2012年10月13日19時30分

2012国際航空宇宙展で一挙公開された最新宇宙技術に大興奮

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 4年に1度となるアジア最大の航空宇宙トレードショー、2012国際航空宇宙展が名古屋市で開催中だ。ポートメッセなごやで10月9日~12日に開催された“トレードデー”と、12日~14日にポートメッセなごや&中部国際空港セントレアで開催される機体展示やブルーインパルスのフライト飛行などの“パブリックデー”の2部構成となる。技術展示が好きな筆者はその前半、トレードデーに突撃してきた。

2012国際航空宇宙展

 国内からは三菱重工、川崎重工といった航空宇宙大手が、海外からもボーイングやロッキードマーチンなどの海外企業が出展。そのほかJAXAや情報通信研究機構などの研究機関など合計665団体が参加した“パブリックデー”は、むき出しのエンジンや素材などが展示されたハードな技術展示会となっている。

 宇宙関係の展示を中心に回ったところ、目立っていたのは超小型人工衛星や、衛星搭載コンポーネントなどの展示。大学や中小企業が活発に開発・技術向上を続けてきた小型衛星の分野は日本の強みとなりうる分野だ。派手ではないが、小型衛星に関する技術を展示するブースでは、数十センチ級、数百キロ級の衛星で「こんなこともできる! あんなこともできる!」といった勢いがバシバシと感じられて大変おもしろかった。

  会場で気になったアイテムを怒涛のように紹介していこう!

2012国際航空宇宙展

↑JAXAブースでは、日本の主力ロケットH-IIA、宇宙ステーション補給機HTV3機連続打ち上げに成功した大型ロケットH-IIB、2013年初号機打ち上げ予定で日本の独自技術、固体燃料ロケット復活となる小型衛星用ロケット”イプシロンロケット”の模型がお出迎え。

2012国際航空宇宙展 2012国際航空宇宙展 2012国際航空宇宙展

↑おなじみ“はやぶさ”の模型と、2010年にオーストラリアのウーメラ砂漠に帰還したイトカワの、試料入りカプセル回収班が身につけていた防護服。裏側、なんにもないんですね。

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↑模型でわかる、日本の地球観測衛星の歴史。1987年海洋観測衛星『MOS-1 もも1号』から、最新の第一期 水循環変動観測衛星『GCOM-W1(しずく)』やGCOMシリーズの次期『GCOM-C1』までズラリと展示。

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↑屋外では、準天頂衛星“みちびき”のデモンストレーション。GPSの衛星数不足を補う補完信号と、より精度の高い測位を行う補強信号、ふたつの機能があるが(以前の記事参照)、ここでは補強信号LEXを用いたセンチメートル級精度を実証。精度が高いので、アンテナを手に持って歩きまわるだけで、軌跡できれいに絵が描けるほど。補強信号はまだ実証実験を続けている段階なので、サービスがスタートして製品が世に出てくるにはもう少し時間がかかる模様。

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↑UNISEC(大学宇宙工学コンソーシアム)ブースに展示されていた、東京大学の超小型人工衛星”PRISM”エンジニアリングモデル(写真左)と、モデルロケット(写真右)。

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↑こちらは名古屋大学、大同大学を始め、中部の航空宇宙産学が開発、地球観測やスペースデブリの観測を行う超小型衛星、ChubuSat-1こと『金シャチ1号』。展示は模型だが、実機は2012年末にロシアから打ち上げられる予定だ。

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↑今年5月、『GCOM-W1(しずく)』と相乗りで打ち上げられた超小型衛星『鳳龍弐号』の模型。宇宙では高圧電流を扱うことが難しいのですが、300Vという高圧発電の実証に成功した。開発した九州工業大学には、超小型衛星専用の試験センターがあり、熱真空・振動・衝撃など、開発中の超小型衛星が続々と過酷な環境の試験を行っているが、来年1月まで予約でいっぱいなんだそう。

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↑開発費3億円以下、開発期間2年以下でだれでもカスタム人工衛星が利用できる“ほどよし”超小型衛星シリーズ。東京大学が主体になって開発している『ほどよし1号機』は、光学機器を搭載した50cm、60kg級の地球観測衛星でまもなく打ち上げられる予定だ。

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↑東大キューブサットを始め、日本の超小型衛星に次々と採用されいている西無線研究所の無線機。切手サイズ、単三電池2本の受信局モジュールと組み合わせると、どこでも超小型衛星の信号を受信できるというもの。

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↑月探査衛星『かぐや』や『はやぶさ』の光学センサーをつくった浜松ホトニクスでは、カラー画像、近赤外線、ハイパースペクトル画像の3タイプの観測機器が50cm級の人工衛星に収まるというすごいシステムを展示。高機能な光学観測超小型衛星を将来は100機以上打ち上げ、撮りたい時にいつでも地球の画像が撮れるコンステレーション(ある機能を持った人工衛星のまとまり)を作ってしまおう、という構想だ。“500億円で1機の衛星を打ち上げるより、5億で100機打ち上げよう”をモットーにする。
 

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↑こちらは、原田精機の惑星探査ローバー。

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↑NECは模型左側、分解能50cmの光学センサーを積んだ”ASNARO”第一号機を間もなくロシアから打ち上げる予定。右側の大型展開アンテナを搭載すると、今度は合成開口レーダーに。(人工衛星のベアボーンキットみたいなもの。ケースの中に電源やコンピュータなど衛星の基本機能が一通り収まっていて、観測機器などのミッション機器を搭載すると人工衛星がスピーディ低コストに開発できるのです)

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↑ペンシルロケットから、来年初打ち上げのイプシロンロケットまで、日本の固体ロケットを担ってきたIHIエアロスペース(旧 日産自動車)。さらに今でもIHIエアロスペース富岡事業所の資料室に保存されているという、日本のロケット開発の父、糸川英夫博士直筆の指示書類が!!!!

