日産、6709億円の巨額損失からの反撃。これからの日産車は「早く・手ごろに・尖る」
2026年09月13日 12時00分更新
再建の途上となる日産。その再建計画「Re:Nissan」のカギのひとつとなるのが、「ファミリー企画」と「開発期間短縮」の導入・実現です。発表会から約1年が経ち、どのような内容で、どうやって実現したのか? またその結果として、どのような未来になるのかを解説します。
業績を回復し、魅力的な商品を生み出すための再建計画
日産は2024年に6709億円という巨額の損失を計上するなど、非常に苦しい立場に陥りました。そんな2025年に発表されたのが、日産を蘇らせるための再建計画「Re:Nissan」です。これは、直近の業績回復だけでなく、未来に向けた成長のために日産の体質そのものの改善も含まれた計画です。コストカットするだけでなく、より魅力的な製品を生み出すためにモノづくりの体制を変革するというものです。
その内容は「コスト構造の改善」「市場戦略と商品戦略の再定義」「パートナーシップの強化」の3つが柱になっています。
そんな日産に対して、一般ユーザー目線で気になるのが、どのような商品=新型車が、これから日産から登場するのか? という部分でしょう。
そこで注目すべきは「市場戦略と商品戦略の再定義」です。日産の説明では、日本市場は「モデルカバー率を拡大してホームマーケットにおけるブランドを強化します」と説明されました。これまで日産がカバーしきれなかったジャンルに、新モデルを投入することの予告と見ていいでしょう。
また、あわせて「エルグランド」「リーフ」「スカイライン」の導入も予告されました。このうち、「エルグランド」と「リーフ」は、すでに発売になっていますから、残りの「スカイライン」も、近い将来登場するでしょう。2028年以降は、新たな「コンパクトカー」シリーズを投入して、商品ラインナップを強化することも予告されています。
新商品のカギとなる「ファミリー企画」と「開発期間の短縮」
そんな「Re:Nissan」進行中の日産で、変革のために導入された具体的な動きが「ファミリー企画」と「開発期間の短縮」です。
「ファミリー企画」とは、クルマを個々ではなく、複数台のファミリー単位で企画するというもの。同じファミリー内のモデルは、プラットフォームやパワートレインなどのコンポーネントを共有することが特徴です。最初にファミリーごとに企画しておけば、ファミリー内のモデルを並行して開発することが可能となります。
また、コンポーネントを最初に開発しておけば、他のモデルにはそのまま流用できるので、個々のモデルごとに開発するよりも、開発期間が短くなります。
ここで気になるのは、すでに日産はプラットフォームの統一などを通じて、兄弟車を数多く世に送り出してきたことです。それに対して日産は、従来は「プラットフォームの統一はあったが、それ以外のパワートレインや細かいコンポーネントは、個別最適化されていた」と説明します。今回の「ファミリー企画」の導入ではプラットフォームに限らず、より幅広い範囲での部品の共通化が進むことになるというのです。
つまり、ファミリー企画を導入することで、開発期間が大幅短縮されます。また、部品の共通化によるコストダウン、生産設備への投資の効率化といった、幅広い効果が期待できます。
また、日産は世界販売の80%を3つのファミリーで賄うと説明します。具体的には、小型車の「コンパクト」、中型車の「ミドル」、そしてラダーフレームを用いる「フレーム」の3つです。2028年以降に、日本市場に「コンパクト」のファミリーを、アメリカ市場には「フレーム」のファミリーを投入すると予告しています。
開発期間短縮のために導入した施策
さらに、日産は「ファミリー企画」の導入だけでなく、新型車開発の進め方にも改革のメスを入れました。具体的には、「車両企画・目標値設定の変更」「デザイン決定の変更」「プロジェクト責任者の変更」「車両実験の効率化」の4点です。
新車の開発は、「企画」「デザイン」「設計」「試作・実験」という工程を進みます。この企画の段階で、新型車の性能や価格などが設定されますが、その方法が変わりました。これが「車両企画・目標値設定の変更」です。
従来は、ライバル車に対して「すべての性能・項目で勝つ」ことが求められました。ただし、当然、非常に難しく厳しい目標となるため、最終決定が出るのに時間がかかっていたそうです。そこで、「お客様に刺さる売りを際立たせた目標」に変更したとか。これにより企画決定にかける時間が大幅に短くなりました。当然、割り切る部分ができますが、お客様目線で言えば魅力を強調したクルマになりますから、それほど悪い話ではありません。
次に「デザイン」の工程では、決定までのプロセスを変更。複数のデザインを用意して、時間をかけて検討していたことをやめ、前倒しでデザインを決めてしまうことにしました。これにより後工程の作業も楽になり、開発期間の短縮に貢献します。
そして、「プロジェクト責任者の変更」も実施しました。これまでの日産は「収益に責任を持つ、PD(プログラム・ディレクター)」、「魅力に責任を持つCPS(商品企画責任者)」、「技術に責任を持つCVE(開発責任者)」の3人によって、新車開発が進められました。
三権分立の体制のため失敗しにくいのですが、その分、調整に時間がかかります。それを、今回の改革で「PD with CPS」と「CVE」の2者体制に変更。人数が減った分、意思決定にかかる時間が短縮。開発期間も大きく短縮したというのです。
最後の「車両実験の効率化」は、開発の終盤となる「試作・実験」工程の変革です。試作車を作って、実験を繰り返す工程は、クルマの安全性や性能を高めるために非常に重要なところ。そこでの開発短縮には、AIとDXが活用されました。
VR技術による作業性・操作性の評価や、衝突安全試験へのデジタルツイン技術の導入、AIを使った評価計画作成と判定、走行試験への自動運転技術の導入などです。重要な試験の質を落とさずに省力化・時短化することで、開発期間全体を短縮することができたというのです。
新車開発を50ヵ月から最短30ヵ月まで短縮
こうした「ファミリー企画」の導入と、「開発期間の短縮」の実現により、日産による新車開発は、従来の50ヵ月から最短で30ヵ月にまで短縮することができたとか。ただし、ファミリー企画の最初の1台目となるモデルの開発は37ヵ月かかるそうです。それに続く、ファミリー企画の2台目以降は、30ヵ月になる予定です。従来4年と2ヵ月かかっていたのが、最短で2年半にまで短くなるのです。
これにより開発コストが安くなるだけでなく、市場環境の変化にもタイムリーに対応することができます。振り返ってみれば、日産は2010年代に日本に新規モデルを1台も導入しませんでした。2020年6月に発売された新型「キックス」は、当時10年ぶりのブランニューモデルだったのです。それだけ日産が新型投入への腰が重かったのは、新車開発にかかる時間が長かったというのも理由のひとつでしょう。
今回の再建計画「Re:Nissan」の改革により、新車開発にかかる時間とコストは、大幅にカットされるでしょう。そうなれば、日産からもっとタイムリーに、手ごろな価格で、そして魅力を強調したモデルが登場することが期待できます。
「ファミリー企画」の本番は、2028年の「コンパクト」シリーズからになりそうです。現行「ノート」のデビューは2020年です。2028年は、ちょうどノートのデビュー8年目であり、そのタイミングでフルモデルチェンジしてもおかしくはありません。
そうとなれば「ファミリー企画」の最初の「コンパクト」シリーズは、新型「ノート」の可能性は大きいでしょう。そして「ファミリー」というからには、「ノートオーラ」だけではなく、より多くのファミリー車が登場することが期待できます。どんなクルマになるのか、これからの日産に注目しましょう。
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