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元Samsung副社長が率いるBOSの勝算 Tenstorrent製NPUとオープン規格で挑む車載AI「Eagle-N」

2026年11月02日 12時00分更新

4096bit内部バスと機能安全(ASIL-B)を満たすNPUクラスター接続

 Tensix Neoクラスター同士の接続構成が下の画像である。クラスターあたり1個のルーターがあり、これが双方向256Bytes幅のメッシュに接続される格好になっている。

Tensix Neoクラスター同士の接続構成。Tensix Neoクラスターを込みにしても全部で20程度の構成なので、2Dメッシュで十分短いレイテンシーでアクセスできると判断されたのだろう

 ところでDispatch Engineやルーターが2つあるのは、性能的な問題もさることながら、内部を2つにパーティショニングすることを可能にするための模様だ。

セーフティクリティカルな動作をさせる場合、その他の処理をする部分と物理的に分離させる、というニーズは非常に多い

 これは自動車向けの場合、セキュリティもさることながらセーフティクリティカル(車両の安全性に強く関係する機能を他と分離して独立で動かすこと)への対応も考慮してのものだろう。

 実はTenstorrentではTensix Neo IPに、Tensix Neo Autoという自動車向けの派生型も提供している。こちらはASIL-B(ISO26262という機能安全規格のグレードで、故障率が100FIT(10万時間あたり1回)未満であることを担保するための要件を満たすことが求められる)の認証を取得しており、おそらくこのTensix Neo Autoを採用していると考えられる。

 ASIL-Bを取得していると、ある程度安全性に関係する部分での採用が可能であり(自動運転などその最たるものだ)、こうした用途に使われることを考慮しているのだと考えられる。

 余談だが自動車向けのISO26262で一番厳しいのはASIL-Dで、故障率が10FIT(100万時間あたり1回)未満を担保する必要がある。こちらはアクセルやブレーキ、ステアリング操作など安全性に直結するものに利用する場合に求められるグレードである。

 自動運転の場合、現状では運転手がある程度介在することが前提になっているため、故障したら運転手がすぐ操作を引き継げば安全性が担保されるので、ASIL-Bでも許容されるわけだ。同様に例えば計器パネルの表示もASIL-Bであるのが一般的だ。計器パネルが壊れたら即事故、とはならないからだ。

 話を戻そう。先にEagle-Nの内部構造を最初のページの2つ目の画像で示したが、これをもう少し細かく示したのが下の画像である。

チップの規模からすると信じられないほど広帯域なインターコネクトが実装されている、というのが率直な感想である

 先に書いたように、内部バス(ここで言うところのWIDE BUS)は合計4096bit幅のすさまじいものだが、周辺回路までその帯域は必要ない。

 ということでNPUとの接続は512bit幅の双方向×4だが、メモリーI/Fへは1024bit幅、そしてD2D I/F IPへは1024bit幅となっている。さすがにDie-to-Dieに4096bit幅でつなぐのは無理と判断したようだ。

 次がそのDie-to-Dieの話。Eagle-Nは単体でも動作するように設計されているが、チップレットとしても使えるように設計されている。ただこれまでのチップレットの問題は、各メーカーが独自で開発したもので、標準化や相互運用性がまるでなかったことだ。

 例えばRyzenのCCDをインテルのArrow LakeのIOタイルにつなぐことは不可能だし、仮にUCIeを利用していても、電気的に接続はできるかもしれないが、その上での通信は不可能である。

 というのはUCIeはあくまで信号レベルの、電気的な接続に関する規定であって、その上でどんな通信を行なうかは実装するベンダーに任せているからだ。ただ古い話で言えば、例えばもうなくなってしまったEsperanto Technologies(*1)のET-SoC-2は、外部にDRAMやPCIe/CXL、イーサネットなどのチップレットを接続することを想定していたし、TenstorrentのAscalonも似たような感じだ。

(*1) 実はEsperanto Technologiesの全資産は米Ainekko.aiが買収し、その内容をオープンソースとして公開している。

 ただ問題は、標準化されていないから、ET-SoC-2とAscalonに同じPCIeのチップレットを接続できるか? というと不可能である。

 このあたりを標準化しようと動いているのがOCA(Open Chiplet Atlas)で、実はこれを立ち上げたのもTenstorrentだったりするのだが、BOS SemiconductorもこのOCAのメンバーに名前を連ね、このOCAのSpecificationに準拠する形でChipletのI/Fを構築している。

これはEagle-NというよりもOCAの説明になっている

 実際にEagle-Nの場合、チップレット同士の接続、およびEagle-NとそのほかのSoCとの接続の両方の形態をサポートしている。

自動車向けの場合、既存のSoCにAIアクセラレーターとして接続する使い方も多そうで、その場合はHost SoC+Eagle-Nという形になるのだろう

 このスライドの右側のStackで、これまで欠けていたのはシステムやソフトウェアの部分である。これをOCAに準拠する形で構築することで、汎用的なチップレットの構築を目指そうというわけだ。

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