐れもあります。

 これまでマイクロソフトは、スティーブ・バルマー氏の「Developer, Developer, Developer」という名台詞にも代表されるように、開発者を優遇することでWindowsエコシステムを強化してきました。また、Visual StudioとMSDNを中心とした開発環境はほかのプラットフォームより完成度が高く、開発者の“流出”を防ぎつつ、新たに呼び込む効果も果たしてきました。

Windows 8.1で“RTM”の意味が変わる? 開発者から不満の声も
↑これまで開発者を優遇することで支持を得てきたスティーブ・バルマー氏だが、今回はどうなる?

 Windows 8.1で方針転換を行なったマイクロソフトが今後も開発者の支持を得られるのか、非常に気になるところです。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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