2013年02月06日13時00分

Spotifyは音楽業界の救い主? ユニバーサル幹部が語るデジタル戦略

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Spotifyは音楽業界の救い主?――Universal Music幹部がSpotify提携によるデジタル戦略を語る

Spotifyは音楽業界の救い主?
↑Universal Music Swedenの事業開発トップ、Niklas Twetman氏。

 音楽ストリーミングサービスのSpotifyが音楽業界を変えつつあるようだ。CDが売れず音楽業界不振のニュースが見出しを飾ったことが記憶に新しいが、4大レコードレーベルであるUniversal Musicのスウェーデン子会社は、Sporifyとの提携により着実にデジタル事業を拡大させていると報告する。「音楽業界が体験した変化は、すべての業界に起こるだろう」とUniversal Music Sweden幹部。どのような変化だったのか?

 Spotifyはデジタル音楽をサブスクリプション形式で提供するサービス。2008年にスウェーデンでスタートし、北欧、欧州、そして2011年には待望の米国進出を果たした。

 Spotify登場の前、インターネット、さらにはブロードバンドという音楽ファイルを容易に共有できる技術を得た消費者は、一気にファイル共有へと走った。タダという面はもちろんのこと、CDを買うよりも簡単で、便利だったという側面も大きいだろう。CDの販売が主な収益の柱だった音楽業界は大きなあおりを受けた。Universal Music Swedenも例外ではない。同社で事業開発トップを務めるNiklas Twetman氏によると、スウェーデンの場合、2000年から2008年のあいだに音楽業界の事業規模は半分まで縮小したという。「多くの社員が退社を余儀なくされ、業界はかつての輝きを失ってしまった」とTwetman氏は振り返る。

Spotifyは音楽業界の救い主?
↑スウェーデンの音楽業界の売上げは、2000年から2008年のあいだに、約半分に落ち込んだ。

 スウェーデンは世界の中でもブロードバンドの普及が早かった。ブロードバンドの普及は社会や人々の生活に影響を与えるが、音楽の消費の仕方にも変化が現われたということになる。決定的だったのが、The Pirate Bayの登場だ。The Pirate BayはBitTorrent技術を利用するサービスで、大容量のファイルの共有が可能になる。The Pirate Bayはあっという間に広がり、ユーザーが著作権のある音楽や動画ファイルを上げる“違法ファイル共有”の温床的な存在となった。他のファイル共有サービスが閉鎖されるたびにThe Pirate Bayへのアクセスは増え、告訴に至った。

 さて、追いつめられたUniversal Music Swedenは事業戦略の大きなシフトを決意する。「いま変更しなければ、われわれの事業は存続しないという段階まできていた」とTwetman氏。そこでデジタル事業の頼みとしたのが、Spotifyだ。2008年に開始し、あっという間にデジタル事業は成長路線に入った。2012年には売り上げの約70%がデジタル事業となる勢いだ。

Spotifyは音楽業界の救い主?
↑緑がデジタルからの売上げ、黄色が物理製品(CD)からの売上げ。デジタルの比率は2005年の4%から2012年には70%に拡大、特にSpotifyと提携した2008年から大きく成長しはじめたことがわかる。

 ビジネスという点では、デジタル事業はこれまでのCDよりも利益率が高い。だが、CDと比較すると1曲あたりの収益は少なくなり、規模(ボリューム)のビジネスとなる。規模を大きくしていくことが大切になる、とTwetman氏はデジタル事業のポイントを語る。例えばK-Popを世界的に知らしめたPSYの『Gangnam Style(江南スタイル)』は、瞬く間にYouTubeで広がった。このように音楽へのニーズとボリュームは潜在的にある、とTwetman氏はみる。

 Spotifyの魅力についてTwetman氏は、モバイルからもアクセスできるなど非常に便利な点を挙げる。合法的で使いやすく、時代にあったサービスを提供すれば、人々は今でも音楽を消費するということがわかった、とまとめる。

 デジタル戦略は他の長所ももたらした。データの分析だ。たとえば、Spotifyのデータから、米国ユーザーとスウェーデンのユーザーのストリーミングパターンは週末と平日でまったく逆であることなど、興味深い洞察が得られるという。これらのデータ分析により、マーケティング手法も変わったとのことだ。

 そのひとつがソーシャルメディアの活用となる。欧米のティーンエイジャーに人気のシンガーJustin Bieberは、3000万人を超えるTwitterのフォロワーを持つ。Bieberが動画へのリンクとともにひと言「新しい動画をアップした」とツイートすると、その後24時間で1060万人がそのビデオを視聴したという。この場合、マーケティングにかかったコストはゼロだ。また、曲名やアーティスト名などの音楽情報を調べられるShazamとの提携により、ユーザーがどんな曲に興味を持っているのかなども分析しているという。他にも、Facebook、YouTube、Instagramなどのソーシャルサービスを活用しているとのことだ。これまでマーケティングといえば街頭に貼りっぱなしの大型広告だったが、インタラクティブなビジネスに移行しつつある、とTwetman氏は語る。

「音楽は長いあいだ、垂直業界だった。ブロードバンド時代に消費者が変化したのに、われわれは大規模なリソースを使って抵抗していた」とTwetman氏。業界が違法ダウンロード対策に躍起になっていたことを認める。デジタル事業が軌道に乗った現在でも、楽観はしていない。「次のトレンドは予想できない。だが既存のビジネスにしがみついていてはダメだ。垂直型のビジネスではインタラクティブは得られない。時代に合わせていくにはコラボレーションしかない」と挑戦の姿勢を見せた。

 “Spotify効果”を感じているのはUniversal Music Swedenだけではない。スウェーデンでは主要レーベルはすべてSpotifyと提携しており、デジタル音楽のうちストリーミング音楽は9割近くを、音楽市場全体では63%を占めるに至っているとスウェーデンの音楽業界団体GLFは報告している。2012年上半期、スウェーデンの音楽市場規模は30%増となり、CD販売の減少も2%台にとどまった。このような音楽業界全体の底上げに、Spotifyは大きく貢献していると分析されている。Spotifyローンチから4年で好転しつつあるスウェーデンの音楽業界、このパターンがSpotifyが進出している他の市場でも見られるか、業界の注目が集まっている。

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