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↑先日、こうのとり(HTV)3号機大気圏再突入の際に、画像データを取得してきた”i-Ball”の模型。他にも、人工衛星にの外側に取り付けて、スペースデブリの観測を行う装置の試作品など、IHIAは衝突ものに強い。

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↑「日本国内で政府が人工衛星を調達する際には、国際競争入札にしなさいね」という足かせを米国がはめてくれたおかげで、日本製の人工衛星は海外での売り込みに苦しんでいたりもするわけですが、コンポーネント単位では、がっちり海外でシェア取っている製品もあったりする。そのひとつがIHIエアロスペース製スラスタ(小型エンジン)、アポジエンジン『BT-4』。人工衛星を静止軌道に送り込む最後の一蹴り(アポジキックと呼ぶ)に威力を発揮。2012年8月には30台以上のフライト実績を積んでいる。今後は、エンジンと推進剤タンクを組み合わせたシステムなども加えてラインナップを拡充させる予定なのだそうだ。

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↑ここはNTNブース。指輪のようなこの部品は、『はやぶさ』の太陽電池パネルヒンジ部分に採用されたもの。宇宙(真空中)では潤滑油やグリースは蒸発してしまって使えないため、表面加工した特殊な素材で部品を回転させる“固体潤滑”技術が日本の得意分野だったりする。

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↑ボーイング787の翼にも採用されている東レの炭素素材。HTV3号機によって国際宇宙ステーションに運ばれ、実験が行われている宇宙インフレータブル構造物の伸展マストに東レの炭素繊維素材が使われている。宇宙インフレータブル構造物は、小さく畳んだ素材を宇宙で膨らませることで大型の構造物を作る技術で、ビゲロー社が計画している宇宙ホテルなどもこうした構造を取り入れる予定だ。

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↑次世代の通信衛星、高速インターネット衛星『きずな(WINS)』を使った、情報通信研究機構(NICT)のデモンストレーションも。ポートメッセなごやの会場と、大手町を結んでTV会議。『きずな(WINS)』は持ち運べるアンテナで、宇宙と地球で155Mbps通信も可能なのに、あんまり知られていないため、今年の6月からスカパーJSATが通信実験の推進役を担当し、JAXAの地上局機器の貸し出しを実施。

2012国際航空宇宙展

↑先日、H-IIBロケットの打ち上げサービスをJAXAから移管され、H-IIBで人工衛星の商業打ち上げができるようになった三菱重工。今後は、H-IIAロケットの高度化(静止軌道への人工衛星投入能力の向上)なども行なわれ、日本の主力液体燃料ロケットメーカーであるわけですが……

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↑ロケットは新規開発をたゆみなく続けていかないと、技術者が世代交代でいなくなってしまうため、H-III(仮)ともいわれる次世代主力ロケットの新規開発を行わなくちゃ! 国は早く開発決定して! というのが現状。とうわけで、こちらは主力ロケットのメインエンジンになる(予定)のLE-Xエンジンと、ロケット上段のエンジン、MB-XXの模型。LE-Xは推力と信頼性を向上させたエンジンを複数組み合わせるクラスター化して使うことで、低コストかつ安全性が高いのが特徴。H-IIAに使われているLE-7Aエンジン(注:写真は三菱重工品川本社ビルロビーに展示されているもの)は高温高圧の燃焼ガスを制御する、二段燃焼サイクルという高度な技術を使っていたりするが、あまりにも高度なのでコストが……。模型と実物なので単純に比較はできないが、ノズルスカートが特徴的なLE-7Aと比べるとシンプルさや質感がだいぶ違うような。

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↑航空分野では、約40年ぶりの国産次世代ジェット旅客機、三菱航空機の『MRJ』の展示に大注目。今年の7月に、ファンボローエアショーで公開されたキャビンモックアップも設置されていた。

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↑海外の競合機に対して、キャビンの幅、高さ共にMRJは最大サイズ。写真手前のプレミアムクラスシートもゆったり。頭上の荷物入れにも機内持ち込み可能な最大サイズの手荷物が入る。さらに、機内用車いすでアクセス可能、中で方向転換できるというトイレも公開。

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↑川崎重工には、ドクターヘリの実機がっ!

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↑ボーイングからは歴代機の模型と、月産10台体制に強化するという787のフライトシミュレーターが展示されていた。

 駆け足での紹介となってしまったが、12日からの“パブリックデー”では、航空自衛隊 T-4ブルーインパルスのかっこいいフライトや海上保安庁ベル212の離着陸、陸上自衛隊OH-1の演技飛行などが行なわれている。全体で9万3000人の来場を予定。パブリックデーの入場料は1日券が大人1800円、中高生900円なので、週末予定の開いている人は、是非! 中部国際空港&ポートメッセなごやに行ってみて欲しい!

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