2011年02月06日17時25分

スーパーボウル XLV (7) 日本人もスーパーボウルに参戦、磯有理子トレーナーに聞く

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 2月6日の第45回スーパーボウル(グリーンベイ・パッカーズ対ピッツバーグ・スティーラーズ)に向け準備が進む両チーム。このなかにひとりだけ、日本人のスタッフがいます。

 磯有理子さんは、2002年からスティーラーズでアシスタント・アスレチックトレーナーを務めており、第40回と第43回大会でスーパーボウル優勝も経験しています。NFL で初の、そして現在も唯一の女性トレーナーでもある磯さんに、今大会に向けての意気込みなどをお聞きしました。

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スティーラーズで Assistant Athletic Trainer を務める磯さん。

Q スーパーボウルとふだんの試合ではなにか異なりますか?

 出場することは光栄ですが、やることはいつもと同じです。ピッツバーグを離れる期間がふだんの遠征より長く、施設が違ったり必要なアイテムが足りなかったりしましたが、すぐに集めました。火曜日以降はいつもどおりの1週間です。

Q 前2回のスーパーボウルとの違いは?

 寒さですね。(第40回大会の)デトロイトが一番寒いかと思いきや、今回のほうが寒いです。寒くなったらインドア(屋内練習施設)で練習すると思ってハンドウォーマーなどをそれほど持ってこなかったんですが、インドアでもけっこう寒いです。

 ピッツバーグだと、インドアは寒い冬に気温を上げて練習するためにありますが、ここテキサスだと夏の熱さを避けるためのものなんですね。そこが違うところです。

Q 予想以上の寒さで、気を付けていることは?

 氷などで転ばないようにすることと、風邪をひかないことです。大きい試合の前はストレスがたまって病気になることがあるんです。それに加えて寒さがあるという感じです。

 ふだんは練習後にジャグジーに浸かります。練習場のテキサスクリスチャン大学にはひとり用のジャグジーが4つあるだけなので、屋外に大きいジャグジーを用意したんですが、使っている人はほとんどいないです。

Q 今回はドームでしかもフィールドターフ(人工芝)ですが?

 小さな違いはありますが、トレーナーとして大きな変化はありません。ただ統計的に言うと、フィールドターフのほうが足首などのケガが多いほか、スライディングしたときのターフバーン(やけど)があります。また、芝の間にタイヤの小さな粒が入っていて、それが目に入ることもあります。

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スティーラーズの記者会見場でインタビューを受ける磯さん。写真撮影の際には選手たちから「アリーコ!」と冷やかされ、信頼を受けていることを感じさせた。

Q 先発センターのマーキス・パウンシーが、AFC決勝で負った足首負傷が原因で欠場することになりました

 一番大きな試合の前にケガをするのは残念なことで、彼の苦しみや悔しさはわかります。ただトレーナーとしてはそういう痛みを理解しつつも、モノトーンではありませんが過保護にすることなく普通に接しています。ケガから復帰できる期間は人によって違いますし、彼の回復は本人にかかってくることですので、うまくいってほしいと願うだけです。

Q 今回でスーパーボウルは3回目ですね

 どのように準備したらいいのかをわかっていることが、これまでとの違いですね。実は両親が月曜日から来ているんです。チームが到着するよりも先に来ました(笑)。今回は天気が悪くていろんなところが閉まっているので、わざわざ日本からダラスまで来てもらってずっとホテルにいるのも悪いかなというのが、個人的には問題です(笑)。

Q NFL で唯一の女性トレーナーですが、女性であることの長所や短所はありますか?

 一般論としては、女性のほうがエモーショナルかもしれないし、細かいことに気づくかもしれない。あとマルチファンクション(いっぺんにいろんなことができる)だったり、人をサポートする仕事もできる。それは大体当たっていると思います。

 ただこれまで働いてきたなかで、そういうことが全然できない女性もいるし、全部こなせる男性もいる。要は個人個人の長所や短所なんだと思います。

 ひとつ言えるのは、女性がいるということで、雰囲気が多少変わるというのはあります。選手どうしでの話し方に気を付けたり、練習中にかける音楽が変わったりします。実は、アンバサダー・ルーニー(※)がいるときも、音楽や話し方が変わったりするんですよ。

※前オーナーのダン・ルーニー氏は現在、米国の駐アイルランド大使(アンバサダー)を務めている。ルーニー氏の経歴はこちら(英語)

 ルーニー氏のおかげで、スティーラーズという組織は女性を意識させない雰囲気なんです。2001年に建てたメディカル施設は男性も女性も同じように使えるようになっていて、カレッジで働いていた環境からそのまま移ってきた感じです。カレッジでは女性のトレーナーはたくさんいますので、選手も女性トレーナーには慣れています。

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スティーラーズの記者会見後に姿を見せたダン・ルーニー前オーナー。27年間にわたってオーナーを務めたピッツバーグの顔だ。

Q スティーラーズというチームの魅力は?

 ほかのチームとは比較できませんが、とても家族的です。たとえば選手をスカウトするときも、フットボールのスキルだけでなく人格も重視します。そういった根本の部分から始まって、選手どうしがファミリーという感じですし、コーチやフロントオフィスも同じです。

 大きな組織ではありますが、他のチームに比べると働いている人は少ないこともあり、お互いにファーストネームで呼び合っているし、現オーナーのアート・ルーニーも前オーナーのアンバサダー・ルーニーも、建物のなかを歩き回っていて、みんなと握手したりハグしたりしています。

 ヤンキースで働いている人に聞いたら、2年間働いていて一度もオーナーに会ったことがないそうです。そういう話を聞くと、スティーラーズというのはとてもスペシャルなオーガニゼーション(組織)なんだなと思います。

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質問する記者の目を見つめる磯さん。柔和な雰囲気の中に、しっかりとした芯を感じさせた。

Q トレーナーとして、自分のためになにか特別なことはしていますか?

 私は、以前引いたのはいつかなというくらい、風邪を引いてないです。他人にうつしたくないですし、自分もうつりたくないので、健康には注意しています。睡眠は毎日4時間くらいで、前日が忙しかったときも朝起きてランニングしています。あと、疲れていても少しウェイトリフティングをしたり、友だちとラケットボールをしたりしています。

 そうやって、自分の気持ちを良く保つようにしています。自分が不健康だったら、「今日はなんか機嫌悪いね」って表に出ちゃうと思うんです。そういう指摘は実際よく当たりますから、自分自身がハッピーで選手にほがらかに対応できるように心がけています。

トレーナー志望者からの相談に乗ることも

 数多くの質問に、ていねいに答えてくれた磯さん。その磯さんのもとにはトレーナー志望の学生からメールが来ることも多く、できるだけ相談に乗ってあげているという。アドバイスとしては、ひとつのことに絞らずに、幅広い経験を積んでほしいとのことだ。

 これまでスーパーボウル優勝を2回経験し、スーパーボウルリングとペンダントを手にした磯さん。前回の優勝では選手たちとともにホワイトハウスも訪れた。選手たちの活躍は、磯さんのような優れたトレーナーたちに支えられているのだ。

磯有理子(いそありこ)
1970年生まれ。オレゴン州立大学卒、サンノゼ州立大学大学院修了。ポートランド州立大学でフットボール部などのトレーナーを務め、2000年と2001年にスティーラーズでサマーインターンを経験。2002年にスティーラーズに採用され、NFL では初の女性トレーナーとなる。2005年にはプロボウルでもトレーナーを務めた。

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