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電子書籍元年から2年、今年こそ電子書籍ブレイクの年となるか!?

2012年07月10日 09時00分更新

 6月、7月は、久しぶりに電子書籍業界が熱い日々となった。まずは、アマゾンが日本でKindle発売を表明、そして楽天が『kobo Touch』を発表し、BookLiveが独自端末を電子出版EXPOと同時に発表した。そのほか、Yahoo!ブックストア、hontoなどの大手オンライン書店が大きなリニューアルを行なっている。

 7月4~6日、国際展示場で開催された『第16回 国際電子出版EXPO』。昨年はブックフェアと同会場だったが、今年は階が分けられ別フロアでの開催となった。ブックフェアの中に電子書籍が混沌と入り混じった昨年の雰囲気から一転し、明確に“電子の出版”を意識した傾向が感じられた。会場の半数以上は企業などに向けたB2Bの出展であったが、ブックストアや個人向け電子出版サービスなど、コンシューマー向けの出展も目立った。

電子書籍元年から2年、今年こそ電子書籍ブレイクの年となるか!?


■電子ペーパー採用の端末は6インチが主流に

 今回発表された楽天の『kobo Touch』、BookLiveの端末とも、6インチの電子ペーパーを採用。ソニーのReaderも昨年10月に発売した最新機『PRS-T1/G1』では6インチモデルのみとなり、文庫サイズの6インチが業界のスタンダードとなりつつある。

 凸版印刷グルーブの電子書籍部門を担うBookLiveは、電子書籍ストア『BookLive!』を運営、三省堂書店と連携してソーシャル本棚『読むコレ』を提供するなど、積極的な展開を行なっている。

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 BookLiveの端末を実際に触らせてもらった。ボタン配置が似ていることから「ソニーReaderのOCM?」という声もあったが、まったく独自の端末。国内での製造、通信機能を搭載する以外は、明らかになっていない。本体の厚さなどもできるかぎり薄くしていきたいとのことで、展示されていた試作機からまだ変更の可能性もある。

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 価格は7000円という報道もあったBookLive端末。『kobo Touch』を意識した価格設定になるのはほぼ間違いないだろう。


■大日本印刷の本気とは?

 今回の出展で印象に残ったのが大日本印刷のブース。独自端末こそないものの、『honto』をはじめ目を引くものが多く、その力の入れようを感じた。

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 hontoは、大日本印刷が2010年末に開始した電子書籍ストア。その後、NTTドコモとの合弁会社であるトゥ・ディファクトに運営が移り、今年5月にはオンライン書店の『bk1』(ビーケーワン)と統合し、電子書籍のほか、紙の書籍のネット販売も行なう『ハイブリッド書店 honto』としてリニューアルした。

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 hontoのポイントカード。6月20日からは、ジュンク堂書店、丸善、文教堂書店とポイントが連携するようになり、ネット、リアル書店のいずれで購入してもポイントが付与される。カードは提携書店で入手可。EXPOではhontoのブースで買い物をすると、その場でカードを発行してもらえた。カード登録にはhontoサイトで手続きが必要になる。

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↑bk1ユーザーは、以前の購入履歴やポイントが引き継ぎされている。
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↑ネット/リアルのどちらの書店でも、購入した本はマイ本棚に追加されていく。

 各書店の既存のポイントカードは併用とのことで、少々ややこしいシステムではあるが、購入者にとってプラスになる特典が増えるのはうれしい。たとえば丸善では、これまで文具・洋書のみポイントが付き、和書の購入ではポイントが付かなかった。このhontoポイントカード採用により「丸善でポイントが付く!」と喜ぶ丸善愛用者も。

 乱立するオンライン書店のなかでも、大手のリアル書店とタッグを組み、かつビーケーワンのノウハウをもつhontoは、これからもっと需要が増えそうだ。

■ヤフーとボイシャーの試み

 昨年オープンしたYahoo!ブックストアは、7月からボイジャーの『BinB』システムを採用。BinBは、HTML5対応のブラウザー型のビューアーで、EPUB、.bookに対応しており、ブラウザーで見られる端末であれば(一部の電子書籍リーダーなどは不可)インストールなしに利用できるのが大きな特徴。

 Yahoo!ブックストアは、昨年11月にAndroid版のビューアーアプリを提供開始したが、これまでiOS版はなかった。今回のブラウザー対応によりiPadやiPhoneなどでも利用できるようになったことは大きい。これまでの専用リーダーに加えて、インストールなしに読めるブラウザー版の提供を併用していく。

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■個人が簡単に行なえる電子出版サービス

 今年は一般ユーザー向けの電子出版サービスもいくつか目についた。美術出版ネットワークスの『bookpic』のほか、オリジナルの電子ストアアプリを作成してくれるサービス『BUKUMO STUDIO』(関連サイト)はEXPO初日からサービスを開始した。

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 BUKUMO STUDIOは、ユーザーのコンテンツをもとに電子書籍ストアアプリを作成してくれるサービス。価格は1冊9800円からで、電子書籍の販売手数料は無料(※1)。アプリにはビューアー機能が搭載され、ユーザーは自分の書籍をストアアプリ内で販売ができる(※2)。

※1 100ページのキャンペーン価格。コンテンツ1冊につき月額 315円のストアアプリ利用料が必要。
※2 オリジナルストアで販売するには、iOSデベロッパプログラムのアカウントが必要。登録の代行も行なっており、代行手数料は年額登録料8400円込みで1万円(年額)。

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 ブクログをはじめ、個人ユーザーが簡単に電子書籍を作成・販売するサービスも増えてきているが、BUKUMO STUDIOはアプリを作成してくれるのがポイント。めんどうなiOSデベロッパプログラムの申請も代行してくれるとのことなので、同人サークルや個人作家などが自分のストアで作品を販売するのに重宝しそうだ。

 今回の国際電子出版EXPO、ブックフェアでは、専用端末が次々と出たことも大きな話題になった要因だ。しかし、電子書籍が普及して本当の『元年』を迎えるには、もっとユーザーが使い勝手のよい、欲しい本が手に入る市場を作り出すことが、電子書籍業界の大きな課題だと感じる。

■関連サイト
第16回 国際電子出版EXPO

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