2013年01月31日11時30分

iPhone5不調報道と米アップルの過去最高売上げ発表の読み方 by 本田雅一

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↑1月18日~24日のアップル社の株価の推移。23日の決算発表後、急落している。

“市場の期待”を裏切ったことで株価が下がった?

 1月23日、アップルは昨年10~12月期の決算発表を行なった。iPhoneはこの期間、4780万台が売れ、前年同期比29%増加。四半期の売上で過去最高を記録。iPadはさらに好調で、シリーズ合計の売上は2290万台に上った。売上台数は好調だが利益率は低下し、純利益は昨年同時期比で横ばい。この発表の直後、時間外取引でアップル株は11%下がった。

 四半期で約1兆1600億円もの利益を出しているのだから、なぜ株価が下がるの?と疑問に思った読者もいるだろう。たとえばiPhoneは新機種投入は前の四半期で、ライバルが続々登場した10~12月期、過去最高の4780万台が売れ、iPadにいたっては48%も増えた。普通の会社なら株価がうなぎ登りになっても良いところだ。

 これは株価が「その会社に対する期待値」によって売り買いされる性質をもっているから。アップルの場合、この期間に5000万台を販売すると予想されていた。この予測を元に株価の売買が判断されていた。さらにiPadは予想通りの高成長だったものの、想定以上にiPad miniの構成比率が高かったようだ。iPad miniはiPadに比べて利益率が低く、結果的に(相変わらずの巨額利益とはいえ)昨年対比で伸びず、“市場の期待”を裏切ったことで株価が下がったわけだ。

■同じ機構を2年以上使うことでコストを落としていく手法

 もっとも、株価が企業の実力をストレートに反映しているわけではない。たとえば昨年後半、アップルは主力製品のiPhone、iPadに新しい構造設計を相次いで採用した。こうした新設計モデルは立ち上げ時にコストが上がる。アップルの場合、機構設計にコストをかける一方、同じ機構を2年以上継続して使うことで徐々にコストを落としていく手法を採っている。
 特にiPad miniは単価が低く設定されており、その分、利益率を圧迫した。iPad miniもiPhone5も、次モデルではコストが下がり、利益率もある程度は取り戻せるはずだが、四半期ベースの発表を評価しての株取引で、“現在”が評価されるのは致し方ないところだ。

 しかし、そうした事情を考慮した上でも、“アップルが不調”という言葉をみると“ピンと来ない”と感じる人もいると思う。理由のひとつとして考えられるのが、決算を前にした一連のアップル売上不調報道だ。
 たとえば「iPhone5用ディスプレーの発注が当初計画の四半期6500万台から半減」というレポートが経済紙上を飾ったが、上記のように過去最高の売上を記録した前期でも5000万台に達していない。これらの売上には低価格モデルとして用意されているiPhone4/4Sも含まれている。商戦期を外れれば需要が下がるのは当然で、ちょうど半分の3250万台ぐらいならば不思議な数字ではない。

 同様にiPadでも不調報道があった。こちらはアップルストアや品不足のiPad、iPad miniが優先割り当てされている大手量販を含めない集計値で、Nexus7がiPadシリーズの合計値を上回ったと調査会社が発表したものが、そのままニュースとして伝えられたのがきっかけだったが、現実にはiPadシリーズの好調は明らかだ。

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↑米アップルの投資家向け情報ページ。スクリーンショットの最上段の項目が今回の決算発表についてのコンテンツだ。当該ページへのリンクはコチラ をクリック。

■従来のやり方だけではローエンドユーザーを取り込めない

 ただし、先行きの不安がないわけではない。アップルは低価格製品をもたず、設計や開発コストを回収した後の旧モデルを低価格製品として位置付けてきた。コストダウンでハードウェアとしての質を下げた製品を、アップルブランドで売りたくないためだ。しかし、スマートフォン、タブレットの裾野は拡大を続けており、従来のやり方だけではローエンドユーザーを取り込めなくなっており、台数ベースの“シェア”という面では数字を落としていくだろう。
 今回の決算は今後、アップルがどのような道を進むのか。彼らが大きな岐路に差し掛かっていることを示しているとは言えるだろう。

※本記事は、週刊アスキー2月12日号(1月29日発売)「Newsroom」掲載記事を加筆したものです。

●関連サイト
Apple Reports Record Results(英文)
リリースのオーディオウェブキャスト(英語)

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