2013年02月26日23時30分

世界初のスマホ衛星“STRaND-1”が宇宙へ

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 2013年2月25日(日本時間21時31分)、イギリスのサリー大学と、同学発の小型衛星開発企業SSTL(Surrey Satellite Technology Limited)が開発した、世界初のスマホ衛星“STRaND-1”がインドから打ち上げられ、無事に高度785キロメートルの太陽同期軌道に乗ったと発表された。

 Google『Nexus One』を丸ごと積んだ衛星で、その名前のとおり、スマートフォンの能力を宇宙で利用する。

世界初のスマホ衛星“STRaND-1”が宇宙へ
© SSTL/SSC

 スマホ衛星には、スマホとは別にオンボードコンピューターが搭載されており、そちらがまず打ち上げ直後の搭載機器チェックをすべて行なう(スマホのGPS機能は衛星の軌道決定には利用されない)。その後、実験的な部分をNexus Oneが担っていくという。Nexus Oneのカメラは、地球の画像を撮影するミッションにも挑むとのこと。特別に開発されたアプリも複数あり、”お遊び”アプリも積んでいるようだ(詳細はまだ公開されていない)

【2013年2月28日15時50分追記】
“お遊び”アプリはケンブリッジ大学スペースフライト有志による『Scream in Space』。1979年、映画『エイリアン』のキャッチコピーだった「宇宙ではあなたの悲鳴は誰にも聞こえない」を実証するというもの。募集で集めた10秒間の”悲鳴ビデオ”を、STRaND-1衛星搭載のNexus Oneスピーカーで再生すると同時に搭載マイクで録音を行ない、本当に誰にも聞こえないのかどうかを実証しようといもの。

世界初のスマホ衛星“STRaND-1”が宇宙へ

 SSTLは人工衛星開発に民生品のエレクトロニクス製品を利用し、低コスト、短期間の開発を行なう方針を打ち出している企業で、市販製品のスマートフォンを搭載することで、宇宙の放射線環境における信頼性を検証するのが目的だ。また、バッテリー温度が下がり過ぎた場合は、スマートフォン本体を動作させることで温度を上昇させるといった、バッテリーの熱を逆手に取ったユニークな機能も搭載している。

世界初のスマホ衛星“STRaND-1”が宇宙へ
© SSTL/SSC

 また、スマートフォンを使って2つの小型衛星用推進機関のテストなども行なわれる。ひとつはPPT(パルスプラズマスラスタ)と呼ばれるテフロンを推進剤に用いた電気推進システム。もうひとつは水・アルコール混合推進剤を用いた推進機関でWARP DRiVE (Water Alcohol Resistojet Propulsion Deorbit Re-entry Velocity Experiment)と呼ばれる。名前から想像するとこれは、電気で水とアルコールを加熱してガス化、噴射することで推進力を生むレジストジェット推進機関だろう。衛星の運用終了後に衛星がスペースデブリにならないよう、規定よりも大幅に早い段階で地球大気圏に再突入させるのが狙いのようだ。

世界初のスマホ衛星“STRaND-1”が宇宙へ
© SSTL/SSC

 STRaND-1は超小型衛星の規格であるキューブサット 3Uサイズ(30×10×10センチメートル、重量4.3キログラム)。小型衛星を数多く開発してきた英SSTLだが、意外にもキューブサット規格の衛星を打ち上げるのはイギリス初だそうだ。開発費は公表していないが、“ハイエンドファミリーカーよりほんの少し上”ということなので、1000万円もかかっていない模様。

 こうした新しい機能に挑む衛星を、世界中のアマチュア無線局が追跡し、衛星からのデータを受信するようSSTLは呼びかけている。

 今回、スマホ衛星として“世界初”を名乗る根拠についてSSTLは、スマートフォン本体を丸ごと利用していることを理由としている。なぜなら2006年に東京工業大学 松永研究室が開発し、JAXA M-Vロケット8号機で打ち上げられた『Cute-1.7 + APD』が、PDAから回路の一部を利用して衛星に搭載した、いわば先輩に当たるからだ。

 また、ISS(国際宇宙ステーション)にはいくつかのスマホがすでに持ちこまれているため、宇宙に行くスマホとしては世界初ではないという意見もあるが、あくまでISSの中で宇宙飛行士が操作するためのもので、衛星の搭載コンピューターとして利用されているわけではない。実はNASAもスマートフォン搭載衛星を開発中だったようだが、打ち上げはSTRaND-1が先となった。

 今回のSTRaND-1打ち上げについて、SSTLのサー・マーティン・スウィーティング会長は「すばらしい成功」と喜びのコメントを発表している。

 <SSTLってどんな企業?>
    SSTLは、1985年に設立された、英サリー大学発の小型衛星ベンチャー企業としてスタートした会社。現在は欧州防衛大手EADS傘下となっている。大学時代の1981年から2012年10月までに39機の小型衛星を開発し(STRaND-1は40機目)、欧州測位衛星計画GalileoのGIOVE-A衛星も担当している。民生品を衛星開発に利用し、開発期間とコストを短縮するCOTS(商用オフザシェルフ)を開発方針としている。

(2013年2月27日14時45分追記:キューブサット 3Uサイズに誤記がありました。お詫びして訂正いたします。記事は修正済みです)

■関連サイト
Surrey Satellite Technology Ltd(SSTL)
Radio Amateurs asked to collect STRaND-1 telemetry data
Scream in Spaceプロジェクトサイト

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