2013年07月11日08時30分

誰もが創作・出版する時代。ブックフェアに見る電子出版事情

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出版社はもはや主役ではない!?

 2013年7月3日からビックサイトにて開催された東京国際ブックフェア(関連サイト)。ここ数年、電子出版関連のブースが増え、出版界における紙から電子への流れを象徴していましたが、今年はさらに大きな変化を目の当たりにしました。

 会場のレイアウト図(参考資料)からも分かるとおり、本体であるブックフェアそのものよりも、その周辺の同時開催企画の占める割合が大きくなっています。展示内容も、個人や他業種向けの創作・出版支援のサービスが増えているのです。

 電子出版関連のブースでは、Kindleストアでの自費出版(KDP)を支援するサービスや、EPUB制作から配信までを一体化したソリューションの提案など、従来は企業向けに開発されていたサービスの中にも、個人クリエイターでも利用可能なものがありました。

 「クリエイター」「(編集)プロダクション」「コンテンツ制作・配信ソリューション」の3つをつなげば、出版社が関わらなくても電子出版、場合によってはオンデマンド印刷を利用した紙の出版まで可能になっていることがリアルに感じられました。

 プロ、アマ問わずクリエイターは、作品の品質、出版までのスピード、コスト、金銭的利益など、それぞれの目的に合った最適な方法を選べるようになりました。

誰もが創作・出版する時代。ブックフェアに見る電子出版事情
個人出版に関する講演もあり、大盛況だったボイジャーブース

一般化する創作活動

 出版活動がデジタル技術の支援を受けて個人レベルにまで浸透することで、専業の作家ではない一般の人でも創作し、世の中に出版・発信することが可能になりました。

 特に最近では、ニコニコ動画やYouTube、pixivなどのウェブサイトにおいて、ネット上にある様々なコンテンツを素材とし、そこに自分なりの解釈を加えることで新たなコンテンツを生み出す「二次創作」に注目が集まっています。

 例えば、ボーカロイドの「初音ミク」は、最初は音声ソフトとして発売されましたが、その後、様々なユーザーがそこに音楽性や物語性を加えた作品をネット上に公開することで、キャラクターとして絶大な人気を博すことになりました。

 また漫画家の佐藤秀峰氏は自身の『ブラックジャックによろしく』というマンガ作品の二次利用を自由にしました(関連サイト)。それが出版や広告、その他様々な場所で「素材(ネタ)」として使われることで、『ブラよろ』そのもののさらなる認知拡大にもつながり、また多くのクリエイター(一般含む)の人が新たな作品を生み出す創作の連鎖を生み出しました。

 これらの活動には、創作者と受け手という一方的な関係ではなく、みんなで一緒に作り上げ、盛り上がるというネットカルチャー特有の爆発力が感じられました。

 従来、二次創作を行うためには、原作の創作者(一次創作者)から許諾を得るか、一次創作者が自ら「二次創作の自由を認める許可」を広く発信する必要がありました。しかし、そのためには、複雑な著作権法の仕組みを理解する必要があり、なかなか難しかったのが実状です。

 そのため、従来の二次創作物の出版や配信は、一次創作者と二次創作者とによる「暗黙の了解」の中で行われてきました。

 しかし、今や誰もが簡単に創作・発信できる時代です。一次創作者の中には、進んで二次利用を促すことで、作品のプロモーションやファン獲得につなげようとする人も出てきました。健全な二次創作を推奨することで、結果として原作の利益につながる、という考え方のようです。

 そこで今、著作権の柔軟な運用を試みる創作者を支援する考え方やサービスが出てきています。その代表例としては、世界的なウェブサービスやコンテンツホルダーに採用されているクリエイティブ・コモンズ(関連サイト)などがあります。

 クリエイターの意識や目的も多様化しています。それを受け取るユーザーもまたしかり。ビジネスだけが目的ではありません。創作行為には、もっと自由で多様な動機や目的があります。

 出版社は、クリエイターによって生み出された作品を、広く世の中に発信する役割を担ってきましたが、誰でも簡単に、世界に向けて発信できるようになった今、自らの役割を時代に合わせて柔軟に変化させていくことが期待されているのかもしれません。

 来年のブックフェア(電子出版EXPO含む)で、どんなブースが活況を呈するのか、注目したいところです。

参考図書

誰もが創作・出版する時代。ブックフェアに見る電子出版事情

【書名】
オープン化する創造の時代 著作権を拡張するクリエイティブ・コモンズの方法論

【著者名】
ドミニク・チェン 著

【希望小売価格】
230円(税抜)

【発売日】
2013年6月27日

【内容紹介】
ウィキペディアやYouTube、ボーカロイドの『初音ミク』やマンガ『ブラックジャックによろしく』など、その範囲や方法は違えども、作品の著作権を保持したまま、自由な二次創作/リミックスを広く一般に開放する作者やクリエイターが増えてきている。そこには従来の著作権ビジネスとは異なる、ネット時代の新たな創作文化の台頭が関係している。自由な創作と「著作権」との間にあるジレンマを、前向きに解決する方法として注目されるオープン・ライセンスという考え方。本書には、その代表例「クリエイティブ・コモンズ」の運動に参加する著者による、活動内容の紹介とともに、「新しい自由な文化の可能性についてオープンな場でみんなで考えたい」という読者へのメッセージが込められている。【読了時間 約33分】

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